20131227天秤

租税の基本原則は「公平・中立・簡素」。この原則に適合するのはどのような税制なのかという意見は様々にありますが、この原則自体に反対する人はあまりいないのではないかと思われます。

これらの3原則について、今後大きな議論が巻き起こりそうです。2014年度与党税制改正大綱で、8%、10%に増税が予定される消費税について、「税率10%時に」食料品など生活必需品へ軽減税率を導入すると明記されたのです。

税制の「簡素性」に不安あり

軽減税率は、消費税の逆進性に手当する「公平」のための制度といわれます。その公平への効果にも議論はありますが、確実に言えることは、仕入れ税額控除の複雑化など、軽減税率の「簡素」の観点からのマイナス。仕入に支払った消費税額が記載されるインボイス導入の是非を含め、激しい議論が予想されるところです。

何を軽減の対象とするのかも大きな問題です。よく引き合いに出されるのが、ドイツのファストフード店の例。店内で食事をする場合は、「外食」となり軽減の対象になりませんが、テイクアウトすると「食料品」扱いになるため、税率が低くなります。

批判的文脈で語られることの多いこの事例ですが、軽減税率の導入の是非を別にすると、ドイツが行うこの取り扱い自体には、それなりの見識があるのではないでしょうか。しかし問題は、軽減税率の制度設計ではこのような線引きの問題が無数に起こることです。国会議員や業界団体、財務省等のせめぎあいで、「中立性」の観点から疑義が生じる制度が出来上がる可能性はかなり高いと考えられます。

結論は1年後。税理士は何を考えるべきか

複数税率の公平・中立性については、税理士のあいだでもかなり意見が分かれています。しかし、簡素性についての懸念は、制度への賛成・反対にかかわらず実務家として多くの方が持っているのではないでしょうか。

日税連は、今年6月に公表された建議の中で、消費税の「単一税率の維持」を主張。そして、逆進性への対策は、「社会保障と税の一体改革」の中で解決すべきとしており、与党の大綱が決定し、この意見が維持されていくのかどうかについて非常に注目しています。

税理士は、しばしば自嘲的に「我々の仕事は税制が複雑なことで成り立っている」というセリフを口にします。もちろん冗談交じりなのでしょうが、税理士としての社会的役割は、複雑な税法を理解し、経営者の不安を払拭する適切な税務処理を行うことだけではありません。

大綱では、軽減税率の導入について2014年12月までに結論を出すとしています。導入の方針を受けた本格的な議論はまさに今始まったばかりです。税のプロとして、あるべき税制の姿について考え、広く社会に向けて有益な意見を発信していく矜持を持ちたいものです。

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(記事提供/株式会社エスタイル)


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