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9月5日の阪神タイガーズ戦で、中日ドラゴンズの山本昌投手が49歳25日で先発し、球史に残る勝利を挙げた。最年長先発および最年長勝利の記録更新である。


■山本昌投手からサラリーマンの教訓を得る
一般のサラリーマンでも40歳を過ぎたらリストラにおびえるご時勢に、プロ野球の世界でこの記録を打ち立てたのは本当にすごい事だと思う。

私は山本昌投手に直接お会いしたことはないが、著書の「継続する心」を読ませて頂いたことがあり、大いに刺激を受けた。そして、山本昌投手の生き方や考え方に学ぶことで、サラリーマンがビジネスの世界で長く生き残るためのヒントを得られると確信したものだ。

本稿では、私が山本昌投手の著書を通じて学んだ教訓のうち、とくに大切だと思ったことを4つ紹介したい。

■初心を忘れるべからず
第1は「いつまでも初心を忘れないこと」である。

山本昌投手は、プロ野球に入ってからずっと無遅刻無欠勤を続け、そして集合時間の30分前には到着することを心がけているのだそうだ。キャッチボールなどの基礎的な練習も、チームの中で一番長く行っているということである。

入団1年目2年目ならともかく、それを30年以上もプロ野球の世界にいる山本昌投手が続けているのだから、「継続は力なり」とはまさにこのことであろう。

サラリーマンも会社に慣れてくると、あいさつや整理整頓、基本動作など、若い頃には当たり前にできていたことが、だんだんできなくなってきてしまう人が少なくない。悪い意味で「要領の良さ」を覚えてしまうからだ。しかし、それは経営者の目から見れば、リストラ候補者に入る第一歩である。

社会保険労務士として仕事をしていると「若い人が入ったから私をリストラするのか」というような場面に出くわすこともある。しかし、年齢よりも、むしろ仕事に対する姿勢がフレッシュでないことのほうがリストラの原因になっていることも少なくない。

■お世話になった人へ不義理はしない
第2は「信義誠実を大切にすること」である。

山本昌投手はその長いキャリアの中でも、中日ドラゴンズ一筋だ。フリーエージェントの機会もあったが、ドラフト5位の自分をここまでの投手に育ててくれた中日ドラゴンズに感謝と恩義を感じ、たとえ年俸が倍になっても他球団に行く気は全くなかったということである。

長年にわたって信義誠実を大切にしてきた山本昌投手だからこそ、通常の選手であれば引退勧告を受けるであろう30代後半や40代で1、2勝しか上げられなかったシーズンでも球団は解雇せず、長期的な視野で契約を更改してきた。それが結果として選手生命を延ばし、今回の大記録にもつながったのではないだろうか。

逆に、近鉄時代の全盛期にFA権をほしいままにした中村紀洋選手などは、大リーグから帰ってきた後は球団を転々とし、2007年に中日と契約した際には年俸400万円からの出直しなど、厳しい野球人生を強いられている。

サラリーマンにおいても、今のご時勢、1つの会社を勤め上げることが美徳とは言い切れないが、山本昌投手の次の示唆は、ひとつの考え方として参考になるのではないだろうか。

有能だからヘッドハンティングされるのであって、これは勲章でもある。だが、それまで勤めていた会社で仕込まれ、仕事を教わったのだとしたら、給料の多寡やポストだけで転職していくのはどうだろう。僕なら、世話なった会社で、より能力を発揮したいと考えるに違いない。 (山本昌「継続する心」 p.107)


転職の道を進むにせよ、少なくとも、お世話になった会社へ不義理になるような形での転職は避けるべきであろう。因果応報でいつかは自分がしっぺ返しを受ける。

■上司の「想い」を受け止める
第3は「上司とうまくやること」である。

山本昌投手は、個性的な監督のもとでプレイをしてきた。中でも情熱派の星野仙一監督と論理派の落合博満監督では、上司のタイプとしてはまったく逆である。

通常であれば、真っ先に「この監督は合う、合わない」と考えてしまいそうであるが、山本昌投手は、常に監督の「想い」を理解しようとしていた。

星野監督に対しては、罵声や鉄拳制裁は単なる暴力ではなく、選手のためを思っての感情の高ぶりだと理解し、だからこそ、逆に、気配りや愛情も人並み以上に深いことにも気付き、星野監督を受け入れることができたということだ。

落合監督に対しては、「オレ流」監督の考える野球の姿を理解しようと努め、実績のある選手を特別扱いしないという方針に対しても腐ることなく「実力で監督に認めてもらおう」と前向きに練習に取り組んだということだ。

山本昌投手は、どの監督に対しても、その監督の長所を認めて、謙虚に学ぼうとする姿勢があったからこそ、自分の力を色々な角度から引き出してもらったり、アドバイスを受けたりすることができ、今日の大記録につながったのではないだろうか。

そうでなければ、30年も一軍のマウンドで投げ続けることはできないであろうし、下手をしたら監督と合わない、というだけで戦力外にされていたかもしれない。

サラリーマンも「この上司は合う、あの上司は合わない」と考える前に、それぞれの上司が何を考えているのかを理解しようと努めることが大切なのではないだろうか。そうすることで、自分自身がより多くのことを得られるチャンスにもつながるし、社内に余計な敵を作ることもないであろう。

■後輩を育てられるベテランは必要
第4は「後輩を育てられること」である。

山本昌投手は、このように述べている。

僕は、年齢的にも立場的にもチームを引っ張ることが球団から求められるだろう。また、これまでの経験を生かし、若手にアドバイスをすることは、お世話になったドラゴンズへの恩返しである。 (山本昌「継続する心」 p.193)


山本昌投手は、球団が自分に求めている役割も理解している。年に1勝や2勝しかできなくても契約を更新してくれるのは、一選手として投球することに加え、監督やコーチよりも近いところで選手たちの相談役にほしいという期待だ。

一般企業においても、リストラされる40代と、リストラされない40代では、この点に大きな違いがあるように思える。部長や課長といった役職に就けなかったとしても、若手社員の教育者や相談者として現場をまとめられるベテラン社員は、会社にとって間違いなく必要な存在である。

そして、このような後輩に対する教育者や相談者としてのポジションの確立は、第1の観点で述べた「初心を忘れないこと」の話とも密接につながっている。自分自身が当たり前のことをきちんとできていなければ、後輩がついてくるはずはないからである。

■結び
山本昌投手は著書の中で(謙遜も含まれているのであろうが)自分は天才ではなく、むしろ、ドラフト5位からのスタートで、プロ野球の世界では劣等生だったことを何度も述べていた。それでも、ここまで現役を続けられたのは、努力を継続する力が、結果につながっているということであろう。

私たちも同様に、当たり前のことを当たり前に継続する愚直さや、周囲に感謝し人間関係を大切にすることが、定石ではあるが、やはりサラリーマンとして長く現役を続けるための王道なのではないだろうか。

《参考記事》
■就業規則は5万円で作れる!社労士はヘンリー・フォードに学ぶべきだ。: エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ
http://blog.livedoor.jp/aoi_hrc/archives/39646769.html
■社長必見!「うちの会社は10人未満だから」は禁句です。社員1人の会社でも就業規則を絶対に作らなければならない理由: エンプロイメント・ファイナンスのすゝめ
http://blog.livedoor.jp/aoi_hrc/archives/39651615.html
■社会保険労務士は本当に「経営者の味方」「労働者の敵」という仕事なのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/35377589-20131204.html
■ワタミが「社員は家族」というならば、後藤真希さんのように振舞えるのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40391924-20140818.html
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http://sharescafe.net/40495735-20140825.html

あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵


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