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歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん(以下「きゃりーさん」という)が、無断で写真撮影されたことに対して怒りのツイートを発信した事件が世間の注目を集めたのは記憶に新しい。

■街中で声をかけたときの芸能人の反応
以下が、その時のツイッターの引用だ。

こうゆう人には塩対応だよ。写真も断ったのにさ。RT (ユーザー名): 渋谷のPARCO前できゃりーにあった!きゃりーさんですよね?頑張ってください!っていったらめっちゃ塩対応だった。めっちゃ早足だし近づくなオーラやばい性格悪いな


確かに、私も含めて一般の人は、芸能人の方に対してテレビの中のイメージしかないから、街中で話しかけても、当然テレビと同じような笑顔やきさくな対応をしてくれるのかなと、つい考えてしまう。

きゃりーさんの塩対応を批判した方も、決して悪気はなかったのだろう。テレビのような反応をしてくれると思って声をかけたが、そうではなったので「あれっ?」と思って、つい毒舌的にきゃりーさんを批判してしまったのではないだろうか。

■芸能人も「個人事業主」だ
私は、キャリーさんが塩対応だったのは、少なくとも非難されるべきことではないと感じている。

というのも、「芸能人」というから特殊な存在に見えてしまうが、「働き方」という観点で突き詰めると、芸能人の方も、近所の八百屋さんや魚屋さんと同じ「個人事業主」であるからだ。

個人事業主に労働基準法は適用されないが、決して24時間365日働いているわけではない。八百屋さんや魚屋さんは休日や営業時間が決まっているはずだ。

例えば、ある八百屋さんでは営業時間が10時から19時と決まっているとしよう。23時にその八百屋さんに行って、シャッターをドンドン叩きながら「客が来たのに店を開けないとは何事だ!」と叫ぶ人はいないであろうし、万一、そんな人がいたとしたら、社会的には決して受け入れられない行動でる。

芸能人の方に対しても同じことが言えるのではないだろうか。

八百屋さんのように「何時から何時までが営業時間」と明確に決まっているわけではないが、芸能人にも開店と閉店の時間はある。いわゆる「オン」と「オフ」のことである。テレビに出ているときや取材を受けているときが「開店中」だとしたら、渋谷で個人的な買い物をしているときは「閉店中」なのである。

その「閉店中」のきゃりーさんに、当然のように芸能人としての対応を求めるのは、実は、深夜23時に八百屋のシャッターをドンドンたたくのと同じくらい配慮の足りない行動だったのではないだろうかということである。

八百屋さんも芸能人の方も、やはり閉店時間中は家族とゆっくり過ごしたり、プライベートを楽しんだり、のんびり体を休めたりしたいはずである。

■お互い配慮しながら柔軟な対応を
とはいえ、八百屋さんは閉店時間中にお客様からの依頼を全く聞かないということはないであろう。

例えば、顔なじみの奥様が「閉店時間後で申し訳ないが、明日、子どもが遠足なのに食材を買い忘れたので取りに行ってもいいですか?」と電話をかけた上で来店すれば、八百屋さんも快く応じてくれるはずだ。

きゃりーさんも別のツイートで、次のように述べている。

話しかけてもらえるのは凄く嬉しいし、時間がある時はサインも握手も大丈夫です。でも写真は全員にお断りしてるので、、、それで撮られてるの悲しい。カメラ向けられてるのわかった、、、くぅ、、


閉店時間中でも話しかけてくれるのはむしろ嬉しいが、しかし、写真はお断りしているという一線がきゃりーさんにはあるわけだ。

八百屋さんだって、店に取りに来てくれるというならば閉店時間中でも対応をするが、23時に配達に来いと言われたら、「勘弁してください」と言うであろうし、それをゴリ押しされたら「ふざけるな」と怒っても無理はない。閉店時間中に100%のサービスを求めるのは客側のオーバーリクエストである。

■写真の無断撮影は芸能人にタダ働きをさせてしまうことだ
さらに言うならば、芸能人の写真を無許可で撮影するということは、芸能人の方に対する営業妨害にもなりかねない。

芸能人にとっては、写真1枚も商品である。

テレビ番組の出演料、雑誌のグラビアの撮影料、AKBであれば握手をするためにはCDを買って代金を払わなければならない。芸能人の歌や握手、あるいは容姿そのものは、まさに「商品」なのである。

八百屋さんの話でいうならば、店先に並んでいるトマトを「ただでもらう」という人はいないであろう。少なくとも「試食していいですか」くらいは声をかけるはずだ。

つまり、芸能人の方が街中で握手をしてくれるというのは、本来商品価値のあるものをタダでくれたということなのであるので、私たちはそのことを認識しておかなければならないということである。

■まとめ
このように、街で芸能人を見かけたとき、笑顔で当然、サインをしてくれて当然、写真も当然、という発想は、芸能人の方の「閉店時間」や「権利」に配慮しない考え方になってしまいかねない。

ブログやツイッターなどを見ると、多くの芸能人の方が、それぞれの方の可能な範囲で、会話や握手、サインなどに応じてくれているようなので、私たちはそのことに感謝し、ファンとして節度のある行動をしていきたいものである。

《参考記事》
■就業規則は5万円で作れる!社労士はヘンリー・フォードに学ぶべきだ。: エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ
http://blog.livedoor.jp/aoi_hrc/archives/39646769.html
■社長必見!「うちの会社は10人未満だから」は禁句です。社員1人の会社でも就業規則を絶対に作らなければならない理由: エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ
http://blog.livedoor.jp/aoi_hrc/archives/39651615.html
■社会保険労務士は本当に「経営者の味方」「労働者の敵」という仕事なのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/35377589-20131204.html
■ワタミが「社員は家族」というならば、後藤真希さんのように振舞えるのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40391924-20140818.html
■JR九州「ななつ星」に学ぶ、おもてなしの心と経営判断 榊 裕葵
http://sharescafe.net/33871466-20131011.html

あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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