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昨日3月1日から、2016年卒業予定の学生の就職活動が本格的にスタートしました。昨年まで12月1日だったエントリー等の開始日が3か月後ろにずれたことで、就職活動期間そのものが短期間になっています。この結果苦しくなってきているのが、中小企業です。ただでさえ、優秀な学生が早々に知名度の高い大手企業に内定を決めてしまう中で、今までより一層短い時間で人材を確保しなくてはならないという状況になっています。こうした中で、中小企業はどのような対策を打っていけばよいのでしょうか。

■中小企業が選ばれない理由は「知名度」「安定性」「給与・待遇」
2015年1月の株式会社ディスコのキャリアリサーチによれば、2016年卒業生が就職先を選ぶ理由のトップ2は、「将来性」及び「給与・待遇がよい」というものになっています。一方、2014年10月の同調査には、「中小企業を受けた理由」と「受けていない理由」が出ています。受けている理由としては「やりたい仕事につける(38.5%)」、「企業として独自の強みがある(33.1%)」、受けていない理由としては「知名度が低い(35.3%)」、「安定性にかける(33.9%)」、同じ比率で「給与・待遇がよくない」との理由が続きます。

しかし、日本の企業はその数でいえば99.7%が中小企業であって、ここに勤める人たちが全員給与等で不満足という状況は考えられず、また、将来性についても、今は大企業だからといって保証されているわけでもありません。むしろ、日本の高度経済成長を支えてきた中小企業の中には、この環境変化が激しい時代に入ってさらに積極的な経営を展開し、世界シェアを奪う企業、あるいはグローバルトップ企業と言われる企業に成長し、今後が楽しみな企業も数多くあります。

まず「知名度」に関しては、上記のような事実をもっと中小企業の経営者側が学生にわかるように説明したり、アピールしたりする努力がまだまだ必要です。前出の調査でも、中小企業を受けた学生側の印象として、「中小企業こそ、社内の雰囲気を伝える機会を作ったり、ちょっと変わった選考をすべきと思った」、あるいは、「ホーム―ページはそれなりに充実させてほしい。説明会などがない分、情報を得る機会が少ないから」といった、「知らせる努力」を望む声が多く挙がっています。

■「安定性」に替えて「成長性」をその魅力に
学生側は、中小企業のことをもっと知りたがっています。本人が納得するため、ということがもちろん第一義ですが、場合によっては、親や周りの大人に、自分が選んだ企業がたとえ知名度が低くてもいかに魅力的な企業か説明できるようにすることが必要になります。

そのためには、経営者側が自らの企業の魅力を力強く伝えることができる、ということが肝要です。ディスコ社の上記調査でも、学生側の声として、「大企業と比べて福利厚生などで差が出る部分もあった。しかしそれよりも社長さんの熱意であったり、雰囲気のよさなど、大企業ではない良さも持っていると思った」というものがあります。

「安定性」の観点からすると、大企業にくらべれば中小企業は明らかに不利です。しかし、すでに環境変化が激しい現在、どんな大企業であったとしても、安定性が保証されている企業はほぼない、といってもよいのではないでしょうか。むしろ、安定して企業が存続していくためには、常に成長を追及する、新しいことに挑戦する企業である必要があります。

日本には、他社にはまねできない製品やサービスを絶えず研究、開発し、世界トップシェアをおさえている企業が数多くあります。たとえば、従業員規模が1000人ほどの会社ながら、歯科医の使う歯を削るドリルでトップシェアをもつN社は従来製品よりも30%の小型化に成功したことでシェアを獲得。顧客に感動を与える製品を生み出し続けています。

ほかにも、産業用センサを製造するM社は、精密位置決めスイッチで、脳神経外科手術分野の医療機器において世界シェア70%を占めます。同社の従業員規模は100名をわずかに上回る程度であり、1年目から新製品開発や海外市場開拓へ挑戦できる企業です。

ここで紹介したい世界シェアをもつ企業はほかにもたくさんあるのですが、こうした「魅力」を常に追求し、「ウチの企業はいいぞ」と従業員が胸を張って言える企業づくりを経営者として目指したいものです。

■「給与・待遇」の低さは発想の転換をして学生にアピールできる
中小企業を選ばない理由の第二に挙げられていた「給与・待遇」。こちらについては、むしろ、学生に対して「お金と引き換えにためられるもの」をアピールするといいと思います。それは、「比較的早い段階から本格的に仕事にチャレンジできる」という「経験」です。

中小企業では基本的に人数が少ないため、大企業ほど仕事の細分化はありません。上記M社のように、1年目から新製品開発や海外市場開拓などに従事できるケースも多々あります。終身雇用がかろうじて維持されていても年功序列制度が崩壊してきている現在、大企業に入って若年時の低賃金に我慢しながら仕事経験もゆっくりと積み重ねたものの、勤続年数がのびても賃金が伸びないという状況が増えてくることが考えられます。それよりも、早目に中小企業で仕事の全体像を把握し、難しいことにもチャレンジしながら仕事の経験を積むほうが、学生には魅力的に映るのではないでしょうか?

■まとめ
2016年卒業予定の学生はバブル崩壊後に産まれた世代です。産まれたときからすでにインターネットは整備され、情報は簡単に取れるのが当たり前の世代です。そんな彼らが、ネット上で企業の情報が詳しくとれないことにフラストレーションをためるのは想像に難くありません。学生の声にも合った通り、企業のサイトの魅せ方などに、工夫が必要でしょう。

知名度が中小企業への就職を決める決定要因になるのも見逃せません。そして、知名度を上げるためには、学生にアピールできる企業としての魅力が必要です。普段から経営者が「想い」をもって、他社との差別化を狙い、成長を目指して従業員を大事にしながら日々経営活動をしているかという普段の経営姿勢そのもの問われるのが採用活動といえます。

《参考記事》
■承継シリーズ 社長になる女性の最初の心得 (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/37029365-20140212.html
■事業承継をドロドロなものにしないために大事なこと(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/37576251-20140310.html
■仕事セーブ要因のある女性こそ、経営者という選択肢も検討を (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39955025-20140721.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html

小紫恵美子 OfficeCOM代表 中小企業診断士


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