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私は眼鏡が手放せない。

先週末、ちょっとしたご縁があり、眼鏡サロン”myamya”を運営する宮キヌヨさんに「眼鏡診断」をして頂いた。

■”myamya”の眼鏡診断
通常、眼鏡屋で眼鏡を買うときは、店内に並んでいる数々のフレームから気に入ったものを選んで、それにレンズを入れてもらうという流れが一般的であるが、”myamya”では全く違ったアプローチであった。

まずは、顔の形の診断から入る。眼鏡は、顔とのバランスが重要である。私のような面長であれば、縦幅のある眼鏡のほうが良く似合う、といった具合だ。ここまでは、通常の眼鏡屋さんでもアドバイスを頂けるかもしれない。

だが、”myamya”はここから先が凄かった。

私がどのような目的で眼鏡を欲しているのか、すなわち、プライベート用なのかビジネス用なのかということに始まり、ビジネス用だと答えたら、どのような職業に就いていて、そして、どのような場面で使う眼鏡なのかと、話が進んでいった。

私の場合は、社会保険労務士という、いわゆる「先生業」の仕事なので、相手に安心感を持ってもらえる印象であることが大前提である。

その上で、初めてアポイントを取ったお客様と会うときの固くなりすぎないイメージ、クロージングのときの自信に満ちたイメージ、講演会やセミナーで登壇するときの快活なイメージ、といったように、TPOに応じたイメージ作りにまで踏み込んで、眼鏡選びのアドバイスを頂いた。

女性の場合は、その眼鏡に合ったメイクの仕方なども含めてアドバイスを頂けるそうだ。

■眼鏡量販店の販売員の接客の問題点
ここまで話を聞いて、私は、数日前に立ち寄った、ある眼鏡量販店での接客を思い出した。ツープライスの店ではない、バーバリーやグッチのようなブランドフレームも扱っているチェーン店である。

店内に入ると、ほどなく店員が近づいてきて、「このタイプの眼鏡は今年の流行です」とか、「このブランドの眼鏡は、芸能人の○○さんも愛用しています」とか、あれやこれやとウンチクを言いながらフレームを勧めてきた。

まさに、雑誌を切り抜いたようなセールストークであった。

量販店の販売員が全てそうだと決め付けるつもりはないし、たまたま私についた販売員がそういうタイプだったのかもしれないが、少なくともその時は、一般論を「立板に水」のように話されても、全く購買意欲が湧かず、私は店を出たのだった。

■”myamya”は1人1人のお客様と真剣勝負で向き合う
そして、”myamya”を訪れたことで、私が量販店でなぜ購買意欲が湧かなかったのか、その原因がはっきりと分かった。

“myamya”では、お客様1人1人と対話し、「その人に合った眼鏡」を選ぶことに全力を尽くしている。職業やTPOなどもヒアリングして、最高の一本をお客様に渡したい、という心意気が伝わってくるのだ。それが、お客様の心を動かす、”myamya”の目に見えない付加価値なのであろう。

逆に、量販店での接客には「私」に対するアドバイスは全くといってよいほど無かった。だから、どんなに熱心に流行のフレームを勧められても心に響かなかったし、レンズ無料と言われても、全く買う気も起きなかったのだ。

“myamya”で眼鏡を作ると、1本あたり5万円は下らない。同じグレードの眼鏡を量販店で買った場合は、何割か安いかもしれない。だが、その人に合った、その人のための眼鏡を選ぶアドバイスに、多くの顧客が価値を認め、”myamya"を支持しているということだ。

お客様にしっかりと向き合い、相手の立場に立ったアドバイスというのは、それくらい価値があるものだと私は思う。

■銀座”いせよし”の接客力
もう1つ例を挙げるならば、私も顧客にならせて頂いている銀座の呉服屋、”いせよし”である。女将はシティバンクの元銀座支店長から転身した才色兼備な千谷美恵さん。

店内はサロンのような雰囲気で、季節に合った反物や帯が並び、女将さんと相談をしながら、お客様1人1人のニーズに合わせ、その人の個性を最大限に引き出す着物を仕立てることができる。

夏のシーズンに訪れたときには、色とりどりの絹紅梅や、落ち着いた綿紅梅の浴衣生地が所狭しと並んでいて、女将さんが、「様々な色や柄を揃えているが、その生地が似合う人が買ってくれると本当に嬉しい」と、語っていたのは印象的であった。

■社会保険労務士も同じだ
私のような社会保険労務士の仕事も、本を読めば知識的なことは誰でも手に入る。

だが、それでも経営者の方々が、私に対して、毎月数万円の顧問料や、1時間1万円以上も相談料を払ってくださるのは、決して一般論の切り売りではなく、その会社のために専門性を発揮し、知恵を絞り抜いた、私のアドバイスを有益と感じてくれるからであろう。

■キーワードは「For you」
眼鏡屋、呉服屋、そして社会保険労務士と、いくつかの話を述べてきたが、これに限らず、これからの世の中、お客様の心を掴み、価格競争の消耗戦に巻き込まれたりしないようにするためには「For you」がキーワードであると私は思う。

ただ物を買うだけならば、価格.comで検索して、最も安い店で買えばよい。1番安い店以外は、多くの場合見向きもされないか、リアルな店舗であれば値引き交渉をされるのがオチだ。

だが、「For you」という心意気で、親身にアドバイスをすることの価値は、プライスレス。決して価格.comでは図れないのである。

だからこそ、アドバイスの力というのは、オンリーワンの競争力の源泉になるし、「ファン」と言ってもよいくらい、お客様の心をガッチリと掴むのだ。

私は今回、”myamya”を訪れて、自分自身のイメージ作りに大きく役立ったとともに、ビジネスにおいて大切なことを再確認させて頂いた思いだ。

《参考記事》
■緊迫感漂う天丼屋。パワハラ店長では決して良い店は作れない理由 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41024581-20140926.html
■女子高生のバイトの時給は、なぜパート主婦より安いのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40790237-20140912.html
■サラリーマンも長期稼動するための秘訣を山本昌投手に学ぼう 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40740710-20140909.html
■社会保険労務士は本当に「経営者の味方」「労働者の敵」という仕事なのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/35377589-20131204.html
■ワタミが「社員は家族」というならば、後藤真希さんのように振舞えるのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40391924-20140818.html


あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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