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グローバル企業で働く友人から「先月、スペインの取引先に連絡をしたら、担当者は8月いっぱいバカンスで休みだと言われてしまった。」という話を聞いた。わずか1日の有給取得さえもためらう日本人の感覚からすると、1ヶ月ものバカンスは羨ましい限りであるが、そんなに長期間休んで仕事は大丈夫なのかと、心配が先立つ人のほうが多いのも我が国の実情ではないだろうか。

とはいえ、ヨーロッパでバカンス制度が定着しているのは事実であるから、なぜヨーロッパ人はバカンスを取ることができるのかを私なりに考えてみたい。

ヨーロッパ人はプライベート優先なのか

一般的に、ヨーロッパにはプライベートを大事にする文化があるといわれているから、穿った見方をすれば、彼らは仕事を二の次にしてでもバカンスを取っているのではないかという可能性もありえないでもない。しかし、私は決してそんなことはないと思っている。

マクロ的なアプローチにはなるが、日本を代表する自動車メーカー、トヨタ自動車の2012年度の売上高は22.1兆円、営業利益は1.3兆円、売上高営業利益率は6.0%である。これに対し、欧州を代表する自動車メーカー、フォルクスワーゲンの同年度の売上高は24.2兆円、営業利益は1.5兆円、売上高営業利益率は6.2%である。日欧の業績比較はほぼ引き分けだ。

別の例を挙げるならば、日本を代表する重電メーカー、日立製作所の2012年度の売上高は9.0兆円、営業利益は4,220億円、売上高営業利益率4.7%である。これに対し、欧州を代表する重電メーカー、シーメンスの同年度の売上高は10.2兆円、営業利益は8,788億円、売上高営業利益率は8.6%であり、シーメンスの売上高営業利益率が日立を圧倒していることが分かる。

わずか2例で結論付けるのはいささか短絡的ではああるが、日欧を代表する会社同士で比較をしてみると、長期のバカンスを取得しているからといって、ヨーロッパの会社の業績が、日本の会社よりも劣っているということはなさそうだ。むしろ、より収益性が高いということが言えるかもしれない。

バカンスを取るために頑張る

私自身、欧州の会社と一緒に仕事をし、当地へ出張をしたこともあるが、彼らは、バカンスを取得することを前提として仕事を組み立てているように感じた。

バカンスを取得することが社会的コンセンサスになっているから、7~8月にかけて欧州全体でビジネスの速度が落ちることは暗黙の了解であるし、ひとつの会社の中でも、7月は誰が休んで、8月は誰が休んで・・・というように業務を調整し、お互いにフォローしあったりしている。

自分がいない間、社内の他の人に仕事を委ねたり、社外から臨時の派遣社員やアルバイトを受け入れたりしなければならないから、自分が安心してバカンスを取るためには、自分の仕事をつつがなく代行してもらうために、仕事を「見える化」しなければならない、というインセンティブが当然働く。仕事が標準化されるから、それが業務効率のアップにもつながる。

また、バカンスをキャンセルするのはよほどのことがない限り考えないが、かといってバカンスを取得した結果、仕事に重大な問題が発生したならば、自己管理が出来ない者として人事考課で不利益を受けたり、場合によっては解雇につながることもあるから、限られた時間の中で効率良く働き、仕事とバカンスを両立させなければならないというインセンティブも当然働くことになる。

さらに言えば、ヨーロッパではサービス残業は厳しく規制されており、効率の悪い人や能力の低い人がサービス残業をして辻褄を合わせるということは許されず、日本のように長時間働いているから「頑張っている」と評価されることは無い。

金融系の会社になると、不正行為を行っていないかのチェックを年1回行うために、「強制的に」バカンスを取らせるような仕組みにもなっているようだ。

このような労働環境があるからこそ、ヨーロッパの労働者は「時間は有限」という前提ありきで、その限られた時間の中で成果を出さなければならないという認識が熟成され、その結果、日本よりも短い労働時間で、日本と同じくらいの労働生産性を達成しているのではないだろうか。

日本にもバカンス制度を導入してみては

ここまでの考え方を振り返ると、ヨーロッパ人の働き方というのは、実は私たち日本人が思っているほどマッタリとしたものではなく、ある意味、ハードな働き方なのかもしれない。つまり、総労働時間が短い、バカンスを取得しなければならない、(サービス)残業もできない、ということになると、限られた時間の中で成果を出し切らなければ、「仕事ができない人」というレッテルを貼られかねないのだ。

日本のように、長時間残業もいとわず有給休暇も返上して働けば、一定の評価を受けられる余地がある、と言う環境は、ある意味では恵まれているのかもしれない。しかし、このような環境があるからこそ、負の側面として「過労死」や「サービス残業」といった話が、日本的な問題として浮かび上がってくるのだ。

私たち日本人がヨーロッパの仕組みを全く同じように真似る必要はないが、これからは日本でも、バカンスの取得を含め、短い時間の中で効率の出る働き方を、積極的に検討していく必要があるのではないだろうか。

そのような働き方ができるようになれば、ワークライフバランスの確立や長時間労働の緩和という労働者にとってのメリットはもちろん、会社側にとっても人件費が削減されて収益体質の向上、上場企業であれば株価の上昇というメリットもある。さらには、多くの人がバカンスを取得するようになった結果、観光業・レジャー産業・運輸業などの振興にもその効果が波及し、日本全体の再生に繋がっていくのではないだろうか。


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