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12月2日の日経新聞エコノ探偵団に、「残業なぜ減らない」という記事が掲載されています。現在、残業はなかなか減っていないようですが、今後は確実に減っていくと思います。それは、自分の人生の「時間」を仕事以外のところに割かなくてはならない人たちが圧倒的に増えてくるからです。

■24時間は働けない
戦後およそ50年続いた日本の典型的な働き方、すなわち、「男性は家の外で長時間労働を担当、女性は主に家のこと、子どものことを一手に引き受ける」という体制は今後長続きしないと考えられます。

その要因として、高齢化と未婚率の上昇により、男女問わず介護を抱える人が増えることが挙げられます。今年の日経ビジネス9月22日号で「隠れ介護1300万人 エース社員が突然いなくなる」という特集が組まれたことを記憶されている方もいるのではないでしょうか。

介護、看護、あるいは育児も、すべて公的サービスに任せることはできません。その結果「何の制約条件もない状態で働く」人が圧倒的に減り、なんらかの制約条件を持ちながら働く人が職場でどんどん増えるのです。たとえば以下のような理由があります。
(1)男性の未婚率上昇による「妻に介護を任せられない」男性の増加
30~34歳男性の未婚率は47.3%(2010年総務省統計局「国政調査報告」)まで高まっていますし、生涯未婚率も18.9%(2010年調査時)に達しています。つまり、妻に介護を任せられない夫が増えてきています。
(2)晩婚化による介護・育児を同時に抱える家庭の増加
晩婚化に伴う高齢出産の増加により、介護と育児を同時に抱える家庭が増加してきます。
(3)医療の進歩による、治療と仕事の両立を目指す人たちの増加
過去であれば長期入院や治療で退職を余儀なくされていた人が、医療の進歩により、仕事を継続しながら治療を進めることができるようになる、という側面もあります。

■働き方の問題は福利厚生施策ではなく、経営戦略そのもの
今後は、こうした制約条件をもった人たちが各個人の置かれた状況に応じ労働を企業に供給し、それにより企業が生産性を高めるような工夫が企業の側に必要になります。そのためには、人に仕事をつけるのではなく、仕事に人をつけなくてはなりません。場合によっては、仕事をシェアするということをしていく必要が出てくるでしょう。週3日働きたい人と週2日働きたい人でひとつの仕事を分担できるのであれば、仕事を明確に文書化し、その分担方法を決め、シェアすることで成り立たせることができます。

私たちが直面しているのは、会社の福利厚生の問題ではありません。今までとは異なるリソースで今まで以上の成果を上げることができるか、という企業経営の問題です。細切れ時間しか働けない人が大部分を占める人材リソースを使って、これまで以上にどんなふうに生産性をあげていくのかというゲームに日本は課題先進国として挑まないといけないのです。

職場で管理職を担っている男性に伺いたいと思います。仮に、自分が今日、今抱えている仕事を5時までに絶対終えて、介護施設から親が帰る時間までに家に到着しなくてはならない、そう追い込まれていたら、どうしますか?効率を上げたり(そもそもムダな仕事はないですか?)、仕事の優先順位を見直したりすると思います。それは本当に自分がやらなくてはならない仕事なのか?組織で仕事をしているなら、分担ができるのでは?などなど、いろいろ策を考えるのではないでしょうか。これが、自分を含めた職場の大半の人に当てはまる時期が近づいているのです。

ちょっと考えて頂ければ、介護休暇やフレックス制度の導入といった人事制度だけでは対応しきれないのはすぐわかると思います。今、求められているのは、仕事のやり方の変革なのです。こうしたことを当たり前のように、自分も含めたすべてのスタッフの仕事について行う、それも、上司から一方的に言うのではなく、スタッフ全員で話し合って決めていく、こういったことが求められていると思います。

組織は人なり、です。現在多くの組織の中で、管理職の約9割近くを占めている男性が、こうしたことを自分事として考えない限り、日本企業がこの新たなゲームで負けることを意味します。長時間労働ができない人たちの力をどのように引き出すか、ライフスタイルに合わせた働き方を「お互い様」と認め合い、どのように仕事を評価していくか。今、「出産・育児に直面する女性が働きやすい働き方」と言われる働き方は、これからの日本が生き残っていくためにとらざるを得ない働き方なのです。

私たちが抱えているこの課題からはもう逃れられません。現状から目をそらさず、今仕事現場でできることをどんどん考えて行動する必要があると思います。もう先送りすることができない、今そこにある危機なのですから。


《参考記事》
■会計を知らずに経営をするべからず(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42067634-20141124.html
■仕事セーブ要因のある女性こそ、経営者という選択肢も検討を (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39955025-20140721.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■「ママたちのプチ起業」論争が炎上中。その理由は? (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/41811124-20141109.html
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html

小紫恵美子 OfficeCOM代表 中小企業診断士


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