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もうすぐ夏休みのシーズン。海外旅行に、地元への帰省に……、貴重な休暇期間にやりたいことを考え出すと「こんな日数じゃ足りない! もっと休めればいいのに」と感じることもあるのでは? 世界には、フランスのように「1カ月間の夏のバカンス休暇は当たり前」という国もあり、うらやましいかぎり。「日本人は働き過ぎ」という話はよく聞くが、なぜ日本ではフランスのような長期休暇が根付かないのだろうか? そこで、世界のワークライフバランス事情に詳しい渥美由喜さんにお話を伺った。

■バカンス取得が当たり前のフランス社会
1カ月の長期休暇はなぜ根付いた?


日本企業では、一般的に5日前後の夏休みが主流。中には、有給をくっつけて長めの休暇を取る人もいるが、「2週間以上会社を休むのは気が引ける……」と感じる人も多いのではないだろうか。一方、フランスでは1カ月のバカンス休暇は当たり前。日本とはあまりにも違う長期休暇の文化は、どのような背景から誕生したのだろうか?

「フランスでは、全ての労働者がバカンス休暇を取れるよう法律で定められています。さかのぼること80年前、2週間の有給休暇を労働者に与える『バカンス法』がブルーム内閣によって制定されたことがきっかけ。その後、1980年代にはすべての労働者に25日間の有給休暇を与える制度へと変化していきました。この法律を守らない企業には、罰則が科せられることになっています」

そもそも、フランスでのバカンス休暇制度導入には「観光収益をアップさせたい」という政府のもくろみがあったといわれている。結果的に、バカンス制度の普及に合わせて高速道路などのインフラ整備が国内で進んでいったそう。また、こうした長期休暇制度が浸透したフランス社会について、渥美さんは次のように語る。

「フランス人には“ライフ偏重型”の人が多く、仕事が最優先されることはあまりありません。『人生の一部として仕事があり、仕事=人生ではない』と考える人がほとんど。そうした価値観を多くの人が共有しているため、『休暇を取って仕事以外のことを楽しみ、自分に刺激を与える時間を持つことは、人としての当然の権利』だとされています。また、職場以外で形成できるスキルや、人脈作りもフランス人にとっては非常に重要なこと。ですから、バカンス休暇のような時間がフランス人には無くてはならないものなのです」

■高度経済成長がもたらした功罪
過剰な労働を美徳とする日本社会


一方、日本では「労働=美徳」という考え方が根深く、「フランスのような長期休暇の文化がなかなかなじまない」と渥美さんは語る。

「EU諸国には、残業する人を『仕事ができない人』と捉える傾向があります。フランス人なら『決められた時間の中で成果を出せない人は、使えない』と考えるでしょう。一方で、長時間働く人を『働き者』として賞賛するのが日本人。高度経済成長期に『働けば働いただけ利益を生み出すことができる』という経験をしたためだと思います。今、企業で管理職に就いている中高年の人たちの中には、その頃の経験から『残業をしてよく頑張っている』と部下を評価する人も少なくありません。そうした上司が社内にいることで、若手も『怠け者』のレッテルを貼られまいと休暇を取らなくなります」

また、フランス社会では「社会全体で休む」というコンセンサスのもと、バカンス制度をうまく運用しているという。
「日本企業の経営者たちの多くは、『社会が動いているのに、自分の会社だけ長く休んでいるわけにはいかない』と考えるでしょう。ですが、フランスのバカンス期間はどの会社も同じですから、自分が休んでいるときは周囲のクライアントなども休んでいる状態。つまり、社会全体の動きが全てストップしている。だからこそ、バカンスが終わって仕事が始まっても、『自分だけ周囲から取り残されてしまう』ということは起こりません」

「長く働いたものが偉い」という旧日本式の価値観がいまだに労働者に根付いていることと、休暇取得に対する社会全体のコンセンサスが無い状況が、日本社会で長期休暇がなじみにくくい要因となっている。

■日本でも秋のミニバカンス制度が導入される!?
休暇の意義を労働者からも発信しよう


「バカンスを取ることで得られるメリットは、企業・個人の双方にとって非常に大きい」と渥美さんは話す。
「今の日本のような、長時間労働を美徳とするような風潮は、中長期的に見て企業にとってもマイナスです。今は、労働者のアイデアが利益を生み出す時代。いくら長い時間働いても、利益が上がることはないでしょう。また、今後は人口が減り、優秀な人材の奪い合いの時代になる。業務効率を高めなければ、企業も労働者も生き残れません」

休暇取得でライフの時間を充実させ、視野を広げたり、地域や異業種などにネットワークをつくることができれば、10年後、20年後にビジネスのニーズやアイデアの種となるものを培うことができる可能性も高い。それは、企業にとっても個人にとっても大きなメリットとなるだろう。

「いつも忙しく働いている中で2~3日休暇をもらったところで、たっぷり寝て飲みに行って終わり、という人も多いのでは? ですが、与えられる休みが長期間となれば、人はその休みを『どう充実させようか』と前もって考えるものです。自己研鑽や自己投資に使える時間が増えれば、社会貢献や地域貢献についても考えられるようになりますよね。まとまった長い休暇が取れる環境がつくられれば、仕事はもちろん個人の将来的なキャリア形成においても、良い効果をもたらすのです」

現在、そうした“休暇のメリット”に気付き始めた企業が少しずつ日本でも増えている。中には、フランス並みのバカンス休暇を福利厚生の一つとして設置している企業もあるそう。

「安倍政権になってからは、女性活用の前提として、ワークライフバランスの取り組みを推進する動きが活発です。“秋のミニバカンス”の設置も政府によって検討されており、休暇を増やす流れがあります。日本の法定休日は他国と比べても少なくはないし、有給休暇の制度もありますが、その取得率は50%程度と低めです。ですから、何よりも大切なのは、きちんと休める環境や風土を企業内でつくっていくことかもしれません。それには、制度改革をただ受身で待つよりも、労働者自らが働きかけることが大事。仕事できちんと成果を出した上で、どんどん休みを取ってさまざまな経験を積み、人生を豊かにしていきましょう。そんなあなたの姿勢に共感してくれる仲間が増えれば、企業内の風土も少しずつ変わっていくはずです」

一人ひとりの働く女性がメリハリのあるワークスタイルを築き上げ、社内で“共感の連鎖”を生むことができれば、日本社会でもバカンス休暇を満喫できる時代がやってくるかもしれない。

【お話を伺った方】
内閣府少子化危機突破タスクフォース政策推進チームリーダー(東レ経営研究所 研究部長)
渥美由喜さん
海外10数ヶ国を含む、国内のワークライフバランス・ダイバーシティ先進企業750社、海外150社を訪問ヒアリングし、4000社の財務データを分析した実績を持つ。 また、コンサルタント、アドバイザーとして、ワークライフバランスやダイバーシティに取り組む企業の取組推進サポートや、官庁・自治体からの委託研究などの業務にも従事。現在、内閣府『共同参画』に「地域戦略としてのダイバーシティ」を連載中。最新の著書『プリズム企業』(ポプラ社)が2014年8月下旬刊行予定

取材・文/上野真理子

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