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世界の富裕層が資金を預ける国 チューリッヒ(スイス)は脱税の温床として世界中から批判されてきました。プライベートバンキングとして、マネーロンダリングとして、または、所得税、法人税、相続税の対策として国際的な圧力にも負けず預金者のプライバシーを絶対に守るという立場でしたが、一転して、税務行政執行共助条約に署名しました。世界が金持ち優遇を看過できないという状況に追い込まれている表れです。

スイスの金融業

そもそもスイスのとりわけ金融業は、銀行秘密保護法(スイス銀行法47条の秘密保護条項)によって守られてきました。その総本山はUBS(Union Bank of Switzerland)やクレディ・スイスです。スイスは小国である一方、金融業が経済を担っているという自負もあり、国際世論に逆行する形で今までは個人の情報を開示するような圧力に毅然とした態度で突っぱねてきました。

しかしながら、2008年にG20首脳会談が開催され、グローバル・フォーラムがリストを作成し、矢継ぎ早に国際会議が開催されました。国際的な租税回避が平然と行われ、タックスヘイブンの存在が公然となるとさすがにおかしいと各国首脳は、指摘せざるをえなくなった経緯があります。折しもリーマンショックの直後でもあり、莫大な利益を稼いだ本人たちへその賠償を求めたいにも関わらず、資産の所在や金額が不明だと賠償を求めることができません。

IRS(Internal Revenue Service)はアメリカにある国税庁のようなものですが、ここがまっさきにスイスの銀行秘密保護法に噛みつきました。アメリカの権力もあってか、結果的には情報を開示するという形で幕引きを図ったわけですが、これによりスイスの秘密主義的な金融政策は終焉を迎えました。

しかしながら、相手がアメリカだということで開示したに過ぎず、それ以後ものらりくらりと追及の手を逃れてきました。

なぜ、このタイミングでスイスは租税条約に署名したのか

世界にはケイマン諸島やバージンアイランドなどのタックスヘイブンが存在しているのは周知の事実です。タックスヘイブンは簡単に説明しますと税金がまったくない、又は税金がとても安い国や地域をいいます。ここに本社があれば、いくらもうけても税金は払わなくても良いということになります。

しかし、世界的に活躍している企業が税金を納めていないとなると国際世論の圧力が高まります。昨今は、スターバックスコーヒー、グーグル、アマゾンなど世界有数の企業がさまざまなスキームにタックスヘイブンを取り組み納税を免れてきてました。儲けや資産はあるのに、税金を納めていない企業や金持ちは批判されることはあっても褒められることはありません。

さらに、世界の富裕層がお金を隠すことは百歩譲って良いとしても、例えばアルカイダや麻薬組織のマネーロンダリング(資金洗浄)になっていれば、スイスだけを特別扱いすることはほぼないと考えられます。各国の追及の手はますます強まっていきました。

これらのことから、スイス銀行協会は過去の脱税を助けてきたことを謝って、世界各国から追及をやめてもらう代わりに、秘密主義をやめて要請に応じて口座の情報を提供(交換)することになったわけです。

ゴルゴ13はどうするか?

劇画で有名なゴルゴ13は、スイスに預金口座を持っています。報酬はスイスの銀行に送金してくれというセリフとなっていますが、今後は仕事はやりにくくなることは間違いありません。世界的にも、儲けたのであれば適正な税金を納めるべきだという風潮になっていると思われます。

日本社会は少子高齢化から社会保障費の不足は今後100年間続くことは既定路線でもありますし、また、金持ちで儲かっているのであれば、そこから税金をとろうという普通の考えから、お金持ちに対して包囲網が狭まっています。収益の源が日本国内であれば、正々堂々と納税をして社会のパトロンとして胸を張る時代がそこまで来ているのではないでしょうか。国外に5,000万円を持っていれば、逃げも隠れもできない状況です。

藤尾智之
藤尾真理子税理士事務所 税理士 ファイナンシャルプランナー


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