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最近アベノミクス効果による円安・株高に後押しされ、投資熱が高まってきています。その投資を巡る詐欺被害にあう高齢者が、平成26年版の内閣府の「高齢社会白書」から見てわかるように多くなっています。「未公開株があるので買わないか」と業者からの電話で株を買ったが、実際には上場予定のない会社だった。というように、全国消費相談協会には様々な詐欺の相談があり、「貯蓄から投資へ」と政府が個人の資産をリスクのある資産に向けるよう推奨している中、基礎的な投資の知識のない高齢者が狙われ、高額な被害が後を絶ちません。

■ますます増加する高齢者の詐欺被害
「高齢者はお金を持っている」「高齢者優遇社会」「年金・医療費の削減」。このところ高齢者にとって肩身が狭くなるような法律が次々と改正されるようになってきました。

「お年寄りは収入もない弱い立場でサポートするもの。」そう考えられていた時代はどこへ行ってしまったのでしょう。しかも高齢者を狙った詐欺は後を絶ちません。これから団塊の世代が多くの退職金を抱えて会社を退職すると、ますますその被害も大きくなると予想されるほどです。

■高齢者はお金持ち?
実際の話、高齢者は本当にお金を持っているのでしょうか?持っていない人もそれは多くいますが、世代間の資産額の比較をすると、答えはやはりイエスになります。現代では65歳以上の高齢者が日本の資産の6割を保有しているとのことです。詐欺集団はちゃっかりその資産に目を付けていますし、詐欺の実際の被害例をみると1件当たり数千万というものも。詐欺は酷いけど、高齢者でお金持ってる人も結構多いんだなとつくづく感じます。

ところでこの高齢者の資産に目を付けているのは詐欺集団だけではありません。国もちゃんとこの資産に目をつけて、合法的に動かそうとしています。というのは、こういった高齢者が持っている預貯金はあまり使うことのない「眠った資産」だと考えられているからです。高齢者は亡くなると相続税がかかって、その時に若い世代に財産が移転しますが、実は相続する側(財産をもらう子供)も60代以上というケースも多く、高齢者が比較的若い高齢者に財産を渡しているだけということもあるのです。なんと日本は相続にも高齢化が進んでいる超高齢化社会なのです。

■お金は若い世代に移転できるか?
高齢者よりも比較的消費ウェイトの高い若い世代に資産を贈与することでお金を使ってもらおう。国は動くことのない金融資産を「贈与」という形で若い世代に移転させ、孫の世代がその資金を使うことに期待しています。若い世代平成23年から始まった、孫に教育資金1500万円を税金のかからない非課税枠で一括して贈与できるという法律も、平成27年までの期限を2~3年延長する方向になりました。さらに平成27年の税制改正で結婚や出産・育児費用を一括して贈与する場合の非課税枠も創設し、若い世代の消費を後押ししていく方針です。

そもそもおじいちゃんおばあちゃんが子供や孫に生活費や教育資金、下宿代などを必要な都度、資金を援助するという行為は昔からよくあることです。そういった、その都度あげるという行為には贈与税はかかりません。贈与税は、年間110万円を超える財産をもらった時にかかる税金です。通常なら仮に1000万円もらうと、もらった人は、231万円税金を払わなくてはならないのですが、この法律はそういった一括して多額の贈与をした時にも税金がかからないようにしてしまおうとするものです。

本来、多額の贈与をするというのはお金持ちであって、このような法律ができても、この法律を使って敢えて贈与しようとするはごく少数のお金持ちになると思います。ほとんどの高齢者は必要な金額だけを援助するという従来の方法でお金をあげる人が多いでしょう。お金をあげたくても年金は減るし、医療費の負担は増える、自分はいつまで生きるかわからないし、先行き不安な世の中で、あげるほど余っていないと考える人が大半であるからです。

また贈与が出来るような一部の金持ちの節税の手伝いをしているのでは?との考えもあります。

「金は天下の回りもの」というように、金のある者の預貯金を出してもらい、消費を多くする世代が使って景気を回してもらうということも一つの手段です。「税金がかからないのであれば、かわいい孫にお金をあげよう。」お金を動かすきっかけにもなります。消費税の税率が上がり、ますます消費が縮小している今、経済を活性化することも大切なのではないでしょうか?

また110万円まで毎年贈与しても税金はかからないから、この制度を使わなくても・・と思われがちですが、早くもらえるのであれば、もらってしまったほうが得であると思います。人の命はいつまで続くのかわからないものです。お金をあげた次の年に亡くなってしまうこともあります。毎年年間110万円という連年贈与では、亡くなる直前の3年以内にあげた財産が(贈与がなかったものとして)相続財産に含まれてしまうというデメリットがあります。もちろん、この法律を使えば、贈与は有効で、相続の財産に戻されるということはありません。

■贈与税の申告は所得税の確定申告と同じ3月15日です
贈与の申告は、もらった人がもらった年の翌年の3月15日まで(今年の確定申告は3月16日までの期限)に申告書を提出しなければなりません。教育資金の贈与は金融機関に非課税の申告書が受理された時点で有効となりますが、住宅資金を援助してもらった人は、通常贈与税がかかるとは別の特別枠を使うことになるので、税金を納めなくても忘れずに申告するようにしましょう。なお、この特別枠(特例)は申告期限までに贈与税の申告をすることが要件となっていますので注意が必要でしょう。

【参考記事】
■進む医療、広がる医療費控除~確定申告医療費の行方
http://sharescafe.net/42332324-20141212.html
■消費税増税で支給された臨時給付金の実情
http://sharescafe.net/41787425-20141108.html
■政治家任せはもうやめよう!ーウェブサイトWhere does my money go?(税金はどこへ行った?)に期待すること。
http://sharescafe.net/41465708-20141021.html
■消費税 軽減税率の問題点
http://sharescafe.net/40635462-20140902.html
■相続業務のキーワード「終活」にどう関わるか? カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/41636877-20141104.html

浅野千晴 税理士

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