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「新入社員は朝一番に出社すべき」とか「新入社員が始業時刻の30分前には出社して先輩の机を拭くのが我が社の慣例だ」とか、明示か黙示かはともかく、新入社員に対して、早朝出社を促している会社は少なくない。このような労働慣習に対して、会社の方針なのでやむなく従っているものの、本音では不満を持たれる方も少なくないであろう。

法的な解釈と私個人の考え

社会保険労務士として正論を言えば、このような早朝出社の強制はいわゆる「不払い残業」の一種であり、当然違法行為だ。もし本当に出社させたいのであれば、業務上の指示として早出命令を出し、時間外手当も支払わなければならない。

したがって、社員側の立場で言えば、会社から正当な業務命令が出ていないのならば、何を言われようが始業時間より早く出社する必要は無い。始業時刻になったら直ちに業務に取りかかりさえすれば法律上は何の問題もなく、無償の早出奉仕を要求するほうがチャンチャラおかしいということである。

以上が一応の法律上の結論なのだが、私個人の意見としては、新入社員が自主的に早めに出社することには様々なメリットがあるので、一概に法律論を振りかざして杓子定規に考えるべきではないと考えている。私自身、社会人を10年近く経験している者として、早朝出社のメリットを3点ほど紹介したい。

「早朝人脈」ができる

1つ目のメリットは「早朝人脈」の構築だ。これは、新入社員にとっては、とてつもなく大きなメリットであると私は思う。「重役出勤」という言葉は実際のところ都市伝説で、仕事のできる重役ほど朝の出社は早い傾向にあると感じる。新入社員が重役と話をする機会など通常の仕事の中ではなかなかないが、朝ならば「おはようございます。」の挨拶をきっかけとして、自然な会話が生まれる。

新入社員が1番に出社して皆の机を拭いていたら、2番目に出勤してきた重役が「おはよう、頑張っているな!」と声をかけてくれることだろう。それが一度や二度でなければ、「おはよう。」の後にちょっとした会話が続き、その重役から顔と名前を覚えてもらえるはずだ。そうやって、「早朝人脈」が部門や職位を問わず、1人2人と広がっていくのである。

この早朝人脈は、仕事をしていく上で大きな力になるのだ。仕事というのは大抵、自分1人では完結せず、多くの人の協力を得ながら遂行していくものである。社内のことをまだほとんど知らない新入社員にとって、社内調整をすることや、他部署へ依頼をすることはハードルが高いものだ。しかし、様々な部署に「早朝人脈」を持っているならば、その人脈を突破口にして、他部署へスムーズにお願い事を通してもらうことができる。「早朝人脈」によって、仕事上の精神的なプレッシャーはかなり軽減されるのだ。

また、不幸にも自部署で孤立したり、直属の上司とうまくいかず冷遇をされたりしてしまうことがある。サラリーマン人生にはそんなトラブルも1度や2度はつきものだ。しかし、直接の利害関係がない他部署に早朝人脈を持っていれば、客観的に相談を持ちかけることもできるだろうし、その早朝人脈が役員級や部長級の人物であれば「キミが良ければうちの部署に来ないか?」と救いの手を差し伸べてくれるかもしれない。

「パフォーマンス」も大切

2つ目のメリットは自分の身を守るための「パフォーマンス」だ。

営業のようにはっきりとした数字で評価される職種ならばともかく、多くの仕事は、客観的な成果と業務評価を直接的に結びつけることが難しい。新入社員が任せられるような仕事では、業務上の成果だけで同僚との差別化を図ることもなかなかできないことが多い。

そうなってくると、最終的に上司が評価の拠り所とするのは、「勤務態度」である。就業時間中の勤務態度がマジメであるのは当然であるから、そうなってくると「アイツは朝早くから頑張っている」というプラスアルファの部分が決め手となって、1つ上の評価を付けてもらえたりするし、逆に、あいつはいつも遅刻スレスレだから1つ評価を落としてやろう、という意思が働くこともある。上司も人間であるから、最終的には感情論の世界なのである。

また、早朝出社によって「アイツは頑張っている」というお墨付きをいただいておくことが「保険」になる場面がある。例えば、仕事上で何か失敗をしたとき、普段からだらしない姿勢を見せていたら「だからお前はダメなんだよ!」と、ドヤされるのがオチだが、頑張っている(という印象を醸し出している)人ならば、同じ失敗をしても「ドンマイドンマイ、たまにはこういうこともあるさ!」と上司や先輩から暖かい言葉をかけてもらえるであろう。

新入社員は分からないことだらけなのだから、何かに付け失敗してしまうのは不可避である。だからこそ、失敗したときのために「アイツが頑張っている」という印象で保険をかけておくのは合理的なのだ。

さらに言えば、早朝出社をしていれば、いざというときに、残業を断りやすくなる。サラリーマンをしていると、彼女と大事な約束をしているとか、友人と外せない予定があるとか、そんな日に限って残業を頼まれてしまうことがある。

そんなとき、いつも朝早く出社している人ならば、上司に対して「申し訳ありません。今日だけはちょっと予定が・・・」という交渉を心理的にもしやすくなるし、上司も「キミが言うなら大事な予定なんだろうな」と納得してくれるはずだ。しかし、毎朝始業ギリギリに駆け込んでくるような勤務態度であれば、上司も人間であるから「朝が遅いのなら残業くらいはしてくれたまえ!」と言われてしまうのだ。

自分自身のためにもなる早朝出社

ここまで読むと、サラリーマン根性のススメみたいに見えてしまうかもしれないが、3つ目のメリットは自分自身の仕事力が向上するというメリットである。

例えば、出社1つにしても、ピーク時の満員電車に乗るのはそれだけで体力を消耗してしまうが、早朝の空いている電車ならば悠々と座ることができ、その時間を有効活用して、読書や資格試験の勉強に充てることもできるであろう。

会社に着いたあとは、悠々とパソコンを立ち上げ、スケジューラーやメールをチェックし、今日1日何をやるか、仕事を組み立てる。優先順位をつけて仕事に取り組めば、手当たり次第に行き当たりばったりで仕事をするよりも遥かに高パフォーマンスだ。

業務時間中は忙しくてなかなかつかまらない上司に対しても、報告事項があれば、「始業前で申し訳ありませんが」と声をかけ、サクッと報告を済ませれば1日の仕事がますますスピードに乗るはずだ。

朝一番にメールをチェックしておけば、上司の先手を取ることもできる。自分が担当している仕事に関するメールは通常、「宛先:自分、cc=上司」で送信されてくることが多い。このとき、そのメールの内容がトラブルなどに関するものであったならば、上司はccでそのメールを見て「キミ、この件はどうなっているのだね?」と聞いてくるはずだ。

そんな場面で自分が先にメールを見ることができていれば、上司が来る前に「課長にもccで入っていたメールの件ですが」と、自分からトラブル報告に行くことができる。トラブルが発生した事実は消えないが、そのトラブルに対する迅速な対応で評価を得ることができるであろう。逆に、朝キリギリで出社して、パソコンも立ち上がっていない中、上司から「キミ、どうなっているんだね?」と言われてしまう悲惨な状況を思い浮かべてほしい。

まとめ

早朝出社に関して、労働基準法で合法違法を論じたら結論は見も蓋もないが、ここまで述べてきたように、「ビジネスマンの心構え」という立ち位置で、本稿を捉えて頂くことはできないであろうか。

仕事を人生の中でどれくらい重要なものと位置づけるかは人それぞれであるから、全員が全員、早朝出社を是として働く必要はないし、会社や上司がそれを強制すべきでもない。

しかし、ひとりのビジネスマンとして力を磨き、大きな仕事をしたいと思うならば、まずは会社の中で評価されるような働き方をしなければならない。会社の中で信頼が得られなければ、重要な仕事は任せてもらえないから、成長のチャンスを掴むことすらできないのだ。

入社して何年たってもルーティン的な仕事しか与えてもらえなければ、折角正社員として採用してもらった意味が半減するし、年齢相応のスキルが蓄積されていなければ年とともに転職は難しくなるであろう。だからこそ、自分のキャリアを守り、高めるきっかけとしても、「早朝出社」は有用な手段のひとつではないだろうかと、私は考えているのだ。

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特定社会保険労務士・CFP
榊 裕葵


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