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企業経営をしていて避けて通れないもの、そのひとつに企業会計があります。企業会計では、経営活動の成績表たる決算書を作成するため、あるいは、未来に向かって意思決定をしていくための情報を得るための様々な情報が数値として提供されます。そして、これらの情報を最終的に決算書という形で示すためのツール、それが簿記です。

■苦手意識をもたれがちな簿記・会計
その歴史は古く諸説ありますが、14世紀から15世紀にかけて、ヴェネツィア商人によって発明されたといわれている簿記(複式簿記)は、それを記した最古の文献とされる書籍が出たことをきっかけに、ヨーロッパ中に広がったとされています。ドイツ人の文豪ゲーテは、その著作の中で、「複式簿記は人類のもっとも偉大な発明のひとつである」と述べており、賞賛しているほど、その内容は美しく、完成されたものだといってもよいでしょう。

それまでの単式簿記ではお金の入出金しか記載していなかったため(お小遣い帳と一緒)、会社の財産の状況がわからなかったのですが、複式簿記によって、それがわかるようになったからです。その発明から600年以上が経過し、世界中のありとあらゆるものが進化しましたが、複式簿記の基本的な仕組みは変わっていません。

以来、複式簿記は、経営にはなくてはならないものとして受け継がれてきています。しかし、その一方で苦手意識を持ってしまう人が多いのも事実です。それは、簿記の学習をする際、会計の専門用語の羅列と計算を覚える、というところから入ってしまうことが多いからです。

こういう勉強の仕方だと、算数や数学はちょっと苦手、という意識を持つ人たちは、会計や簿記というものに、「数字と専門用語の羅列だし、計算もあるし、何となく難しそう」という誤ったイメージをもってしまいます。私もそうでした。実際には四則計算しか使わないのに、です。

たとえば、実際の現金が帳簿より100万円少なかったとき、その理由を調べる必要があります。会社では、色々な入出金が多数発生しますし、銀行から借り入れも行います。お客さんに売上を立てても、入金は少し先のこともあるでしょう。預金通帳だけとにらめっこしていてもその理由はわかりませんが、簿記・会計の知識があれば、その理由がわかり、対策を打つことができます。

■簿記・会計を知らずに経営を行うのは、計器を見ずに飛行機を操縦することと同じ
会社の一年の成績表である決算書は、飛行機の中で各種メーターを擁するコックピットのようなもの。企業経営における方向性(組織の方向性)、高度の上がり下がり(実績値の上下動)、飛行距離(継続年数)がすべて現れるものなのです。企業経営では決算書を作成することは必須です。決算書は会計の目標のひとつであり、その決算書を作るためのツールが簿記であるにも関わらず、それらを知らずに経営をするのは、各種メーターの単位や見方、その意味を知らずに飛行機を操縦しているのと同じ。その操縦を間違える可能性が大いにあり、とても安全な飛行はできません。

決算書作成、税の申告自体は専門家に任せるにしても、まずは経営者自身が自分の会社の現状を示す結果としての決算書の数値の出し方を知り、その数値がなぜその場所に表示されるのか、といった過程を知ることは絶対に必要です。簿記・会計の知識を得ることで、経理担当者や専門家の人たちに正しく質問をし、経営者が経営の舵を握っておくためにも役立ちます。ビジネスを表現する標準言語が簿記・会計であり、最初に勉強しておけば、一生使える武器になるのです。

■不確実な未来への意思決定のためには確かなロジックに基づいた仮説を
経営は大小とりまぜた様々なことを意思決定していくことにほかなりません。そしてそのためには、勘や経験に頼るのではなく、ここまでの数値を分析して意思決定していくことが重要になります。病院で、血液検査をして、その結果によって今後の治療方針を決めるように、血液などの各種検査=決算書の分析を実施し、治療方針を決める=未来へ向けて経営の意思決定をしていく、というステップを踏んで意思決定していくのです。決定する内容が未来のことであり、不確定なものである以上、こうしたステップを踏んで後から振り返るというPDCA(Plan-Do-Check-Action)を回していくしかありません。

たとえば、「売上が急激に増えると倒産が増えるのはなぜなのか?資金回収が企業にとって重要な業務なのはなぜか?在庫が増えると、利益が大きくなることがあるのはなぜ?」といった問いがあります。こうした問いには、会計や簿記の知識(損益計算書のみならず、貸借対照表やキャッシュフロー計算書まで含め)があってはじめて回答することができるものです。

でも、難しい知識は必要ありません。簿記は、企業活動のすべての取引を、費用・収益の発生、および資産・負債・純資産の増減で示すもので、とてもシンプル。ひとつひとつ取引の会計用語への変換(これを仕訳といいます)を覚えなくては、と思うと壁が高くなりますが、決算書の全体構造を押さえ、「なぜそのような仕訳になるのか」という理由を知れば、理解が早く進みます。そのためには、私たちが毎日携わる企業活動の循環、それに合わせて会計の世界の決算書の構造があることを理解した上でその決算書を作る細かなルールである簿記を知っておくことが必要です。

■まとめ
まずは簿記・会計の細部の知識にこだわる前に、企業活動全体と決算書構造の関係性(最初は貸借対照表と損益計算書のみでOKです)をざっくりと数時間の講義で理解し、基本的なルールを押さえれば、あとは繰り返して慣れることで、効率的に勉強ができます。特に数字に苦手意識を持つ女性経営者の方も多いのですが、経営のためには必須ですし、そもそも四則計算の範囲内ですから、まったく難しくありません。ぜひ自分の味方につけて、戦略的な経営をしていきましょう。

《参考記事》
■仕事セーブ要因のある女性こそ、経営者という選択肢も検討を (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39955025-20140721.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■「ママたちのプチ起業」論争が炎上中。その理由は? (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/41811124-20141109.html
■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38119326-20140407.html
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html


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