毛見さん

安倍首相は先月都内で開かれた国際女性シンポジウムに出席しました。その際、女性起業家に対する補助金を法的な裏付けも含めて検討していく、と表明したと報じられています。今まで女性起業支援の仕事をずっとしてきた中で、起業する女性にとって、身近な女性起業家や経営者の方のお話を聴きたい、という要望をよく聞きます。一方で、セミナーなどに出向かないと実際に聴く機会が少ない、というのも事実です。

そこで、折に触れ、女性起業家や経営者の方にインタビューをして、起業、経営の「ほんとのトコロ」をお伺いしていく機会を作りたいと思います。第一回の今回は、maojian works株式会社の毛見純子氏です。同社では、働く女性の365日を応援する日本製ジャージードレスとスーツのブランドである「kay me」を展開、銀座の本店、新宿小田急に常設店を持ち、そのほかにも全国各百貨店に期間限定でお店を展開、急成長している会社です。私自身、こちらのワンピースを愛用しており、一ファンでもあります。

元気に働く女性が世の中に増えれば、きっともっと楽しくなる。そんな共通の想いを持つ毛見さんに、起業をしようと思ったきっかけや、実際に仕事で大事にしていること、そしてスタッフを雇い働くこと、プライベートなどについて伺います。

■起業する人には、本人が信じている「バックグラウンド」がある
――なぜ起業されようと思ったのでしょうか?
毛見 子どものときからできるだけ早いうちから大きい責任を抱えてやれるところまでやりたい、「はたらく」ことに対してはそういうイメージを持っていました。また会社員のときから脳内に湧くイメージを「かなうと信じて」、その先の景色を見てみたい!道なき道を新しく自分で作ってみたい!と思う性分で、決められた枠の中にいることや想定できる道を歩くのは涙が出そうなほど苦手でした。それで、消去法的に起業に結び付いたのかもしれません。

――起業される方は、ご家族や身近な方が経営者であることが多い印象ですが、どのように思われますか?
毛見 なんらかの「バックグラウンド」をお持ちの方は多いですよね。会社員だったころ起業家の半生記を読んでいたことがあります。ご自身の事業と、自分の親、祖父母などの生業や人生との間に、何らかの関係性や因果関係を見つけて納得されている場合が多かったのを今でも覚えています。ある意味、こうした「自分なりの納得感」、自分が決めた仕事をする「使命感」のようなものを持っている方は強いと思います。

――私も、使命感はとても大切だと思います。
毛見 社会的な体裁や家庭の制限などを正当化して言い聞かせていても、やっていることに違和感があったり、興味がずっと持てずに溜息ばかり出るのは、やはり本来その人がやるべきことではないのだと思います。母方の家がお寺でしたので、「自らの使命に素直に向き合いひたすら精進せよ」という教えに影響されていることもありますね。

■“ひらり戦法”で、しなやかで美しく、強い女性たちを応援
――毛見さんにとっては、起業して実現したい何か強い想いがあった、ということですね。
毛見 がんばる女性が笑いながら、楽しく生きていける、そんな世の中にしたい、という想いですね。基本的にわたしも我慢をするのが苦手ですから、活躍する女性にはさらに何も我慢せずにいてほしい、そういう笑顔や活躍が見たい、という願いがあります。kay me のお洋服はすべて自宅で洗え、アイロン不要です。またワンピースやツーピースですので毎朝のコーディネートに悩みません。それらにかかる時間を省くことでやりたいことに時間を投下してほしい、という願いがこめられています。

またkay me のアイテムはすべて伸びる素材でできているので、カラダをしめつけず肩もこらず年間を通してにこにこ過ごしてもらえます。またデザインはどちらかというとエレガンスやグラマラスを大事にしているので仕事中でもふとトイレの鏡なんかで自分を映したとき、やさしい気持ちやオンナらしい気持を思い出して「にやっ」としてほしいと思っています。

こうした要素は対外的にも、やさしく穏やかでエレガントなイメージを与えるので、まだまだ男性のほうが多い社会の中でそれらを華麗に「ひらり」とかわしてほしいと思っています。対等に正面衝突するのではなく、違う道をひらりとすりぬけて、早く目的地に到達する。kay me はそんな「非戦闘服」のイメージです

むしろ仕事中でも私は、女性という環境を楽しんでほしいという思いでワンピースを作っています。はたらくマイノリティだからこそもっと「注目されて願いを叶えてほしい」、そんな気持ちですね。

■まとめ~「使命感」&お客様がなりたいイメージを明確に提示すること
起業するにあたってまず大切な事は「なぜ私がこの事業をやるのか」という想いです。

実は起業することよりも、事業を続けることのほうがずっと困難なもの。そうした壁を乗り切るときに立ち返るのが、この最初の「想い」なのです。その中身は「キレイごと」でなくても構いません。しかしこれがないと、起業後に苦しいことにぶつかったときに、やめる理由を探してしまいます。事業継続のためにはなくてはならないものと言えます。

また、「お客様にこうなってほしい」というイメージがとても明確であることもポイントです。これまでの「男性社会仕様」に合わせるだけではなく、しなやかに仕事を進め、想いを遂げる。そんな女性を応援したいワンピースなんです、と言われただけで、私自身もう一枚欲しくなりました。これこそ、ターゲットのお客様が求めている、「このワンピースでどんな自分or私になれるのか」というイメージなのです。

次回は引き続き、毛見さんに、仕事で大事にしていること、スタッフと仕事をすること、プライベートについて
お伺いしていきます。

●お話を伺った方
株式会社maojian works株式会社・代表取締役社長 毛見純子
大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーションにて営業職、プライスウォーターハウスクーパースで組織人事コンサルティング、ボストンコンサルティンググループにて経営戦略コンサルティングに従事。2007年12月にmaojian works株式会社を立ち上げ、コンサルティング事業を提供、2011年3月に日本製ジャージードレスとスーツのブランドkay meを立ち上げる。
公式サイト:http://www.kayme.jp/

《参考記事》
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38119326-20140407.html
■仕事セーブ要因のある女性こそ、経営者という選択肢も検討を (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39955025-20140721.html
■出産後も仕事をやめずに働いた方がいい3つの理由(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40839083-20140915.html
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html


小紫恵美子 中小企業診断士 OfficeCOM代表

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