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不当表示。本来はそれほど優れたものではないにもかかわらず「これは非常に優れものですよ」と表示することや、それほどお得でもないものを「これはお得ですよ!」と表示して消費者の誤解を誘うもの。

このような事がまかり通っていると、市場は酸っぱいレモンがあふれかえってしまいます。(アカロフのレモン市場になってしまいます。)

また、市場がおかしくなるところまでいかなくとも、消費者が被害を受ける事には変わりないので、制度として防いでいこうとの動きが生まれています。

報道では

 消費者庁は3日、実際よりも著しく優良と誤認させるなどの不当表示をした事業者に、課徴金を科す制度の概要を、自民党消費者問題調査会に提示して了承された。課徴金額は違反商品やサービスの売上高の3%とし、2016年度の導入を目指す。政府は制度を盛り込んだ景品表示法改正案を、開会中の臨時国会に提出する方針。

 課徴金とは行政当局が、法律を犯して不当利益を得た法人・個人から、その利益を没収する処分。金融商品取引法や独占禁止法などで導入されている。2014/10/3 毎日新聞


としており、具体的に課徴金を科すことによって不当表示を抑止することを狙っています。

■抑止効果
さて、この課徴金制度はこれから導入を目指すという事ですが、売上の3%と聞くと「わずか3%で効果があるの?」と考える人もいると思います。

そこで、売上の3%がどの程度のインパクトを与えるかについて考えていきたいと思います。

■どうして3%なの?
まず、3%の根拠ですが、答申では

課徴金による違反行為の抑止効果を担保するために必要な賦課金額については、故意による違反行為に対しては違反行為者が得た不当な利得以上の金額とすべきとも考えられるが、違反行為が故意によるものかそうでないかの立証が困難であることに鑑みれば、違反行為者の主観を問わず、事業者の得た不当な利得相当額を基準とすべきである。

中略

その算定方法については、平成 20 年改正法案において、事業者単位の営業利益率を参考に算定率を定め、これを違反行為の対象となった商品・役務の売上額に乗じることとされていたところ(資料2)、さらに過去の措置命令事案も精査した上で、不当表示の事前抑止のための必要・十分なインセンティブを与えるべく違反行為者の手元に不当な利得が残らないよう、適切に定めるべきである。
出典:内閣府HP 不当景品類及び不当表示防止法上の不当表示規制の実効性を確保するための課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置の在り方について(答申)


という基本的な考え方を提示しています。

要するに、「ワザとかそうでないかが分からないから、あまり重くせず、不当に得た利得分を徴収すればいいよね。」また「徴収する金額は営業利益率を参考にして考えればいいよね。」といった考え方です。

そして、このような考え方に則って、3%という数字を算出したのです。

■3%のインパクト
さて、売上の3%のインパクトですが、中小企業実態基本調査 平成25年確報(平成24年度決算実績)の数値をもとに説明してみます。(不当表示を行う可能性がある業種は絞れないであろうという考えから、法人・個人経営を問わず産業全体の中から比率を筆者算出)

本資料によると売上総利益率は26.7%、売上高経常利益率が3.3%となっています。この統計によると我が国の企業は1億円売り上げると、売上総利益額が2,670万円、経常利益額が330万円になるのですね。

そして、この数字をもとに3%の課徴金を取られた際のインパクトを考えていきます。そして、話を単純にするため、売上の半分を不当表示に関わる商材で稼いでいたとします。

この場合、売上高が1億円ですから、課徴金の額は

(1億円×50%※)×3%

で計算できます。

※売上高の半分が不当表示に関わる商材ですから50%をかけています。

計算の結果、課徴金は150万円となりますので、経常利益額330万円は課徴金を支払うと180万円まで目減りしてしまいます。この減少率は経常利益の45.5%にも及びます。

このように、わずか3%の課徴金率であっても、不当表示で得た利益のほとんどが没収されるイメージになるのです。

■とはいえ、必ず全額徴収されるわけではありません
今回検討されている課徴金制度では、不当表示で売り上げた商品やサービスの売上高が5,000万円未満の場合は課徴金が課せられないとされています。(上の例ではそれを踏まえて5,000万円にしています。)

また、不当表示を行っていた事業者が、自主的にお金を消費者に返した場合などは、課徴金から一部対応を勘案した額を控除するとされています。

また事業者が「ごめんなさい、違反をしていました」と自主的に申告した場合には課徴金額を半額にするという制度の採用も検討されています。

このように、今回の制度は、不当表示をすることの『うま味』をなくす(不当に儲けた分は課徴金で没収)事と、消費者の被害回復を図る(自主的に返金すれば、課徴金の算出にあたりその分を加味する)といった事が特徴となります。

■正直に商売をすることが大切です
さて、このように不当表示をする事の『うま味』は今回の制度が運用されると、ほとんど無くなります。何と言っても試算した通り、不当表示しても手元に残るお金のほとんどを課徴金という形で持っていかれてしまうわけですからね。

このことから、不当表示をすると、信用を無くした上に、それによって得られた利得も課徴金として取られてしまうという事です。どう考えても割に合わないですよね?

現在でも、不当表示は消費者を欺いて不当な利益を得るという非常によくない商売のやり方です。そのうえ、今後は、そのわずかの『うま味』もなくなるということですから、正直な商売をする事が大切になってくるんですね。

【参考記事】
■経営者保証という見えない鎖を外すためのガイドラインを活用し、有限責任というタテマエをタテマエではなくそう(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://4416keiei.net/archives/11710187.html
■お店を経営している人も生活者ですよね?消費税をめぐる報道を考える 岡崎よしひろ
http://4416keiei.net/archives/cat_496438.html
■社会福祉法人の内部留保を『活用』させても何も改善しないですよね? (岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39628354-20140701.html
■耳触りの良い『軽減税率』導入に伴うコストはだれが負担するのですか?(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39890391-20140717.html
■ソニーのPC事業売却の意義を固定費というキーワードで解説し、部下の尊敬を勝ち取ろう 岡崎よしひろ
http://sharescafe.net/36933366-20140208.html


中小企業診断士 岡崎よしひろ


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