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いよいよ国民大増税時代の幕開けです。消費税、相続税、贈与税、所得税という国民の生活に直結する税金は軒並み増税です。しかし、消費を冷え込ませないために、緩和措置も用意されています。そのため、何が得なのか損なのかわからないよう状況です。情報を収集・分析して無駄な支出をしないようにすることが大切です。以下、家庭の支出に直結する税金や緩和措置について整理します。

マイカーの購入

消費税の増税時期は、平成26年4月と平成27年10月です。8%に上がるタイミングで、自動車取得税が5%から3%に(自家用自動車の場合。軽自動車は3%から2%)に引き下げられ、10%に上がるタイミングで廃止される予定です。自動車税については、エコ度に応じて今後も軽減が適用されます。その反面、環境負荷の大きい自動車は、重課の対象となります。これからは適度に買換えをしたほうが良さそうです。

上記のような緩和措置により、増税前後に購入しても、損得はないように制度設計されました。結局のところマイカーについては、欲しい時に欲しい車種を買うのが良いと思います。実際には、ディーラーの決算時期(3月や9月)が消費税増税の直前の月にあたるのでねらい目です。注意が必要なのは、自動車にかかる消費税は、登録をした日の消費税率が適用されます。たとえ平成26年3月に契約をしても、引き渡しが4月になった場合は、不足税率分を追加で支払うこととなりますのでディーラーに確認をなさってください。

軽減税率(複数税率)

食料品や新聞などに軽減税率を導入しようという動きがあります。しかし、消費増税の目的は税収を増やして社会保障費の不足部分を穴埋めしようというものです。そのため、軽減税率を導入すると結局は、目標とする税収は国庫に入りません。そうなると、次に待っているのは、不足部分を補うための増税です。増税の連鎖が始まるのでこの点から見ると導入はできません。また、現在採用している日本の消費税計算システムは軽減税率にまったく対応できません。さらに、軽減税率の対象となる消費財を決めることは困難を極めます。業界団体の綱引きが始まり、時間だけ浪費しかねません。この点からも無理です。ぜいたく品の基準なんて価値観の問題で国が決めるものではありませんし。

もし導入をするとしたらの話ですが、可能性として高いのは消費税率がヨーロッパ並みの20%になったときです。この時はさすがに、インフレも進んでいると考えられ、軽減税率を導入しないと可処分所得が激減し生活ができなくなります。しばらくはマイナンバー制度を駆使して、低所得者とそうでない方を捕捉して給付措置を施し、軽減税率の導入を延期するものと思われます。

住宅の購入、買換え

平成26年4月以降の消費増税の影響を緩和するために、所得税や住民税で住宅借入金控除額が増額されます。ただし、借入金が増えなければ控除額も増えません。このため、恩恵を受けることができるのは、3,000万円とか、4,000万円の借入金ができる高額所得者ゾーンです。借入金が2,000万円であれば住宅借入金控除額は増税前でも増税後でも同じ200万円です。この点は騙されないでください。その他、平成26年4月以降には、すまい給付金が手当されます。ただし所得に応じて線引きされますので、年収が高い方(正確には課税所得。申請には、個人住民税の課税証明書が必要です)は注意が必要です。すまい給付金のサイトに掲載されているシミュレーションを使って簡単に計算できますので、一度ご覧になってください。

住宅の取得と関係が深いのが親から子への住宅取得資金の贈与です。住宅の取得を促進するために、平成20年から親から子への住宅用資金の贈与は一定額まで非課税となっています。平成26年は、1,000万円(一定の場合500万円)までは非課税です。ただし、平成27年以降の贈与については、まだ何も決まっていません。この1,000万円(500万円)を超えて住宅取得のために贈与した場合には、贈与税がかかります。なお、親子間の贈与は、住宅取得資金の贈与に限らず、平成27年から税率が引き下げられます。平成26年と平成27年以降のどちらに贈与するかは、今後の法律の方向性を見定めて、改めて試算する必要があります。しかし、住宅取得資金の贈与の非課税枠は年々上限が引き下げられています。平成27年以降あるかどうかわかりません。そのため、平成26年中の贈与が節税の観点からお勧めです。

その他、相続時精算課税制度も活用できますので、相続シミュレーションを行うことでどうすれば節税対策となるのか良く見定めることが大切です。不動産取得税や登録免許税は、引き続き軽減税率が適用されますので、心配いりません。

住宅の買換え制度の特例も目が離せません。居住用住宅を買い替える場合で居住期間が10年を超える場合等一定の条件を見たせば、買換えた住宅の取得額までは譲渡所得税はかかりません。しかしこの制度は平成25年12月31日でいったん期限切れとなっています。3月の国会で延長法案が通過すれば、復活する予定です。復活後の法案ですが、取得価額が1億円までであれば課税されないこととなります。

給与所得控除

所得税は、給与所得控除額の減額が予定されています。平成28年からは年収1,200万円以上を対象に、平成29年からは年収1,000万円以上を対象に増税となります。1,000万円の大台に乗ったと思ったら手取りが減ったということもありえます。アベノミクスでは一生懸命、所得アップをスローガンに掲げていますが、実際に給料が増えたら税金で持ってかれるという話につながっているわけです。

とられるばかりではなく、特定支出控除を使って所得控除を増やして、所得税を抑えることは必須です。また、厚生年金基金や個人版401Kを使って控除額を増やして、将来の自分への仕送りを確保することはあたりまえの時代です。特に企業型拠出年金は、今後掛金の上限が引き上げられますので、資産形成にさらに有利となります。

平成26年4月から国民年金の給付額が下がります。今後の年金制度は綱渡りです。今の現役世代が給付を受けることができるのは、70歳からとなっている可能性は否定できません。しかも、もらえる額は掛けたぶんの半分も回収できないかもしれません。ハイパーインフレの可能性ばかりを心配して貯金しない方もいるかもしれませんが、後々後悔することがないように今からしっかりと備えたいものです。

NISA

いよいよNISAが始まりました。当初の制度設計では初めに申し込んだ金融機関に5年間しばられるということとなっていました。しかし、平成26年度の税制改正により、平成27年から毎年、金融機関を変えることができるようになります。当初は銀行の投資信託だけで満足していた個人投資家も、株式に興味が湧いてきたら証券会社に口座を開設して購入できます。各金融機関は、JPX日経インデックス400やJ-REITなど新しい商品を開発し、差別化を図っています。投資家を育成するためには、当然の制度見直しといえます。平成26年度から所得税も本法の15%(+住民税5%)に戻りましたので、上手に使って節税をするべきです。

業界団体としてはこのNISAの限度額を増やすことや期間限定を恒久的な制度にしてほしいと要望しているようなので、今からこのNISAに慣れておくことも大切です。

実効税率

所得税、贈与税、相続税などは超過累進課税という制度が使われています。簡単に言いますと収入額やもらった額が多ければ多いほど登り階段のように税率が上がるというものです。例えば、100万円までは5%、100万円以上200万円までは10%を課税することになっているとします。収入が200万円であれば、①100万円×5%=5万円、②(200万円-100万円)×10%=10万円 ∴①+②=15万円という税金の計算が成り立ちます。

実行税率は、これらのみせかけの5%や10%を税率としてとらえるのではなく、15万円という税金そのものに着目し、次のように計算します。15万円÷200万円=7.5% ∴実効税率は、7.5%。この考え方を節税シミュレーションに組み込みます。例えば、相続が生じた時に実効税率25%となるようでしたら、贈与税率が25%以下になるような贈与を今行えば損せずに次世代へ財産が移転できます。

税金は知らないと損することが多いので、積極的に情報を収集して自己防衛を図ることがとても重要です。

《参考記事》
■新卒はチャンス! 自己研鑽組サラリーマンへ 特定支出控除は絶対使うべし
■押し売りも怖くない!成年後見制度で財産を守ろう
■NISAの致命的な欠点について
■介護保険は保険ではない「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1)
■介護保険は保険ではない ケアマネジャーと上手に付き合う方法

藤尾智之
藤尾真理子税理士事務所 税理士 ファイナンシャルプランナー

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