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アクリフーズ群馬工場から製造された冷凍食品を食べた消費者が食中毒を起こし、捜査の結果、従業員が容疑者として逮捕され、農薬を製品に混入したことを自供しました。

この事件が発生したことについて、一体何が問題だったのか、再発防止の対応策を私なりに考えてみました。

契約社員=社会の被害者?

容疑者は契約社員で犯行の動機が賃金の不満によるものとのこと。その件でネット上でも正規・非正規雇用間の賃金格差問題を取り上げている記事も見かけました。

確かに現実を見れば非正規雇用で働く若者の賃金の安さが問題となっています。しかし容疑者は49歳であり、「契約社員=社会の被害者」という単純な視点でこの事件を考えたくない、と思っています。

今回の事件においては、容疑者が工場内で容易に犯行ができたこと=会社のマネジメント体制に問題があると思われます。確かに容疑者の人物像についての評価としては素行に問題があり、社内でも「触らぬ神に祟りなし」という存在であったことは推察されます。しかし社内には正社員を含めた同僚が働いており、仕事を共同で遂行する立場にある以上、普段から誰も注意・指導をしなかったということは彼らが全く責任がないということは言えないでしょう。

マネジメントを放置した代償

今回の事件で会社が被った損害額は、販売金額ベースで約13億円相当と見積もられています。

加えて、親会社のマルハニチロホールディングスの株価が直近高値190円(12/27終値)から170円(1/30最安値)と20円値下がりし、発行株式数約49,600万株を掛けあわせると時価総額にして約99億2千万円の損失となります。

さらに消費者に対して商品の信用喪失による売上減に加え、被害に遭われた方々が損害賠償の訴えを起こした場合を考えると、これ以上の損失が見込まれます。

この金額と容疑者にかけた一般管理費(推定年収200万円)と比べると、あまりに大きい代償であることが伺えます。

だからといって、仮に従業員の賃金をアップさせていたとしても今回の事件はやはり発生したと思っています。なぜなら、人間というものは絶えず欲求に飢えた生き物であり、自制する仕組みや環境が整っていなければ欲求が勝ってしまうからです。つまり、賃金をアップしても最初のうちは欲求が満たされても慣れてしまえばまた上への欲求が芽生えてくるのです。

ではどのように従業員をマネジメントしていけばこのような事件を再発防止できるのでしょうか?
マネジメントには金をかけず声をかけて欲しい

今回の事件を受けて専門家による調査チームが既に問題分析を開始しており、その結果を元に何らかの対策が打たれることと思います。

私は衛生管理のプロではないので細かくは分かりませんが、考えられるものとしては、監視カメラの設置や作業マニュアルの作成、工場へ入館する前のボディチェックなどが挙げられます。

そのような押しつけ的な対策の他に、従業員に対して心の指導も合わせて行って欲しいと思います。先に述べた通り、人間には欲求というものがあるので、その欲求を良い方向へ活用していくのです。

マズローの欲求段階説には「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「尊厳欲求」「自己実現欲求」の5段階があることをご存知な方も多くいらっしゃることと思います。

「生理的欲求(睡眠欲・食欲など)」と「安全欲求(安心・安全に暮らしたい欲求)」は会社が供与できるものに限界があり、過剰な労働をさせないことと最低限の賃金を保証することが前提となります。

その他の「社会的欲求(集団に属する、仲間を求める欲求)」「尊厳欲求(他者から認められる欲求)」「自己実現欲求(自己の能力や可能性を発揮し創造的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求)」を上手く促して指導していくことです。

まず社会的欲求を満たせる指導として、従業員に対し会社のミッション(使命)を伝え、自分が会社で作業することに誇りを持ち、同僚を”職場の戦友”としての所属意識を植え付け、会社内での居心地の良さを持ってもらうようにします。会社を退職する人の一番の理由が「人間関係」である通り、入社して問題が発生することは人間関係が上手く行かないことです。逆に社内で良好な人間関係が保たれている人は、賃金が安いことに不満を持っていても所属意識が出来上がっているため、同僚に迷惑がかかるようなことは行いません。

尊厳欲求を満たせるには、たとえ単純作業であっても「○○さんがいてくれるおかげでミスなしで作業が進んで助かっているよ」という言葉一つかけるだけで言われた側は幸せになります。先輩後輩同士でも「バカだなー、こうやればいいだろ?」「すみません、○○さんが教えてくれるおかげで助かります」といった会話がいつも生まれるような職場作りをしていくことです。

自己実現欲求を満たせるには、日常の単純な作業の中に新しい発見を見つけたら褒めることです。例えば、もっと効率の良い作業手順を提案した人を褒める、消費者は今このような商品を求めているので作ってみたらどうかと提案した人を褒める、といったことです。意見を提案しやすいように報奨制度を取り入れることも検討するのも良いでしょう。単純作業を長く経験している人こそ少しの違いに敏感である場合が多く、商品開発に役立つケースも少なくありません。

以上のことは、賃金を上げなくともできる心のマネジメントです。会社は従業員に対しこれらのことを指導する・社内の人間関係を良好な方向へ持っていく必要があるのです。

容疑者は犯行を認めた後、会社や消費者の方々へのお詫びの供述をしているそうです。会社も本人も事件が起きてから気がつくのは遅いのです。


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