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これまで事業の承継について話してきました。事業承継においては、その財務的・法務的側面が強調されることが多いのですが、実際にはその後の経営を担う覚悟こそが重要です。日本においては、事業経営は男性が行うという固定観念が強いと言わざるを得ない状況ですが、果たして女性は経営に向いていないのでしょうか?私は、女性と男性を比較する視点で考えるのではなく、女性には女性の強みがあり、それを経営に活かすことこそが重要だと考えています。

例えば、2014年3月22日の日経新聞朝刊「女性が作るデパート 元気」という記事では、働くのはほぼ女性だけ、という百貨店が紹介されています。「西武所沢店では、職員を女性だけにしてから2年、全国の百貨店が毎年3%前後の売上減に見舞われることも多い中、堅実に成長を続けている」とのことです。事業経営に役立つ「女性目線」とは一体どんなものなのでしょうか?

消費の64%は女性が決める

今、サービス業に求められるのは「顧客視点」ですが、顧客になる機会、すなわち消費者としての経験が豊富なのはやはり女性です。ボストンコンサルティンググループが2008年に実施した「女性と消費に関するグローバル・サーベイ」によれば、全世界の消費の少なくとも64%は女性が決定しています。

実際に女性が購買決定している事例は数多くあります。女性自身が消費するための食料品や服飾・アクセサリー等は当然ですが、購買は男性が行うもののその決定は女性が担っているものも多くあります。自動車や住宅購買の意思決定において女性が重要な役割を担っているのは分かりやすい事例です。また、先に挙げた日経新聞の記事の中では、ホワイトデーのギフトが挙げられていました。記事によれば「ホワイトデーのギフトといえば、男性が買うと思われがちですが、実は代理購買で主婦が買うことが多かった」とのことです。

女性社員の「顧客目線」なくして売上増なし

一般的に言って、女性は、共感、つながり、愛、安心、幸福を求める傾向が男性よりも強い傾向があります。これらの「得たい感情」を実現するために、製品やサービスに対してきめ細かい要求を持っています。たとえば、その商品が産まれたストーリーや役割に共感できるか、過度の農薬を使っていない安全な食品か、製品の原材料は安全なものかどうか、フェアトレードによる輸入品かどうか、などに女性は注目し、そうした商品であれば意欲的に購買するのです。先程紹介したホワイトデーのギフトの例でも、「ギフト用に主婦がハンカチを代理購買することに気付いた現場の女性従業員が『女性が欲しいと思うかわいいハンカチを仕入れたい』との企画を出し、その熱意が仕入先にも伝わり、ホワイトデー企画でのハンカチ売り場の売上が前年比で8%もアップした」(前掲日経新聞朝刊記事)そうです。

こうした「多くの購買を決定づける女性の買い方」について熟知していることは、販売する側にまわった場合、大きな強みとなります。男性が机上で考えたマーケティング案よりも、女性が現場で自分の目線にたって考えた「売るための方法」のほうが、説得力をもって消費者に届き、かつ仕入先にも説得力を持つことがある理由です。

今後は働く女性も増え、所得が増える女性が増加します。当然、購買力を持つ女性が消費者として登場、ますます女性顧客を重要視する必要が高まります。一方で、まだまだ家事や育児も同時にこなさなければならない女性だからこそ欲しいサービスも生まれてきます。顧客満足度を引き上げ、売上を伸ばしていくために、経営者が積極的に女性社員の「顧客目線」を役立てない手はありません。女性が経営者となればさらにその力を発揮しやすくなるのです。

《参考記事》
至上最恐のクライアント?! 小紫恵美子 中小企業診断士のブログ
承継シリーズ 社長になる女性の最初の心得  小紫恵美子
事業承継をドロドロなものにしないために大事なこと  小紫恵美子
女性活用 - 「女性だから」と「上げ底」は違う 岡田ひろみ
「従業員満足」で企業業績は上がるのか?  中郡久雄


小紫恵美子  中小企業診断士 


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