20131029

親方は協会の「使用人」か?

財団法人日本相撲協会は、新しい評議員に華道家で元文部科学副大臣の池坊保子氏を選出したと発表しました。同協会は現在、「公益財団法人」への移行を申請しており、池坊氏は移行後の新法人で、初の女性評議員として就任する予定です。

2008年に施行された新公益法人制度では、従来の財団法人は、2013年までに一般財団法人あるいは公益財団法人へ移行しなければなりません。期限内に移行申請を行い、認可されなければ法人を解散したものとみなされます。

申請の期限は今年11月末。5年の期間がありながら、同協会の移行申請が行われたのは今年9月と、まさにギリギリでした。協会内で申請に向けた議論がまとまらなかったことが伺われます。

問題の一つとなったと思われるのが、新制度による財団法人で設置が義務付けられる評議員会の構成。評議員会は、会社でいうと株主総会のようなもの。役員の選解任等、大きな権限を持っています。

従来、評議員は「年寄名跡(親方株)」を持った元力士の親方らが務めていました。しかし新制度では、評議員は理事、監事、使用人を兼ねることはできないとされています。

同協会は、移行後の評議員を、池坊氏を含めた4人を外部から、そして残り3人を親方とする方針ですが、当然、「親方は協会の使用人ではないのか」との疑問が湧きます。これについて同協会は、評議員の親方については協会を退職し、雇用から外すとしています。重要な決定になんとか親方衆の意向を反映させたいとの思惑が見て取れます。

税優遇には更なるハードルが

日本相撲協会が目指しているのは、一般財団法人ではなく、法人税の優遇が受けられる公益財団法人であり、さらにハードルは高くなります。

問われるのは、その名のとおり「公益性」です。「相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与すること」と事業目的に掲げる同協会の活動については、世間を賑わした八百長問題等で、その公益性に疑問符がつけられているのはご存知のとおりです。

さらに、相撲界の根幹をなす慣習である、前出の年寄名跡の不透明な扱いも議論の対象となっています。従来、親方になるためには、親方株を高額の対価で購入あるいは賃借しなければなりませんでした。親方株取引の問題は度々取り沙汰され、税務調査が入ったこともあります。公益認定のためには、この問題もクリアする必要があるとみられています。

同協会は、親方株を一括して協会管理とし、売買等を禁止する改革案を示しています。そして、親方は自身の後任者を推薦し、協会から名跡を譲渡。新親方が「顧問料」のような形で前親方へ金銭を支払う形態を提案しています。この案には、後任者をどのように決めるのかが依然不透明であり、そこに裏金が介在すれば今までと構図が変わらないとの指摘もあります。

会計人のあいだでは、新制度のスタートから、財団法人の設立業務、公益財団法人への移行業務への注目が高まっています。「苦肉の策」を連発する同協会の新法人移行は、特殊ではありますが、特殊であるがゆえに、審査の可否を分ける「土俵際」が浮き彫りになる事例。その行く末に注目していきたいと思っています。

(記事提供/株式会社エスタイル)

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