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安倍内閣の目玉として大臣になった女性閣僚二人が、不祥事の発覚により相次いで辞任に追い込まれました。


大臣本来の役割である法務や経済政策に取り組む以前の問題でつまずいてしまったことを惜しむ声も聞きます。私も心からその点を残念に思っています。では彼女たちには何が欠けていたのでしょう?本稿では、組織人としてのビジネスパーソンとして、女性が何を学べるかという観点から、この事件を考えたいと思います。

■「明文化されたルール違反」で墓穴を掘る
小渕氏と松島氏、二人の大臣は公職選挙法や政治資金規正法という法律違反の可能性を問われて辞任に追い込まれています。つまり、仕事ができなくて辞める羽目になったのではなく、仕事の能力とは別のところで致命傷を負ってしまったのです。

では、多くのビジネスパーソンが属している企業において、この「法律」に当たるものは何でしょう?そう、就業規則を初めとする「社内規程」です。

筆者は20年以上、会社員として仕事をしてきましたが、ついこの間まで肩で風切る勢いの上長が退職に追い込まれるという例を何度か目にしました。そういった突然の退職は、残った社員に対して上長や経営陣からその理由を説明してくれないものです。しかし後から聞いた噂によると、その保頓悟はセクハラや利益供与などの社内規程違反によるものでした。

このような社内規程違反は、昨日今日行われたものではありません。小渕前大臣のように慣習的に長年行われていたのに、それが突然糾弾されてしまうのです。本人にとっては寝耳に水でしょう。

なぜ不意打ちのようにルール違反が糾弾されるのでしょう?それは「組織内の誰かがあなたをつぶそうと考えたタイミングだったから」です。「ルール違反をしているか」という状態より、その人物が今、あなたをつぶしたいタイミングであることの方がカギです。そして往々にして、あなたが相手の想定以上に目立つ存在になった時、「つぶしたい」という欲求が引き起こされます。

小渕氏の場合は、女性でありながら若くして閣僚となったことが誰かの敵意を引き起こしたと思われます。今週発行のアエラ 2014年11月3日号では、小渕優子氏の辞任について特集されていました。その中である男性公務員は、「『なんかやられそうだなあ』と思っていたんですよ。若い女性が大臣になるとねぇ。出る杭は打たれるっていうか」とコメントしています。また、別の会社員の女性も「女性閣僚が狙われた感は否めない。同じようなことはほかの議員もやっているだろうに」と語っています。小渕氏が若い女性でありながら大臣に登用されたがゆえに、今回、政治資金問題を指摘されたと、多くの人が感じているようです。

■キャリアを重ねるうちにマヒするルール順守感覚
社内規程を完璧に守っているかと問われて、胸を張って「はい」と答えられるビジネスパーソンはどのぐらいいるでしょうか?始業時間に2~3分、遅れるのが常態化していたり、交際費の精算で規定額をオーバーして参加人数で調整していたりなど、多かれ少なかれ、多くの人に後ろめたいところをお持ちではないでしょうか。

後ろめたさを感じているうちは、改める可能性もあります。怖いのは、ルール違反である自覚を失ってしまうことです。そして現実には昇格するほど自分の社内規程違反に無自覚になる傾向がみられます。

その理由は二つ考えられます。一つは、ルール順守の優先順位が自分の中で相対的に低下してしまうことです。ポジションが上がるほど、考えなければならない重要な事柄が増えますから、社内規程のような基本的なことは意識することがなくなってくるのです。

もう一つの理由は、ルール違反を注意してくれる人がいなくなることです。誰でも組織のヒエラルキーの中で、立場が上の人に物申すのは避けたいものです。そのうちに上に立つ当事者は規程違反への感覚がマヒしてしまい、結果的に違反していることすら忘れてしまうのです。そこが相手に付け入られやすい入る隙となります。。


■本来の「仕事」で成果をあげるためにも
社内規程違反であることに気づいていても、「本来の仕事で成果をあげていればよい。社内規程違反なんて細かいこと…」と考える人もいます。実際に今回の騒動で話題になった「スカーフか襟巻か」のような、何のためにあるのか不思議で些末な規定がないわけではありません。

しかしルールはルール。悪法も法なり。存在している以上、ルールを守ることが組織の規律を守ることになるのです。「些末だ、不必要だ」という議論はその後にすればよいのです。存在しているルールを無視してよい理由にはなりません。そして、あなたの足を引っ張りたいる相手からもっとも容易に目を付けられやすいのは、本来の仕事以外の社内規程違反なのです。

そもそも仕事の成果は、多くの場合にそれほど明確に優劣がはっきりするものではありません。解釈によって「成功」といえるのか判断が分かれます。個人の貢献度合いなんぞはそれこそ人によって解釈が分かれるのが常です。

一方で、社内規程のような明文化されているルールは、違反した状態も明らかにしやすいものです。だから社内規程違反が相手を陥れる材料として取り上げられやすいのです。

前述のアエラの特集では、攻撃される当事者として大手流通企業の女性課長が登場します。彼女は、露骨に自分に反発する男性部下がいる限り「絶対に失敗なんかできない」と語っています。男性部下は「自分の失敗を待っている」存在なのだそうです。文中には書かれてはいませんが、「失敗」の中にはきっと社内規程を逸脱することも含まれているでしょう。

社内規程はじめ、ルール順守は女性に限らず男性にとっても重要な話です。しかし、「女性活躍推進」と叫ばれる今、女性が目立つ存在になる反動として、これまで以上に女性の足をひっぱる輩も増えることが予想されます。本来のあなたの仕事のミッションを達成するためにも、社内規程という基本的なところでの失敗をしないよう、この機会に辞任した女性閣僚を他山の石として自らを戒めることをお勧めします。

≪参考記事≫
■小渕優子大臣の辞任が、日本経済と女性の社会進出に関係が無さ過ぎて頭痛が痛い。 (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://sharescafe.net/41459031-20141021.html
■小渕優子大臣の辞任に見る、数合わせの女性登用による弊害 -岡田ひろみ
http://sharescafe.net/41427656-20141019.html
■退職時に有給消化をする従業員は「身勝手」なのか? (榊 裕葵 社会保険労務士)
http://sharescafe.net/40070575-20140728.html
■糾弾するのはセクハラ議員個人なの?
http://office-carlino.com/wordpress/?p=425
■「半沢直樹」がキャリアカウンセリングに来たならば
http://office-carlino.com/wordpress/?p=23

朝生容子 キャリアコンサルタント、産業カウンセラー


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