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年が明けたらそろそろ確定申告。「今年は病院にたくさん通ったから確定申告が必要かな。」と何かと来年やることが気になる時期がやってきました。

12月初旬には確定申告の前段階として、国税庁の質疑応答事例に、妊娠初期の妊婦の血液検査から胎児の染色体異常を検査する出生前遺伝的検査の費用は確定申告の医療費の対象にならないことが公表されました。

■進む診断技術と新型出生前診断の導入
「どうか健康な子供が生まれて来ますように。」赤ちゃんを授かった妊婦さんが何より一番望むことです。その手助けとなるのが出生前診断です。出生前の検査はいろいろありますが、画期的な方法として日本に2013年4月に導入された妊婦の血液を20ccほど採るだけで赤ちゃんの異常(ダウン症)がわかるという「新型出生前診断」があります。

この検査のメリットは、妊婦さんや赤ちゃんの負担が少なく、従来の採血方法である母体血清マーカー検査に比べ、検査精度が高いとされています。検査費用はおよそ20万円。決して安いものではありません。確定申告でこの医療費の一部でもお金が取り戻せたら。と考える人も多いはずです。

■確定申告で対象となる医療費とは
「確定申告は2月15日から3月15日の間に提出」が一般的ですが、お金が戻ってくる人であれば、年明け早々から確定申告は出来ます。早めに提出すれば、お金も早く戻ってきます。

では、この時に医療費として認められるものとはどのようなものなのでしょうか。

医療費の対象になるのは、基本として「病気を治療するものであること。」病院で診察を受けた診察費やお薬代が該当します。近所のドラックストアで買った風邪薬も飲んでよくなるためのものですから「治療」に該当します。そのため、病気にならないための予防、例えばインフルエンザの予防接種のための費用は医療費として認められません。

人間ドックなどの定期検査も、病気の治療ではないため、医療費の対象にはなりません。ただし例外として、人間ドックに行って異常が見つかった時だけ、その後の治療とともに人間ドックの費用も医療費の中に含めることができます。これは人間ドックで病気が発見された時、ドック自体が治療の前の診察と同じように考えることができるから、という理由によるものです。

現時点でのこの新型出生前診断の検査は、お腹の中の赤ちゃんの染色体の数が異常かどうかを調べるものであって、診断の一種となります。この検査を行って仮に異常が発見されたとしても、治療につながらないとされています。従って、新型出生前診断は人間ドックのように異常が見つかった時の事前の診察と同じ扱いにはならないため、医療費控除の対象外になるということです。

■進む医療、広がる医療費控除
もともと確定申告の時に医療費を認めて収入から差し引くことができる制度は、入院や手術といった、多額の医療費を支払った時に、衣・食・住などの生活費と同じように、最低限度の生活をするために必要な費用だと考えられて創設されたものです。この医療費とは、一般に風邪を引いて病院にかかったといったものではなく、入院や手術など、その年に払った異常に多くかかった支出を考えられていました。

しかし、時代が流れて、医療費が高額になって、家族で1年間かかった医療費を合計すると10万円超えるということも珍しくなくなり、確定申告をして税金を戻してもらうという行為は一般的なものとなりました。平成12年に介護保険が導入されると、「病気を直接治療する」ものでない、介護サービスに対する費用が医療費の対象となりました。

そのほかにも様々な医療が開発され、治療や検査が一般的になると、国税庁でその治療行為などが医療費に該当するか否かを具体的に公表するようになりました。出生前診断もこのひとつで、具体的な事案として公表されたものです。控除対象となる医療費はこうして社会保険制度の充実や医療技術の進歩に併せて限定的に対応してきたのです。

「これはダメ。」「これは大丈夫。」このような継ぎ足しの補足で医療費になるかを間に合わせてきた医療費控除だけに、医療費に該当するか結構悩んでしまうようなものも多くみられるようになりました。実際、確定申告の時期に電話相談センターで相談員を担当していると、医療費の相談をしてくる人が結構います。それもそのはず、医療費になるかならないかの判断だけで1冊の本になってしまうほどなのです。そのため、間違った判断で医療費に含めたり、逆に医療費は確定申告の対象でないと勘違いしてやめてしまったりする人がいます。

■申告は自分で書いてとはいうものの・・・
確定申告の時の医療費で納めた税金が戻ってくるという行為は、サラリーマンなどの申告に縁のない人にも広く一般の人に関わる問題です。また少子高齢化の中で、治療でないものまで医療費として拡大する、治療でなかったものが医療技術の進歩で医療費になるといったケースがますます増えていくことになるでしょう。

「申告は自分でお早目に書いて提出を」年明けにはこのような横断幕を税務署や電車、路線バスなどでよく目にする光景になりました。この文言の通り、確定申告が自分で簡単にできるのであれば、税務署にあふれんばかりの行列ができることはないでしょう。確定申告は年に1回。その度に法律は変わります。その難しさから「申告書の書き方を見てもやっぱりわからない。」といって毎年税務署に赴いて税務署の職員に確定申告をやってもらうという人が減らないのです。

先進医療。妊娠や介護。法律で医療費を考えた当初の想定をはるかに超えたものになってしまいる今、再度時代に合ったものに分別する必要があるように思われます。介護は介護控除といったもので新しく分類するなど、シンプルで解かりやすいものに整備する必要があるではないでしょうか。

【参考記事】
■消費税増税で支給された臨時給付金の実情
http://sharescafe.net/41787425-20141108.html
■政治家任せはもうやめよう!-Where does my money go?(税金はどこへ行った?)に期待すること。
http://sharescafe.net/41465708-20141021.html
■消費税 軽減税率の問題点
http://sharescafe.net/40635462-20140902.html
■今の税制がサラリーマン根性の要因だ カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/42132544-20141203.html
■苦手意識がまだまだ強い英語 カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/42531920-20141225.html

浅野千晴 税理士

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