SCOL(12)

女性活用の動きがいよいよ本格化してきました。安倍政権も先月閣議決定した「改訂版」成長戦略で女性の活躍推進を改めて打ち出し、経団連も女性登用に関する自主行動計画を47社分発表する等、動きは加速しているように見えます。しかし、現実にはまだようやく始まったばかり、というのが女性側、経営者側双方の正直な気持ちでしょう。

日産自動車株式会社CEOのカルロス・ゴーン氏は、「現在女性管理職が7%であるわが社にとっては2017年3月までに10%の目標がより現実的だ」と語っています。政府の2020年までに指導的立場にある女性を30%に、というのは野心的すぎる、と。(2014年7月18日ニュースフィア記事「『2020年に女性管理職30%』は急すぎ?日産ゴーン社長、政府目標に疑問、独自目標掲げる」より)また、私が以前勤務していた会社に現在戻れるかといえばそれは困難であるように、一度会社を辞めてしまった場合には、もとのポジションで同じように正社員として仕事を続けることはまだまだ難しいのが現実です。

もし、自分がやりたいことが今の会社ではそう簡単に実現出来ないのであれば、組織から自由になり仕事を継続する、つまり、起業するというのもひとつの手です。日本は確かに今まで開業率が低かったのですが、先月に閣議決定された成長戦略ではベンチャー企業への投資の所得税優遇や、会社員の副業規制の緩和、補助金で起業家に年収500万円を保証する、といった政策が検討される(2014年5月3日日本経済新聞記事「補助金で年収500万円保証 政府、起業促す」より)など、その内容の是非はともかく、起業を促進する方向性に政府も舵を切っています。

「起業」というといわゆる「キャリア追求型」、前回まで掲載していたマトリックスの中でいえば、仕事に対するスタンスとして、仕事セーブ要因もなく、付加価値の高い仕事をめざす人でなければできないというイメージもあるかもしれません。しかし実際には、私自身の経験も踏まえ、少なくとも3つの観点から、仕事セーブ要因をかかえる人にとっては特に相性のよい働き方であると考えています。

■自分で時間管理をすることができる
会社組織にいると、多くの場合、一定の時間に一定の場所にいることを求められます。しかし、いまだに幼稚園や小学校以上の親は、平日昼間に保護者会や委員会に出ることを求められるのが現実です。この点、自分で起業した場合、そういった子育て関連の予定も仕事同様にスケジュールに組み込むことで、比較的参加しやすくなります。会社組織にいる場合、たとえ制度として休暇制度があったとしても、「年休」や「午後半休」を繰り返しとること、特に兄弟がいて複数回行事がある場合、週に何度も休みをとるのはさすがに難しい、という声を友人からも聞いたことがあります。私も、独立当初は予定を合わせるのに四苦八苦していましたが、しばらくすると慣れてきて、予定を自分なりに組めるようになり、周りの人たちの協力を得ながら、仕事の量を減らすことなく、学校で委員をやったりすることで子どもたちの様子などもわかるようになりました。

ただし、「自営業だと時間が自由になる」かというと、半分はYesですが半分はNoです。どれだけ仕事をするか、どれだけ仕事以外のことに時間を割くか、そして、自営業にとってなにより重要な自分自身の健康を確保するための睡眠と食事をいかに捻出するか、について、自分をマネジメントする能力が組織の中にいる時以上に求められるからです。

■自分で事業領域を決められる
企業から独立して事業を自分でする、ということは、自分が何の仕事をするかについて自分で決められるということです。女性は、消費者、生活者としてのプロの目線を持っていますし、仕事セーブ要因となりうる子育てや介護に取り組むことによって、むしろ今まで気づかれていなかった新しいニーズに気が付く、ということも多くあります。

実際に、ママたちが集まる場づくり等、「自分があったらいい、と思ったのに今ないものを自分でつくるために起業した」という女性起業家も多く見てきました。こうした、自分自身が「何とかしたい」と思うことをそのまま事業にできる、あるいは自分がやりたいと思うことを仕事にできる、という点が、組織の中で仕事をすることとは異なる点です。言い換えれば、自分がやりたいことを自分の仕事にできる、というのは、まさに自己実現・生きがいを感じられる部分と、消費者・生活者としての視点をもった自分にしかできない独自性・差別化要因がともに満たされる部分と言えるのではないでしょうか。

■自分で自分の仕事サイズを決められる
女性向けの起業セミナー(これから起業をする人たちに対して、起業するのに必要な準備をお伝えし、実際に事業計画を作るようなセミナー)を多く実施させていただく中で、女性が目指す「サイズ感」は、大きく3つくらいに分けられるように感じています。第一に、家族優先で、今ある配偶者控除の範囲内で仕事をするというものです。自分ができること、得意なことが少しでも収入に結び付けばというスタンスで始めるもので、自分以外に主たる収入を得る人がいる場合が多くなります。第二に、配偶者控除の枠は気にしないけれども、大きくしたいわけではなく、自分のできる範囲内で事業をやっていきたいというスタンス、第三は、やるからには事業拡大を目指す、というパターンです。

事業を継続的に営むには、利益を上げ続けなければなりませんが、そのサイズ感や、どこまで時間・資金をつぎこむかは人それぞれです。また、同じ人でも、その人のライフステージごとに柔軟に変えることができます。たとえば、仕事セーブ要因があるうちは、家族との時間を優先させるスタイルで事業の拡大は控えめにしながら堅実に継続しておいて、セーブ要因が解消するにつれて、少しずつ業務範囲を増やして事業を拡大していく、など、柔軟に対応していくことが可能です。私も子どもが小さいうちは地方出張を少し控えめにしていましたが、大きくなるにつれて少しずつ出かける日数を増やしています。年々、一時保育等行政のサポートも充実してきていますから、毎年4月の行政のホームページは特に注意して使えるサポートをチェックするなど、仕事をできるようにするための手段を探せば、可能性はぐんと広がります。


以上、時間管理・事業領域・仕事サイズを自分で決められる、という観点から、起業のメリットを列挙させて頂きました。今所属している会社で自分ややりたいことが出来ない、ライフスタイルとワークスタイルの折り合いが難しい、という人には、他の選択肢もあるということを知って頂ければと思います。

もちろん、起業をするからには自らが事業主となるわけで、楽なことばかりではありません。当然、大変なこともあり、私自身は起業したいというクライアントさんに対して、あえて起業をお勧めしない場合もあります。次回は、特に女性の起業家の方が独立・起業する際に注意してほしいポイントについて、書いていきたいと思います。

《参考記事》
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html
■女性の買う力、売る力が経営を立て直す 小紫恵美子
http://sharescafe.net/37846203-20140324.html
■「良いお母さん」のレベルが高すぎる日本。働く女性は意識と行動をどうやって変えたらいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/39261507-20140608.html
■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38119326-20140407.html


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