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一生懸命働くという事が美徳であるという価値観は、一種の信仰のように生活に根付いています。昔話でも最後に報われるのは働き者だと相場が決まっています。アリさんは暖かいところで生活して、キリギリスさんは冬になったら寒い思いをするという感じのお話を小さいころから繰り返し聞かされますからね。

でも、終わりのない『一生懸命』さに心身をすり減らしてしまっている人もいると思います。美しい言葉や美しい花にはトゲがつきものです。今回は、そんな一生懸命働くという美しい価値観に潜むトゲを抜いて、効率よく働いて成果を上げるという別の価値観で物事を見てみたいと思います。

どうして忙しいのかな

みなさんは年末年始はゆっくりできましたか?休めなかった人でも、少なくともペースダウンできた人は多かったと思います。

でも、「ゆっくりできてよかった」というだけで終わってしまっては改善にはつながりませんよね。一生懸命頑張っているのになぜいつも忙しいかについて考えてみなければ、状況は改善されません。原因が分からないものは管理のしようがないですからね。

構造的に仕事中毒が発生する

昔話では「○○どんは働き者でした。働いて働いて、最後には長者になりました。」みたいなお話があって、沢山働くことを推奨しています。

しかし、今は、PCさえ持っていれば24時間どこでも働けますし、区切りのない仕事が多くなっているのでそう単純にはいきません。

例えば、お客様に提案する資料の微調整などは、終わりのない作業ですよね?(そんな事無いですって?それなら、100%完璧に作りこんだ資料を「どんな細かい事でもいいので、改善点があったら教えてください」って同僚に回してみて下さい。みんな親切に改善点を教えてくれるはずです。)

何でもかんでも完璧を目指していたら、毎日「アッ、終電の時間だ」みたいな事になりかねません。でも、ちゃんとした成果物を出していきたいですって?そんな真面目で一生懸命やっているから、労働時間が伸びてしまうのですよ。

このように、現在の仕事は『働き者で真面目』にやっている人ほど、仕事中毒に陥る危険性が高いのです。

その努力無駄になっていませんか?

限りなく100%に近い資料と、90%の水準の資料で、得られる効果にどれほどの差が出るのでしょうか?言い換えると、90%の資料を作った後、残り10%の水準アップを目指す労力と、その10%の水準アップから得られる効果は釣り合っているでしょうか?なんだかしなくてもいい努力を一生懸命していませんか?

と、厳しい事を書くのには訳があります。みなさんは『収穫逓減の法則』ってご存知ですか?

簡単に言うと、「同じだけの努力をしても、だんだん得られる効果は減っていきますよ」といった法則です。どうですか?みなさんの仕事にも当てはまりませんか?

例えば、営業職の人の事を考えてみたいと思います。

気の利いた営業の人なら、成果の上がりそうなお客さんから順番に回っていきますよね?そのため、残業して訪問件数を増やしても、既に成果の上がりそうなお客さんは回り終わっているので、成果のあんまり期待できない客先を回る時間が増えるだけになりがちなのです。

『頑張れ』という同調圧力

ただ、そうはいっても仕事を頑張らないと周りの目がきついですよね。一般的な会社は『頑張っている』というプロセスが評価の対象になっていますからね。そして『頑張っている』事を示すのに一番わかりやすいのが、長時間働いている事なのです。

例えば、だれも、あなたが何をやっているかチェックしていないような職場に勤めているとしたら、あなたが「良くやっている」と思われるコツがあります。それは、書類を持って電話しながらオフィス内を歩き回ってみる事です。また、必ず誰よりも遅くまでオフィスに残ってみてください。

すると、あら不思議。仕事らしい仕事をしなくても、あなたの評価は上々になっていくはずです。(あ、数字で成果を測られるような職場では本当に「何もしない」のはダメですよ?ただ上のテクニックを活用すれば同じくらいの成績の同僚と比べて評価が良くなるはずです。)

どうですか?くだらないテクニックですよね?でもそういったモノがまかり通るような組織もまだまだ多いのが現実です。

「そんなわけないよ!ちゃんと評価されているorしているよ!」と思われる方もいるかもしれません。しかし、内閣府「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報(平成25年11月)によると以下のような結果が出ています。
・労働時間が長い人ほど、上司が長時間残業の人に対して「頑張っている人」「責任感が強い」などポジティブなイメージをもっていると回答。
・有給休暇の取得率が少ない人ほど、上司が有給休暇を取得する人に対して、「仕事より自分の時間を優先する」「仕事が少ない」などネガティブなイメージを持っていると回答。
・労働時間が長い人ほど、職場の雰囲気について「仕事の手順などは自分で工夫しやすい」と回答する人が少なくなる。
・正社員が長時間労働の削減に効果的と考える取組は、「計画的な残業禁止日の設定」、「上司の声かけ」、「短時間で質の高い仕事を評価」、「担当がいなくとも他の人が代替できる体制」など
・このうち、職場で取り組まれているとの回答の少ないものは、「短時間で質の高い仕事を評価」、「担当がいなくとも他の人が代替できる体制づくり」。

この調査結果は、部下側が「上司はこう考えているんだろうなぁ」という事を示してます。ただ、結局「上司は…」と考えている人たちが、そのうち上司になるわけです。そのため、上司がこう考えていると言い換えることもできますよね。

どうでしょうか、こんな考え方の人たちに囲まれていたら頑張って成果を出して早く帰っても、かえって評価が下がるといった悲しい事になりかねません。それに、この職場全体の遅くまで残って『頑張る』といった同調圧力を跳ね返すのは本当に大変なことですよね。

それでも区切る勇気を

でも、現代の仕事はどれだけやっても終わりがないような代物です。また、成果は努力の量に比例せず収穫は逓減していくといった経験則もあります。

人間は不思議なもので、習慣になれば長時間労働もそれほど苦にはならないものなのです。(もっとも、体やメンタルにはダメージが蓄積されると思いますが。)そのため、どこかで仕事を区切る勇気を持たないと、気が付かないうちにあなたも仕事中毒になってしまうかもしれません。

何のための仕事?

と、長くなりましたがこのエントリーの結論としては、今年は長時間労働の習慣に流されずに「自分の働き方を見つめなおしてみましょうよ」という事です。

「あなたは何のために働いているんですか?」という問いに「もっと良い仕事をするためさ」みたいに心の底から思える人は、今まで通り頑張っていただければと思います。(でも、周りにその価値観を強要するのはやめてくださいね。)

でも、「家族のため」とか「趣味にかかるお金を稼ぐため」といった風に考えるならば、その大切な事に時間をつかえているかを考えてみて欲しいのです。そして自分の大切な事に時間をつかえていないのならば、ワークライフバランスについて今年はちょっとだけ考えてみましょう。



《参考記事》
会社のために働くなかれ 岡田ひろみ
ダンダリンが教えてくれたこと。労働基準監督官が守るのは労働者の「命」 ~ダンダリン第11話の補足 榊 裕葵
仕事に「自己実現」を求めるな! 中郡久雄
「ベア」容認は本当に労働者の幸せにつながるのか? 榊 裕葵
女子大生でも分かる、3年間の育児休暇が最悪な結果をもたらす理由。 中嶋よしふみ

中小企業診断士 岡崎よしひろ


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