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就職活動をしている学生から、第2志望、第3志望の会社にも「御社が第1志望です」と言うのはなんだか嘘をついているようで心が痛みます、という相談を受けた。同じ悩みを持っている学生は少なくないであろうから(実際、学生時代の私自身もそうであった)、そんなことで思い悩むのは取り越し苦労だよ、ということを伝えたく、今回の記事を書くことにした。

面接官が探している学生像

まず、はっきり言えば、面接官は社会人としてそれなりの経験を積んできた人間であるから、その学生の学歴や、これまで受けてきた会社、面接を受けに来たタイミングなどを見て、自社が第1志望でないことは見抜いている。その上で、「当社が第1希望ですか?」と質問しているのだ。

表面上だけ取り繕って、「第1志望です。」と答えても、嘘はすぐ見抜かれてしまう。

そうだとするならば、「金の斧、銀の斧」のきこりになったつもりで、潔く「御社は第5志望です。」と答えたほうが、「うむ、正直者でヨロシイ。君は採用だ。」と言うことになるのかというと、そのような美談も聞いたことがない。

では、内定に近づくためには、どのような対応をするのが正解なのであろうか。本稿では、面接官の頭の中を分析しながらその答えを見つけていくことにしたい。学生の自分をひとまず横に置いて、面接官の立場になって考えることが必要である。面接官は、社長なり上司なりから、どのような学生を採用するように指示されているのだろうか、ということに思いを巡らせてほしい。

会社は学生を採用したら、その学生が入社した日から給料を払わなくてはならない。右も左も分からず、1円たりとも売上に貢献していない学生に、4月1日から給料を払うのである。社会保険にも加入させ、新入社員研修も受けさせるのだ。なぜ会社はそうするかというと、その学生が成長して、将来は会社を引っ張っていく人材になることを期待しているからである。4月1日から給料を払うのは、会社にとっては先行投資ということだ。

とするならば、面接官が新卒採用で捜し求めているのは、「磨けば光るダイヤの原石」。すなわち、将来の会社を任せられる高いポテンシャルを秘めた学生である。決して「当社を第1志望にしていること」が決め手ではない。

キラリと光る学生を探すため、面接官は様々な質問をして、その学生のことを知ろうとする。そして、「御社は第1志望ですか?」の質問も、その裏には、以下で述べる3つのチェックポイントがあることを認識してほしい。

チェックポイント1 自社への興味

1つ目のチェックポイントは、仮に本音では自社が第2志望以下であったとしても、ちゃんと自社に興味を持ってくれているかどうかである。

例えば、自動車業界を志望している学生が、スズキを受けたとしよう。このとき、学生が「御社が第1志望です。」と答えたことに対し、面接官が圧迫面接を行った場合、「ホントは、うちみたいな中堅ではなく、トヨタさんやホンダさんに行きたいのではないですか?」と聞いてくるかもしれない。

ここで面接官の言葉の裏を見抜けず、「実は第2志望でした。ゴメンナサイ。」と答えてしまう学生は、間違いなく落とされるであろう。面接官が知りたいのは、「第1志望かどうかはともかくとして、あなたはスズキという私たちの会社にどれくらい関心を持ってくれていますか?」ということなのだ。

上記の圧迫面接に対する切り返し方の一例であるが、スズキの国別売上高を見ると、今後著しい経済成長が期待されるインドではトップシェアであるし、中国でも「長安汽車」という現地の大手自動車メーカーとジョイントベンチャーを組んで成功している。また、ASEAN諸国でも高いシェアを占めている。

したがって、スズキを志望する学生ならば、「私はこれから今後世界経済を牽引していくのは新興国だと思っています。ですから、新興国マーケットで競争力のある御社に入社させていただいて、私もその戦略の実行を担う一員になりたいです。」と答えれば、「私はだからスズキに入社したいのです!」という熱い想いを面接官に伝えることができるであろう。

チェックポイント2 論理的思考力

2つ目のチェックポイントは、論理的思考力や、それに基づく提案力である。

1つ目のチェックポイントとも関連するのだが、「なぜ第1志望なのか」を理路整然と説明できるかを面接官は見ている。

仕事は、日々提案の連続である。営業職であれば、お客様に自社の製品の魅力を説明しなければならないし、企画職であれば経営陣に「なぜこのプロジェクトを推進する必要があるのか」を説明しなければならない。経理部に配属されたならば、最初は伝票整理のような仕事かもしれないが、ゆくゆくは自社の財務状況を金融機関や投資家に説明して、投融資を引き出すような仕事も回ってくるであろう。

一般論として言えば、大卒社員が就く職務内容には、どのようなポジションであれ、何らかの提案力が不可欠である。面接官はその素養を見ているのだ。

チェックポイント3 協調性

3つ目のチェックポイントは、協調性である。

実際に入社して仕事を始めたら、社内・社外を含め、多くの関係者とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていかなければならない。様々な価値観を持った人がいる中、良い意味で、ホンネとタテマエの使い分けができなければ、社会人としてマトモな仕事はできない。正論しか言えない人間は、常に波風を立ててしまい、組織の中では「使えない人」になってしまうのである。

だから、「御社は第2志望です!」と正々堂々と言い放ってしまう学生は、組織に適応する能力が低いと思われてしまっても致し方あるまい。たとえ第2志望であったとしても、そのことを悟られないように相手の立場を尊重しながら会話を進められるのが大人の対応というものだ。

私は、大手企業で人事部の要職を勤めた方や、上場企業の役員の方などから採用について考えを伺ったことがあるが、多くの方が「こいつと一緒に働きたいと思えるか」が究極のチェックポイントだと言っていた。

まとめ

今回の話をまとめると、①その会社を充分に研究して、同業他社に対して秀でているところを見つけること、②志望動機を理路整然と説明できるよう整理しておくこと、③本心では第2志望であっても第1志望と答えるのは、社会人として当然の配慮であり、変に取り繕ったり気に病んだりしないこと。以上3点がポイントである。

これを踏まえれば、面接官の心理が分かり、ある程度は余裕を持って面接に臨むことができるであろう。他の学生から頭1つ抜け出し、内定は自ら近づいてくるはずである。

《参考記事》
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社会保険労務士・CFP 榊 裕葵


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