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過日、ミュージックセキュリティーズ株式会社の猪尾取締役のお話しをうかがう機会がありました。ミュージックセキュリティーズは、日本の「事業投資型」クラウドファンディングの草分け的存在であり、『2014年版中小企業白書』(p429)にも取り上げられている会社です。これをきっかけに、クラウドファンディングの可能性について考えてみました。

今年の中小企業白書・第3部第5章第2節に、「ITを活用した資金調達」(p412~438)という項目が設けられており、「クラウドファンディング」についても言及されています。インターネットを介して不特定多数の人々から資金調達する「クラウドファンディング」は新しい資金調達のプラットフォームとして期待されている、と書かれています。まださまざまな課題が残されてはいますが、これまで金融機関が融資に関して消極的になっていた分野を補完できる可能性を秘めていると私は考えています。

■資金調達先を多様化する
いま日本で創業や新規事業立ち上げで資金調達をしようとすると、「補助金」か「金融機関からの融資」ということになります。補助金は多種多様にあります。補助金というとすぐ批判をしたがる人がいますが、国や地方自治体が企業のスタートアップを促し、経済を活性化させようとすることはおかしなことではありません。経済が活性化すればその効果はまわりまわってわれわれ納税者に返ってきます。一部の問題を取り上げて全面否定するのはもったいないことです。しかし、補助金では事業をスタートできても、完全に軌道に乗せるまでに十分な金額が賄われることは少ないのが現状です。

一方、金融機関は、ある程度事業が軌道に乗らないことには融資を受けられないことが多いでしょう。それでも融資を受けたい場合には、本人または親族の個人保証や財産を担保に提供するよう求められてしまう場合が多くみられます。

そして「補助金」と「金融機関」の間をつなぐ資金供給元がとても少ない。結局、資金繰りがつかず、起業や新規事業の立ち上げをあきらめざるを得ない起業家や中小企業・小規模事業者が見受けられるのです。

この隙間を埋めるものとして、創業してから軌道に乗るまでの間の資金調達先として、事業投資型クラウドファンディングを活用していく必要があると考えています。こうした投資をする人たちは、必ずしも目先の事業リターンを求めていると思えません。それを求めるなら別な投資先があります。応援する気持ちを持ちながら、ある程度、長い期間で考えている人がほとんどです。

特にモノづくりの場合に顕著ですが、よいモノを作ろうと思うと、長く時間がかかります。しかし、上記のような理由で、多くの中小企業は、長い期間でリスクマネーを調達するのは難しいのが現状です。

こうしたことを考え合わせると、クラウドファンディングが新しい資金調達先として大きな可能性を秘めていると考えられるのです。

また、こうしたファンドは、うまく運営することで、「投資家の顔が見える」状況を作り出せます。投資家の顔が見えれば、事業者としても投資して下さっている重みを理解し、何とかお返ししたい、と考える人が多くなると思います。事業者のモチベーションを高め、維持することにも役立つはずです。

■投資する側にもメリットが
一方、こうしたファンドに投資をする人のメリットはなんでしょうか。先にも触れましたが、目先の事業リターンを求めて、ということは考えにくい。自分が好きな物、気になるものを応援したい、少額でも出資をすることでコミットしたいと思っている方がほとんどだと思います。

応援したい企業から、モノやサービスを購入するというコミットの仕方があります。まずはここがスタートです。売上があがることで経営はまわっていくわけですから、購買はとても大事な応援です。これが高じると「その企業で働きたい」と思う人も出てくるかもしれません。貢献できるスキルやノウハウがあるならば、そうしたコミットの仕方もあり得ます。ただ、この間に、「投資」で応援する、という選択肢もあるのだと思います。

投資を通してより購入よりも重いコミットをし、その分、企業の成長に大きな喜びを感じる。これが投資家のメリットになります。
「投資のリターンに金銭的メリットがないなど考えられない」
という人もいるかもしれません。しかし。われわれが、五輪やワールドカップで日本代表を応援するのは金銭的メリットを求めてのことでしょうか。違いますね。「投資のリターン」においても同じような応援の仕方があってもいいと思うのです。

付け加えると、金銭的メリットがないわけではなりません。ミュージックセキュリティーズのファンドの場合ですが、実際のリターンは平均すると1~3%です。上下にブレはありますし、中には原本割れしているものもありますが、平均で考えると銀行金利より高いわけです。さまざまなファンドに分散投資することで、金銭的リターンを期待した投資先としても考えることは可能です。

■投資はお洒落で知的でかっこいい、社会貢献だ
タイトルは、「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの最高運用責任者(CIO)であり、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』の著者でもある藤野英人さんがあるセミナーでおっしゃっていたフレーズをお借りしました。とても共感を覚え、強く印象に残ったフレーズだったからです。

日本では、金融投資が胡散臭いもの、怪しげなものといイメージが根強くあります。
「投資?よくわかんないし危なそうだから、預金でいいよ」
という人がまだまだ大勢います。

投資は、いますぐ必要でないお金を、いまお金が必要な人に流していくものです。本来、誰かを応援する行為です。投資する側にもされる側にもメリットがあります。だから、正しく運用される限り、胡散臭いものでも怪しいものでもないのです。

こうした認識がもっと広まることを望んでいます。投資にお金が回れば、結果的に日本経済が活性化し、世界経済にも好影響を与えていくはずです。投資にお金が回るためには、いままで投資に興味を持たなかった人たちが、まず一歩踏み出してみることが必要になります。クラウドファンディングはそのための一つの受け皿となると可能性を秘めています。

<参考記事>
■【セミナー】プロジェクトを買う。「購買で応援する」の先にある「投資で応援する」 THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~
http://ameblo.jp/nakahisashi/entry-11900827258.html
■「従業員満足」で企業業績は上がるのか?  中郡久雄
http://sharescafe.net/34307228-20131029.html
■起業した貴女に伝えたい、事業継続するために大切なこと(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40388849-20140817.html
■起業家支援、女性活用など、成長戦略とは名ばかりの過干渉が国力衰退を招く (岡田ひろみ 経営者)
http://sharescafe.net/40159287-20140805.html
■仮説思考に基づかないビッグデータは単なる大量のデータです。 (村上知也 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40121883-20140731.html



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