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国では、少子高齢化による労働人口の減少が進む中で、「すべての女性が輝く社会」を実現するために施策を進めております。そんな中で、2013年9月に安倍晋三内閣総理大臣は「日本を米国のようにベンチャー精神あふれる『起業大国』にする」と発言しました。その影響があってか、近年、テレビや雑誌、WEBサイトなどで、女性起業家について取り上げられる機会が増えています。

それでは、実際の女性起業家の現状はどのように推移しているのでしょうか。メディアなどで取り上げられる機会が増えているだけに、数が増加しているように感じられますが、2014年版中小企業白書による統計を見ると、実は減少傾向にあることが分かります。

■そもそも、女性起業家が増えた方がいい理由とは?
女性起業家実態調査では、「新たな産業を創出し、経済に活力を取り戻していくためには、様々な観点から新規産業の創出を検討していく必要がある」と述べております。特に女性の活力に注目し、「女性ならではの感性や視点を活かした事業を開業することで、従来になかった新たな財やサービスを市場に提供できる可能性がある」と期待を寄せています。

自分も、就業を継続することを希望しながらも、結婚や出産、育児のために就業を断念していた女性が、柔軟な働き方として、起業という選択肢を増やすことができる可能性があるという点において、女性の起業を推進することに賛成します。育児か仕事のどちらかを選ばなければならないライフスタイルではなく、どちらも選べる新たな働き方を確立していくことが、結果的には後の世代に続く、すべての女性が輝く社会を実現できるのではないかと考えます。

■起業の現状と女性起業家の実情について
日本の起業活動は2010年版 情報通信白書によると、米国・フランス・韓国などの主な20か国で比較すると最下位にあることが分かります。また、同中小企業白書によると、起業を希望する人は、1997年以降、減少傾向にあり、2007年及び2012年に激減しています。一方、起業家数は大きく変化しておらず、1979 年(26.6万人)から 2012 年(22.3万人)にかけて緩やかな減少傾向にあります。

女性起業家の割合は、1979 年(39.8%)から 2012 年(30.3%)にかけて減少傾向にはあります。(ここでいう「起業家」とは、過去1年間に職を変えた又は新たに職についたもののうち、現在は自営業主(内職者を除く)となっているものをいいます。)さらに、女性は男性に比べると法人(21.4%)よりも個人事業主(78.6%)の割合の方が多い傾向にあります。

なお、日本政策金融公庫の2014年度新規開業実態調査では、融資をした企業を対象にした調査で、女性起業家の割合は約16.0%程度となっています。2000年代に入ってから女性の割合はやや高まり、約15~16%で推移しているとのことです。

これらの統計を見ると、最初に述べたとおり、女性起業家は増えるどころか、全体では減少傾向にあることが確認できます。

■日本の起業に対する社会的評価自体が低い
さらに、驚くことに、起業準備の初期段階において、配偶者から応援された割合は約2割弱、両親からは約1割と、低い数値であることが分かりました。また、起業家精神に関する調査によると、もし、自営業者と被雇用者を自由に選択できるとした場合に、自営業者を選択すると回答した者の割合は、アメリカが50.9%、日本は22.8%であり、他の欧米諸国に比べても、自営業を選好する割合が低いことも分りました。これらの原因の一つに、日本では起業が「ハイリスクハイリターン」という印象を持たれていることなどがあげられます。

これについて同中小企業白書では、「小さく事業を始めて、失敗しても損害を最小限にとどめるような「小さな起業」もあるということを、広く国民に伝えていくべきである」としています。日本を「起業大国」に近づけるためには、このような起業家に対する社会的評価を変えていく必要があると思われます。

■女性起業家が増えない原因は?
過去の職務経験や趣味を通して培った技能を活かして、家事や子育て、介護と両立しながら柔軟に働きたいと起業はしたものの、現実には、「起業しても忙しくなるばかりで収入につながらない」などの理由で、こっそり廃業しまう方も多いと聞きます。

そこで、1週間の労働時間について、開業前後の変化を平均値で見ると、男性には大きな変化は見られませんが、女性は4時間程度増加していることが分かりました。(女性起業家実態調査) また、女性が開業後に苦労したことTOP3は次のとおりでした。(新規開業実態調査(特別調査)女性起業家の開業)

1.経営の相談ができる相手がいないこと
2.業界に関する知識の不足
3.家事や育児、介護等との両立

つまり、「長時間労働になり、プライベートな時間がなくなる」、「経営・業界の知識が不足している」、「相談相手がいない」、「生活と仕事の両立ができない」などの課題を解決していく必要があります。国の施策により女性起業家が増えたとしても、事業を継続できなければ、開業率より廃業率の方が上回る状況となります。

これらの問題を軽減する一つの手段として、「小さな起業」が考えられます。

■小さく事業を始める、「小さな起業」とは?
中小企業白書では、小さな起業を「失敗しても損害を最小限にとどめるような」起業としていますが、女性にとって、損害とは何を指すのでしょうか。それは、費用だけではなく、時間や精神的なリスクも含まれると考えられます。

仮に、費用も時間も最小限にとどめながら、必要な収益をあげて事業を継続できるとしたらいかがでしょう?例えば、極端ですが、自宅や共同事務所で開業し、働く時間は細切れ時間の活用や、子どもが幼稚園や小学校に通っている10時頃~15時頃の時間帯となると、女性の起業へのハードルはかなり低くなるのではないでしょうか。

これは、幼稚園に通う子どもをもつ専業主婦の集まりに参加させていただいた際の、「週に1日~3日の間で、1日3時間程度働ける都合の良い職場や働き方なんてなかなか見つからないし、あっても激戦です。」という会話がヒントとなりました。もちろん、実現するには、様々な工夫も同時に必要になるでしょう。

■「小さな起業」を実現するための工夫と環境づくり
工夫には、同業者と業務提携することで、急な予定変更などのリスクに対応できるようにしておくことや、異業種の方と組むことで、一人ではできないような仕事をすることも可能になることがあげられます。働ける時間帯が限られている場合には、アルバイトやパートを雇入れて時間の調整をするという方法もあるでしょうし、比較的に活動時間の制限がない方や男性とパートナーを組むのもいいでしょう。

ただし、このようなことを実現するためには、交流の場が必要不可欠となります。同業者や異業種の方と一緒に仕事をするには信頼関係が大前提になるからです。できれば、交流の場だけではなく、単発のプロジェクトを一緒に達成する機会などがあれば、より関係も深まることでしょう。工夫の努力次第では、前述の開業後に苦労したこと1・2・3を補うことが可能になります。

特に、「自分のやりたいことを、どうしたら事業化できるか分からない」という女性が多いことが中小企業白書による統計でも見られるように、起業するために具体的に何をすればいいのか、女性は知識やノウハウが不足している傾向にあります。国と女性起業家、女性起業家同士、さらには男性も巻き込み、一緒に活動することで、不足している知識を補い、人脈を広げ、事業を継続していくために必要なヒントも仕入れることができるかもしれません。

例えば、交流会の開催にあたっても、一方的に国が交流の場を提供するということではなく、具体的な企画や運営は女性起業家に委託するなど、あくまでも、女性起業家が活躍できる機会を創出するような一部の支援にとどめることがあげられます。たんに、補助金や助成金を交付するよりも、国と女性起業家が一体となって一つの事業を進めることで、官民互いに新たな知識やノウハウを取り入れる機会にもなるでしょう。また、一つのプロジェクトを、企業と女性起業家が役割分担しながら一緒に行うという方法もあります。さらに、このような機会で信頼関係を築くことができれば、自然と仕事に繋がる可能性もあります。

事業の継続は、女性起業家が一人だけで行うものではなく、家族の協力はもちろん、制限要素を補う工夫と周囲の協力があって初めて実現するのではないでしょうか。

■女性起業家が起業を継続するために
「小さな起業」から始め、10年以上事業を継続し、成功しているロールモデルがどのくらいいるのでしょうか。メディア出演や講演などにご登壇されるような、事業を長期的に継続して、残ることができる女性起業家は、男性並みにバリバリに働く、いわゆるスーパーキャリアウーマンと言われる方ばかりです。しかし、現代の女性は、このような女性を尊敬はしても、自身がそうなりたいとは思わない人も多いでしょう。

少子化対策のために結婚・出産するよう推進しながら、それでも労働人口の減少を補うために働けというのでは、女性は追い込まれてしまいます。女性起業家が結婚・出産・育児などの各段階において、不足部分を補い合う協力体制を工夫できるように、幅広いアイディアで前述したような様々な機会を創出するような支援策が、事業を継続できる女性起業家の増加を加速させる一つの方法になるかもしれません。

これから日本が米国と並ぶ起業大国になるには、事業を継続できる「小さな起業」のロールモデルを増やしていくことが必要であると考えられます。

【参考記事】
■子育てしながら働き続けることを決めた女性に伝えたい、「大変な今」の過ごし方(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43392651-20150215.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■すき家「バイトの乱」から学ぶ「ノー残業制度」の問題点。 (本田康博 証券アナリスト・馬主)
http://sharescafe.net/43084842-20150127.html
■現在の「正社員制度」に阻まれる女性活躍推進(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42957651-20150119.html
■就職活動の解禁後倒しにとまどう大学生は、伝説のコンシェルジュ・阿部佳さんに学べ。 ~NHK プロフェッショナル・仕事の流儀より~ (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://sharescafe.net/43658288-20150305.html

漆原かなえ 特定社会保険労務士 かなえ社会保険労務士事務所代表

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