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女子高生が社会問題について議論し、解決のためのマニフェストを作成するというイベント「第三回 女子高校生未来会議」が12月22日(火)参議院会館講堂にて開催された。女子高生自身が運営するこの会議イベントに、私も有識者のひとりとして参加させていただいた。本稿では、その一日の模様をお伝えしたい。

■性教育、グローバル化、DVなど幅広い討議テーマ
この会議はまず、運営側が事前に10個の討議テーマを発表するところから始まる。第三回目の開催となったこの日は、次の10議案が問題提起された。

●性教育
●格差問題
●女性と留学
●女性と日本のグローバル化
●女性の雇用と就職
●共学・別学から見た教育のあり方
●女性と防犯
●女性と政治
●JKとJKビジネス
●家庭問題 女性に対するDV

この会議は、女子高校生ならだれでも応募して参加できる。参加希望者は上記の議題のなかから関心のある案件をチョイスして参加表明する。各議題にはその分野で活躍する有識者も「ロールモデル」として参加。時おり知識の補足やアドバイスを行う。

テーマごとにわかれたグループで、一人がファシリテータをつとめる。ファシリテータは議論を円滑に進めるだけでなく、問題解決のアイデアを「マニフェスト」にまとめるところまで議事を引っ張る。

その後、提出マニフェストを各グループがプレゼン。際立ったマニフェストには協賛企業からの「賞」が授与される。協賛企業はファストリテイリングやドトールコーヒーなどの大手企業のみならず、若者育成や女子高生マーケットに関心の高いさまざまな規模の企業が名を連ねる。これら企業の協賛を取り付けたのも、運営に携わる女子高生たち自身だ。

■女子高生の武器「おしゃべりパワー」
実際のディスカッションの模様を、私が参加した「女性と留学」のグループからお伝えしよう。

ちなみに、参加する女子高生はみな初対面。学校も、育った背景も違う。いろんな国籍の人が集まる「留学」の教室風景と似ているな、とまず思った。留学に携わる者として、このように多様性を持ったグループに興味を惹かれないわけがない。

自己紹介を終えると、改めてファシリテータから問題提起とマニフェスト策定への流れが説明された。このグループでは、女子高生の立場から留学人口倍増施策を考えようと言う。その立案の参考として、文科省が官民協働で推進する留学推進プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」の概要はじめ、2020年までに日本からの海外留学生を倍増させようという国の意向と、男性とくらべて女性の留学が圧倒的に多い現状が説明された。

かくしてディスカッションが始まった。それぞれ意見は持っているようなのだが、いかんせん最初はなんとなく口が重い。その時間帯、私からは留学を希望する女性の調査データを示したり、男性と女性の留学傾向の違いなどをお話しした。

話すきっかけさえあれば、おしゃべりが止まらなくなるのが女子高生という生き物である。話すタネを見つけた彼女たちは、もう止まらなくなった。それぞれが経験をシェアしたり、外国人の友達の様子を紹介したり、弾丸のように意見が飛び交い始めた。

■組み立て、役割分担、そして魅せるワザ
ある程度、意見がテーブルに出そろった時点で、マニフェスト策定のための具体案をまとめあげなければならない。先ほどまで思いつくまま談義に興じていた彼女たちも、ファシリテータを中心にまなざしが真剣モードに入る。

内閣総理大臣夫人の安倍昭恵さんも来場し、各テーブルを視察しながら意見を交わす。にわかに「おしゃべりタイム」から「政策立案」という意識に切り替わる。

ここからはもう、オトナの出る幕ではない。彼女たちは、小・中・高、段階的にバージョンアップしていく国際交流の教育事業をまとめあげた。名付けて『IN and OUT キャラバン by JK ~ 次世代 × 次世代 ~』。

この教育事業の根幹にあるのは、留学に行きたいけれど行動に移せない人や、ほとんど国際交流に関わったことがなく関心の薄い人に、自然に異文化に触れてもらうきっかけを作ることだ。同時に「留学」という言葉の持つハードルの高さを緩和し、世界で学べる多様な方法を自然に情報提供していこうという意図もある。

彼女たちは、日本から海外への留学(=アウトバウンド)を増やすには、外国から日本に来る人たち(=インバウンド)と国内での交流機会を持つことが一番魅力的だと考えた。これが、政策名『IN and OUT~』の由来となった。ちなみに『IN and OUT~』のタイトルコピーを提案した彼女は、アメリカ合衆国のハンバーガーチェーン店“In-N-Out Burger”から発想したのだそうだ。なんとも柔軟な思考回路である。

具体的な事業内容については長くなるので割愛するが、女子高生たち自身がナビゲートし「楽しい!」と思えることをどんどんアイデアにしていった。見ていると、複数の人間が集うテーブルで、自然にそれぞれの役割を果たしている。散らばっている情報を整頓していくことが得意な学生、画期的なアイデアを出すのが得意な学生、プレゼン能力の高い学生、さりげなく違う視点の意見を投げ込むのが得意な学生。その見事な調和が功を奏したのか、『女性と留学』グループのマニフェスト『IN and OUT キャラバン by JK ~ 次世代 × 次世代 ~』はKOKUYO賞を受賞することができた。

他のグループのマニフェストも、魅力的なものが並んだ。個人的に印象に残ったのは「女性と政治」グループが立案した「HEROINE(ヒロイン)」。某人気テレビドラマになぞらえた女子高生主演ドラマで、政治に関心のなかった女子高生が総理大臣になって日本をガンガン変えていくらしい。

■女子高生からオトナが学ぶこと
この会議に参加する女子高生は、間違いなく社会参加意識の高い学生ばかりだろう。ランチタイムに一人の女子高生から「高校生のころは、やっぱり将来について悩んでいましたか?」と聞かれ、ふと戸惑った。戸惑った原因は彼女が「やっぱり」という言葉を使ったからだ。彼女はそこまで深く考えてなかったかもしれないが、私には「女子高生は誰しも悩むものでは?」というニュアンスに聞こえたのだ。

しかし、自分は何にも悩んでなかった。がんばって行きたい大学に入れれば自然に楽しい毎日が送れると思っていたし、将来は無限の可能性が広がっていると信じていた。どんな生き方を選んだらいいか迷うこと自体が楽しくて仕方がなかった。その感想を、後日アラフォー同世代の友人女性たちにもぶつけたら、彼女たちも同様の感覚だった。

将来を真剣に悩む今の女子高生たちが、恵まれているのかつらい時代にあるのか、私にはわからない。ただ、このようなイベントを協力して作り上げる手腕を持つ女子高生たちなら、変化激しい景気や世相をもうまく利用してたくましく生きていくことを確信した。オトナの階段をのぼるにつれ、変に達観しないことを望む。そして、我々オトナは、彼女たちに未来が明るいことを示していくべきだ。

もうひとつ見習うべきは、彼女たちのディスカッション能力の高さだ。企業で行われる会議の一部には、議論の体をなしていない場合も見受けられる。リーダーや進行役を決められずヘンに「みんな平等」感が漂う会議や、一部の人間だけが発言を許されているムードの会議、もとより発言する気がなく参加することに意義があるだけの会議、全員一致しないと次へ進まない平和主義の会議など、いまどきまだ存在するのかと耳を疑うような会議はオトナ社会にいくらでもある。

「私たちの世代はディスカッションのやり方を学校で教わらなかった」などと言い訳するのはいい加減やめにしよう。女子高生たちだって、だれにも教わってはいない。彼女たちを見ていたら、人間は本能的に人と議論できる性質を持っているのかもしれないと感じた。来週の会議を少し変えてみるのも悪くなさそうだ。


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留学ジャーナリスト 若松千枝加


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