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最近、経営状況が悪化する「倒産」以外の原因で会社がなくなってしまう、というケースが多くなってきています。先日、2月10日に株式会社東京商工リサーチから発表された調査結果によれば、「休廃業・解散」件数が3万件近くになり、過去10年で最高となったとのこと。背景には、後継者不足があるといわれています。

日本の企業数の99.7%を占める中小企業では、現経営者の高齢化が進んでおり、今後、事業承継が増えることは確実と見られています。会社の「後継者」といえば、男性がイメージされることのほうがこれまでは多かった日本。しかし子どもの数は減る傾向にあり、一方で女性も外で仕事をすることも増えてきていることから、今後は女性が事業を承継するケースも増えてくると言われています。では、経営者になる女性が、あるいはそれを志す女性はどんなことを考え、準備すればいいのでしょうか?

働く女性が増えるとともに、承継する女性も増える

「女性活用」「女性管理職登用」「数値目標の是非」・・・メディアでこうした話題を目にしない日はありません。今月14日には、女性の活躍を促すため、府省庁横断で局長級会議が設置されました。アベノミクスの成長戦略のうち、「女性の活躍」は安倍首相自身が昨年4月の成長戦略スピーチで「私の成長戦略の中核」という通り、ここへきてにわかに注目されています。

今までも何度か「女性活用」はブームのように言われてきたことはありました。しかし、今回これまでよりも多くの企業が真剣に取り組んでいます。今年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)でも、女性管理職の数値目標やクオーター制(割当制)を設けるべきかどうか、議論が活発に行われました。しかし、何より事が急を要するのは、今後、15歳から64歳の「生産年齢人口」が急激に減少するからなのです。国立社会保障・人口問題研究所の出生中位推計によれば、生産年齢人口は、男女合わせて2010年には約8174万人いましたが、2040年には約5786万人にまで減少すると予測されています。生産年齢人口の減少は労働供給の減少ですから、技術革新等他の要素が伴わなければ、経済成長にはマイナスに働きます。女性という潜在的な労働力を活かさなければ、今のままでは国の成長を維持することが難しくなってきているのです。

では、私たち女性にはどのような「働き方」があるでしょうか。お金を稼ぐ目的で働く場合、大きく分けて「企業に何らかの形で所属するか、所属せず自ら起業して経営者となるか」の2つがあります。「起業」という場合、新たに起業する人を想定しますが、それ以外に今後増えると予測されている形態があります。それが、「(実家の)家業を承継する」という道です。

これから書いていく「承継する女性」とは、父や母、あるいは夫・親戚等、家族(ファミリー)が経営する家業を承継する女性のことをいいます。中小企業では、今まで、事業承継するときまずは長男、次男など、男性を第一候補として検討することが多かったのが現実です。一方、3年後の2017年になると、人口が多い1947年から1949年生まれの団塊世代が70歳代に突入し、承継の数自体が増えます。少子化が進み、株式保有との関係でも社長候補が限られるため、今後は経営者の娘、あるいは妻である女性が承継するケースも増え、女性経営者が増えることが予測できるのです。

なぜ、事業承継するの?

私は今まで「起業セミナー」の講師や起業相談対応を多く実施してきました。起業セミナーとは、これから起業をする人たちに対して、起業するのに必要な準備をお伝えし、実際に事業計画を作るようなセミナーを言います。数時間のものから何日もかけて実施するものまで様々ありますが、どんなに短い時間の起業セミナーでも私が必ず時間をとって書いてもらうワークがあります。それは、「今なぜ起業しようと思ったか」です。

起業も承継も、普段の仕事も、結婚も離婚も(!)同じです。やるかやらないかは自分で決めないと、必ず後悔します。人に言われてやると、「言われてやったのに・・・」という想いが残ってしまうものです。特に、起業や承継では、なぜ自分でやると決めたのかという理由をしっかり確認することが大事になります。その理由を考えてみましょう。

起業自体は手続きさえふめば比較的容易にできますが、難しいのはその後の事業継続です。少し古いデータにはなりますが、2006年の中小企業白書「事業所の経過年数別生存率」によれば、1年後の事業所の継続率は、個人ベースで62.3%、会社ベースで79.6%。つまり、30-40%の事業は1年ももたず廃業に追い込まれています。お金が足りない、人に裏切られる、そんなきわめて厳しい状況のときに何が自分を支えてくれるかといえば、それは、「自分がどうしてもその事業をやりたいと思った」という根底にある想い以外の何物でもありません。それがなければ歯を食いしばってお金を工面する方法を考えたり、立ち上がって次なる一手を考えるという気力がわいてこないのです。

ましてや、実家の家業、ないし先代経営者からの事業を継ぐ場合、通常の起業以上に、「これまで先祖代々積み重ねてきた歴史による知名度の高さ」「先代経営者をずっと信頼し、支えてきたスタッフの人たち」という、重い、かつ今後の事業継続に重要な要素が加わります。これらは、起業時には手に入れたくても入らない、大変ありがたい資産です。お金をかけて本来は集めなければならないものが手元にあるのですから。しかし、だからこそ、責任も最初から重いのです。

まずは経営理念に納得してから承継する

ゼロからの起業であれば、創業者が身一つから始めることが多いため、「責任」として負っているもののうち、最も大きいのは顧客に対する継続することの責任でしょう。前述したように事業を継続することには相当の困難を伴うため、「これ以上頑張れない・・・」という時期が何度も襲ってくることがあります。

これは実際の起業家の方の話ですが、開業以来、毎日夜遅くまで働いているにもかかわらず、売上がなかなか伸びず、毎月貯金が減っていくことの恐怖感に襲われていた時期がありました。見ていても非常に辛そうでした。でも、そんなときに彼はこう言ったのです。「でも、僕、この商売好きで始めたからできるんですよ。そうじゃなきゃこんな苦しいこと、やめてます」と。

起業して自分ひとりを食べさせていくためにも、このような苦労が伴うもの。ましてや従業員とその家族を抱える承継ではいわずもがなです。苦しいとき、やめようと思った時に自分を支えるのは、最初に抱いたその事業をどうしてもやりたいという「想い」なのです。会社で言えば、会社の存在理由、すなわち「経営理念」がそれに当たります。

中小規模の企業では、経営者の意思決定が社員に大きく影響するものです。社長の迷いはすべての決断に影響し、社員にも動揺を与えます。親を見ている子どもと同じで、社員は社長のことをよく見ています。自分が決めたことを確信をもって社員に伝え、説得し、動いてもらう。社長の想いを伝え、動いてもらうためには、社長自身がなぜその事業を始めたか、「経営理念」で社員をまとめあげていく必要があります。そして、その理念の実現のために一緒に働くのだ、ということを説得できなければなりません。そのためには、社長自らが、経営理念に共感し、自分で決めた道から逃げない、という腹のくくりと覚悟が求められます。

承継への道は続きます。

《参考記事》
女性活用 - 「女性だから」と「上げ底」は違う 岡田ひろみ
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AKB48 大島優子さん卒業に添えて~ 経営者が秋元康プロデューサーに習うべきこと 榊 裕葵 
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小紫恵美子  中小企業診断士


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