学校

岩手県の中学2年生がいじめを苦にして自殺した。心から、ご冥福をお祈り申し上げたい。報道によれば、被害生徒は「生活連絡ノート」上で、担任教諭に対し、自分の苦しい現状を訴え続けていたという。

生徒が通っていた中学では、担任が生徒と「生活記録ノート」をやりとりし、生活状況を把握している。生徒は5月以降、他の生徒から蹴られたり、首を絞められたりしていることをノートに記していた。自殺前の6月末には「もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」などと自殺をほのめかす記述もあった。

中学は同法に基づき、「いじめ防止に関する基本方針」を作成。早期発見のため、生活ノートを活用するとしていた。さらに、いじめを発見したり、通報を受けたりした場合、校長らでつくる「いじめ対策委員会」を開き、校長以下全教員で共通理解を持って対応することになっていた。

しかし町教委によると、ノート内容については担任から学年主任への報告もなかった。同僚教員にも担任からいじめの可能性があると聞いた人はいないという。

毎日新聞 7月9日(木)11時2分配信

■本件の問題とは
学校側に対する非難の声が多数上がっている。報道によれば、被害生徒と加害生徒等との話し合いの場を設けたりしたようであるが、被害生徒の自殺という最悪の結果となってしまった。

今回の問題点は何か。筆者は「話を聞く」ことに対する、学校側の中途半端な対応にあったと考えている。被害生徒が窮状を綴っていた「生活連絡ノート」とは、生徒の生活状況を把握するため担任教諭と生徒がやり取りをする交換日記のようなものであったという。普段複数名の対応に追われている担任と話す機会がなくとも、ダイレクトに自分の悩み等を聞いてもらえるよい機会。それが、学校側と生徒側の共通認識であったといってよいであろう。

しかし、「死にたい」「生きているのに疲れた」等とノート上で生徒が訴えても、「環境が変わってみんな慣れていないからね」「元気を出して生活しよう」などという回答であったようだ。意図的に「死」に触れることを避けたのだろうか。担任教諭は現在病欠状態であるといい、真意のほどは明らかとなっていない。

問題なのは、「生活連絡ノート」を通して「話を聞きますよ」というメッセージを発信しているにもかかわらず、深刻な内容に応答していない中途半端さではなかろうか。「死」という深刻な問題に向き合うのに抵抗があったのか、担任教諭が繁忙を極め一人一人に真摯に向き合う時間がなかったのか、そもそも話を聞く気がなかったのか、それは当事者でなければ知る由もないが、少なくとも本件は放置してよい話題ではないだろう。

確かに、先生は忙しい。精神疾患による病休者が多発し、「病む教師」が社会問題化して久しい。クラブ指導や事務仕事などの雑務に追われ、生徒一人一人に向き合う時間がないという切実な現状も重々承知している。だからこそ、担任一人で抱えきれないと判断されるような内容であれば、スクールカウンセラーや学年主任等に話をつなぐ等の対応をとるべきであった。担任教諭としての責任は勿論あるが、イレギュラーな事案にはチームで対応にあたるべきだ。命がかかっているのならば、なおさらである。

「話を聞くよ」というスタンスであるならば、学校側のだれかは責任を持って聞き役に徹するべきだった。校長は「いじめがあるとは知らなかった」と述べたというが、組織内の情報共有体制に疑問を感じる。

■同じことはビジネスの場でもいえる
さらに同じことはビジネスの場面でもいえる。「部内のコンセンサスを得る」という名目で行われる会議に呼ばれ、せっかくだからと意見を述べても、巧みにスルーされるようなことは誰しも経験があるのではなかろうか。また、「どうした?話を聞くぞ?」と年配上司に呼び出されるも、いつのまにか上司の愚痴を延々聞いている、といったこともよくある話だ。

繰り返すが、「話を聞くぞ」と言うならば、徹底して話を聞かなければならないのである。ふたを開ければ賛成意見を収集するためだけの御用会議など、時間の浪費に他ならない。それならば、当初からトップダウンで決定し、話を聞くというプロセスを経ないで物事を実行するほうが効率的で納得感も得られよう。

「話を聞く」ことは、本気で行おうと考えれば、時間も労力もかかるものだ。筆者も職員の相談業務に従事した際は、1時間の相談対応後はぐったりとなり、その後仕事にならないほどであった。話の内容だけでなく、相手の表情や一挙一動に気を配るということは、一朝一夕でできることではない。それだけに、その気がないのに「話を聞くぞ?」等と気軽に言っては、「聞く聞く詐欺」になってしまうのである。

【参考記事】
■所沢市「第2子出産で保育園退園」問題-子育て真最中の産業カウンセラー的視点-(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/45231318-20150619.html
■メンタルが限界だと思ったら誰に相談すべきか?!-良いカウンセラー・悪いカウンセラーを見分けるポイント-(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/43348690-20150212.html
■所沢市「第2子出産で保育園退園問題」に関する保護者バッシングが危険な理由(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/45313644-20150625.html
■「うつ」は「うつる」のか-職場でメンタル不調者が発生したときに考えるべきこと-(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/44493262-20150428.html
■保育園の懇談会で感じた、男女別「話の聴き方」のススメ(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/44906053-20150526.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


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