外人男性悩むs
日経新聞等で既に報じられているように、1月15日のスイスフランショックに伴い発生した国内FX取引業者の「ロスカット未収金」が33.8億円だったと、業界団体の金融先物取引業協会が公表しています。(1/28付日経新聞では33億円とされています。)

内訳は、個人1,137人からの未収金が19.5億円、92法人からの未収金が14.4億円となっています。個人で一人あたり170万円ほどというこの数字を見て、「スイスフランショックの影響って、日本ではそうでもなかったんだな」と思う方も少なくないかもしれません。

例えば、日経新聞(1/28付)は、海外では破綻に至るFX業者も出ているとし、顧客の損失が約260億円に達したとされる米大手FXCMの例を引き合いに、国内での影響は「相対的に軽微」であったとまとめています。

たしかに、日本ではスイスフラン建ての取引は他のメジャー通貨ペアの取引に比べると大きくはなかったでしょう。では、日本のFX投資家への影響はやはり本当に軽微だったのでしょうか?

実際のところ、顧客の損失がどのくらいだったのかはよく分かりません。ですが、いくつかの仮定をおいて、その規模を何となく大雑把に想像するのは可能です。

■ロスカット未収金とは、業者が損失するかもしれない金額
ほぼ間違いないのは、顧客の損失は、協会が公表したロスカット未収金の34億円よりはだいぶ多かったのではないかということです。

金融先物取引業協会の定義では、「ロスカット未収金」は、「顧客が会員に支払わなければならない金銭のうち、顧客の取引がロスカット取引により決済されたときの損失が、当該顧客が預託する証拠金額を上回ることにより発生するもの」とされています。

分かりやすく言えば、33.8億円と報告されたのは顧客の損失の全部ではなく、顧客の損失のうち業者が公表の段階で顧客からとりっぱぐれている金額ということです。

■顧客の損失はどのくらいと見るべきか?
証拠金と取引額のレバレッジを20倍(証拠金が5%)、ロスカットが約定した水準を-20%とすると、ロスカット未収金が発生している顧客の損失は、33.8億円×4/3=約45億円 ということになります。但し、レバレッジとロスカットの水準によって、実際の金額は変動します。

これは「未収金が発生している顧客」に限定した、顧客の損失です。実際には、証拠金や含み益のあった取引の清算等によって、スイスフランショックによる損失が全額カバーされた顧客も少なくはないはずです。

ここでは、未収金が発生していない顧客に係る損失も同程度あったと大雑把に考えてみましょう。これで、顧客の損失は45億円の二倍で90億円ということになります。

これで終わりではありません。

国内のFX投資家は、実は海外FX業者を使うこともあります。スイスフランは国内ではメジャーではありませんので、取引量の多い海外の業者を好んで使う投資家も少なくはなかったでしょう。国内業者で発生した損失に、何割か加味した水準で考えた方が良いかもしれません。

かなり大雑把な見立てですが、100億円から150億円くらいの損失が顧客レベルで発生していたと考えても、考えすぎではないような気がします。

■協会は顧客の損失も明らかにすべき
FXの業界団体である金融先物取引業協会が、会員企業のロスカット未収金を明らかにしていることは評価できますが、加えて顧客レベルの損失についてもきちんと開示すべきでした。

金融先物取引業協会は、バイナリーオプションというギャンブルに近い当てモノのような商品について各会員企業ごとの平均回収率や損を出した顧客の比率を月次で報告する等しているように、顧客の損失の程度と可能性について、情報を開示しようとする姿勢でいるように思っています。

もしそうであるのなら、FX投資家が今後の教訓にできるよう、こうした暴落・暴騰に係る顧客の損失の実態についても、詳らかに情報開示するのが筋ではないでしょうか。

今後の協会の取り組みに期待したいと思います。

以下の記事も参考にしてください。
■スイスフランショックを増幅させたリスク回避の仕組み。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/42992007-20150121.html
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/42781228-20150108.html
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/42894098-20150115.html
■一年で3回転職したアラフォー女子、年収倍増は幸運だけが理由じゃなかった。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/42650114-20141230.html
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/42555365-20141225.html

■まとめ
・国内FX業者が顧客から今のところとりっぱぐれているスイスショックに起因する未収金は、33.8億円です。
・スイスショックによる顧客の損失は、大雑把な見積もりから考えて、100~150億円程度あってもおかしくはありません。
・金融先物取引業協会には、暴落・暴騰時の顧客の損失の実態についても、きちんと公表していただきたいと思います。

本田康博 証券アナリスト・馬主・個人投資家

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