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先週、内閣官房がツイッターで「女性応援ブログ」と題して、キャラ弁づくりをしている女性の記事を掲載したところ、リツイートも多く、ネットでは批判的記事が広がりました。まだまだ過渡期の女性活躍推進。「伝統的な理想としてのお母さん像」と「今」の現実」とのギャップゆえにこうしたことが起こります。

■ニッポンのお母さんはやっぱりレベルが高すぎる
昨年書いたように、日本は「お母さん」像があまりに神聖なものにされすぎているきらいがあります。仕事に加え、育児介護家事、そして、「良妻賢母」であることをも求められたら、女性は参ってしまいます。24時間365日しかない中で、生産性をぎりぎりまで高めていますが、限界もあるのです。

子どもの数が減ってきたとなれば、やれ「産め、育てろ、産めるのは女性しかいない」。かたや労働人口が減ってくると、今度は「働きに出ろ、そして、輝きましょう」。男女ともに一日24時間しかないはずなのに、なぜか「女性が輝く」という言葉のもとで、「神聖化されたお母さん」だけが期待感をずっしりと背負わされています。そのうえ、朝は早くからお弁当を作るようにがんばりましょう、ごはんは手作りがいいわよ、やっぱり小さい時はそばにいてあげるのがいいわよね、母の味が一番、などなど・・・

・・・いったいどうしろと?(怒)

学生時代のことを思い起こせば、女子は概して真面目です。こつこつと、身の回りのことは言われなくてもやります(もちろん個人差はありますが)。周りから期待されればそれに応えようと一生懸命努力もします。でも、現代は共働き世帯が単身世帯を上回ります。朝早く起きて洗濯機を回しながらお弁当を作り、子ども(と夫)を起こし、朝食を準備しつつ、自分も身支度・・・朝はただでさえ目が回りそうなのです。多くのお母さんがこうした朝をすごして仕事に向かっています。

そうしたところへ、「やっぱり子どものために手間隙かけて、可愛らしいお弁当をつくってあげるお母さんが素晴らしいわね」という取り上げ方を政府がすれば、忙しいお母さんたちにさらにプレッシャーをかけることになるのも当然です。自分には関係ない、と放っておければよいのですが、「家庭では家事育児は女性が中心になって担うべき」という“すり込み”を受けてきた今の多くのお母さんたちは、どうしても気にしてしまうものです。それゆえ、もとの記事内容自体になんら問題はないのに、今回のような炎上劇を引き起こしてしまうのです。

ちなみに物事を決定する機関としての国会では、男性がその意思決定のほとんどを担っています。国会議員の女性議員の割合は衆議院で7.9%、参議院で18.2%です(平成24年12月現在)。男性目線での「理想の母親」「理想の妻」が語られても仕方ありません。

■男性も女性も、時間の遣い方を変えざるを得ない
仕事以外の家事や育児といった時間については、日本では今まで女性が中心に担ってきました。6歳未満児をもつ夫婦の夫の家事時間は、軒並み2時間半を超える先進諸国の中で、日本だけが1時間7分、育児時間に至っては39分という圧倒的な短さです。(内閣府『平成25年版 少子化社会対策白書』より)

しかし、今後はこのような偏りは物理的に不可能になっていきます。高齢化、未婚率の増加によって、男性女性問わず、親の介護が目の前の問題として起こってきます。今のように男性だけが長時間労働を強いられ、女性は働いていようがいまいが家事労働を一方的に担う、ということが難しくなるのです。

こうした時代だからこそ、男性vs女性ではなく、男女で協力して仕事も介護・育児・家事をしていくことが必要です。終身雇用と年功序列賃金の変化によって安定雇用や安定収入という仕組みが崩れつつあることで、「男性が外で稼ぎ、女性は家を守る」というスタイルが経済的な観点からも難しくなってくる今、「両輪」で稼いでリスクをヘッジ(どちらかが仕事をできない状況でも明日から収入0にはならない状態をつくる)しつつ、仕事以外のことも分担するスタイルが徐々に浸透してくるでしょう。いや、浸透しないと立ち行かなくなってくるのです。

■短時間勤務でも基幹業務を担うことはできる
すでに現場では、働き方も多様化してきています。今までの職場は男性を中心に考えられていたので、女性の割合が少しずつ増えてくるにつれて、時短などが「特別な制度」としてあとから追加されてきたレベルですが、着実に改善は図られています。

また、今は「短時間しか働けない」女性が働きやすいように、上手に活用している企業もたくさんあります。2015年5月2日の日経新聞の記事「パート 会社の基幹職で活躍 企画・人事・製造管理・・・」では、短時間であっても企画や人事といった基幹職で働く女性を紹介、出産前の実績を活かして時短で復帰している女性が多く取り上げられています。すでにヤクルトや公文教育研究会など、専業主婦から仕事に復帰したいという女性を幅広く募集している会社もあります。

ただし、制度や設備を整備しておしまい、ではなく、働く人の意識改革も必要です。ヤクルトレディでは、同社サイトによれば、急な発熱で休んだ時などは仲間とお互いに支え合ってチームワークで仕事をするとのこと。「お互い様」の精神が生きているのです。

■よいものは残し、「今」にあわなくなったものを変えよう 
今後、短時間しか働けない男性・女性のモチベーションをどのように引き上げて、働き続けてもらうか、すべての経営者が知恵をしぼることになるでしょう。報酬や地位、といった「今までの男性」が評価として受け入れやすい要素だけでは、今後働く制約を持つ男性・女性の満足度を上げることはできません。制度の柔軟性といったものも重要ですが、「ありがとう」といわれることの喜び、頼られている、という意識が、彼ら・彼女らのやる気を高めることもあります。

戦後の経済急成長時代に普及した「理想のお母さん像」が時代に合わなくなった以上、古くからの精神で今も私たちの肩の力を抜いてくれる「お互いさま」の精神を引き継ぎませんか?職場でも、個々人に合わせる形で働き方を検討し、報酬の決め方を決める。その上でお互いが気にかけあってチームとして成果を出す。今後はこうしたきめ細かい労働者への対応が必要になります。

小紫恵美子 OfficeCOM代表 中小企業診断士

《参考記事》
■「大丈夫」じゃないのはお母さんだけじゃない。 (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42520618-20141222.html
■日本は「良いお母さん」のレベルが高すぎる(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39261507-20140608.html
■「女性活躍推進」すら着手しない企業で成長はムリ。(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42290659-20141208.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html


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