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先月の話になりますが、5月21日に政府から司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案が発表されました。目標が変更となれば、2002年の「年間3000人以上」という目標から半減することになります。

司法サービスの充実という目的のもと、弁護士の人数増加を目指したものの、人数の増加に見合うほど仕事量が増えなかったということでしょうか。

弁護士以外の士業についても最近、悲観的なニュースが多いように感じます。2014年11月頃、話題になったオックスフォード大学の准教授が発表した論文では、今後10年~20年の内に消える職業、無くなる仕事として税理士や公認会計士の仕事が含まれています。10年後といわず現在でも、株式会社ビズグラウンドが運営する士業クラウドソーシングサービス「Bizer」のように月額2,980円で税理士や司法書士といった士業への相談を無制限で受けられるサービスが登場したり、株式会社freeが会社設立に必要な全ての書類を無料かつ5分で出力できるサービス「会社設立 freee(フリー)」をリリースするなど、士業の仕事の価格破壊が進んでいます。

■弁護士、公認会計士、税理士の出願者数の推移
一昔前であれば、弁護士、公認会計士、税理士といった士業は、年収においても、社会的地位においても憧れの職業といってよかったと思います。ところがこうしたニュースを頻繁に目にするようになると、社会的地位の低下が懸念されるとともに、合格しても本当に食べていけるのか疑問に思われる方もいるのではないでしょうか?このような現状に一番敏感なのは、士業を目指す受験生だと思われます。そこで各士業の出願者の推移をみてみることにしましょう。

まずは司法試験、公認会計士試験、税理士試験です。
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各試験の所轄省庁、もしくは団体のWebサイトの統計情報から最長10年分の出願者数を調べ、最も古い年度の出願者数を100として指数化しています。

まず司法試験ですが、平成18年の司法試験改正により、法科大学院の終了が受験条件となりました。ただし平成22年度までは制度移行期間のため旧試験も実施されているため、平成18年から22年までの数値は新旧両試験の出願者数を合算しています。法科大学入学による費用負担増、もしくは大学院の定員数の影響からか出願者数はこの10年で80%近く減少しています。

公認会計士試験は平成21年度より短答式試験は年2回開催になりました。そのため、平成21年は前年に比べ倍増したのですが、その後出願者数は減少傾向に転じ、平成26年は10年前の平成17年と比較して10%程度減少しています。

税理士試験は平成22年までの5年分の統計しかありませんでしたが、最近5年で10%強、出願者が減少しています。

■弁理士、司法書士、社労士、行政書士の推移
弁理士、司法書士、社労士、行政書士も独立・開業可能な資格として人気のある士業です。これらの出願状況もみてみることにしましょう。
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社会保険労務士試験は、平成22年度まで増加傾向でしたが、その後減少に転じ、平成26年では平成17年より7%ほど減少しています。弁理士試験、行政書士試験は社会保険労務士試験と比較して減少度合いが大きく、平成17年と比較して30~40%も出願者数が減少しています。司法書士試験は平成22年までの5年分の統計ですが、最近5年で20%強、出願者が減少しています。

■宅地建物取引士、中小企業診断士、FP技能士、技術士の推移
宅地建物取引士、中小企業診断士、FP技能士、技術士は、独立も可能ですが、企業に勤務する人がキャリアアップのために受験することも多い資格です。これらの出願者状況はどうなっているでしょうか?
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宅地建物取引士は、平成27年4月1日より宅地建物取引主任者から士業に格上げされました。格上げによる影響は今年の試験の統計を待つことになりますが、過去10年をみてみると出願者数は、ほぼ横ばいです。中小企業診断士は経営全般を学べる資格として、独立を前提としない人にも人気の資格です。こちらは平成26年と17年を比較すると、40%以上出願者数が増加しています。ファイナンシャルプランナーは個人のお金に関わるエキスパートですが、平成19年から9年間で出願者数が3倍以上増加となっています。一方で技術士は10年で半分以下に出願者数が落ち込んでいます。

■まとめ
こうしてみると独立が前提の士業は、概して出願者数を減らしていることが分かります。弁護士、公認会計士、税理士などの士業は学生のうちから目指す場合が多いのですが、2008年のリーマンショックで落ち込んだ大学生の企業への就職率は、ここ数年回復傾向にあると言われており、士業を目指すより企業への就職を優先する学生が増えているのかもしれません。

一方で独立を前提としない士業資格の出願者数は概して横ばい、もしくは増加傾向にあります。これらの資格は、企業に勤務している時も資格が評価され、いざという時には独立も選択肢として検討することが可能です。一種の保険として、資格を目指す人が一定数いるということかもしれません。

特筆すべき点としては、弁理士や技術士といった技術に関わる士業の落ち込みが激しいことです。どちらも製造業に密接に関わる資格ですが、理系の一定数がIT系の職業に就くことが一般的となった現状を表しているのかもしれません。

いずれにしても出願数が減少するということは、それだけ競争が少なくなる訳ですから、
優秀な人材の確保と言う観点からみた場合、各士業にとってはゆゆしき問題だといえるかもしれません。


《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.html


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