c5ed20decfc1b8815841f1437a3fb519_s

財務省が来年度の消費税10%の引き上げと同時にマイナンバーを導入した還付金制度案は、様々な反対論が起こり、またもや軽減税率制度を導入することを視野に入れ、再検討とすることにしています。

消費税は、ヨーロッパ諸国で以前から積極的に導入されてきた税金です。その中で、軽減税率は食料品などある特定の品目について消費税の税率を低くすることですが、その判断する基準を導入するのは非常に難しく、時には裁判になるケースも多くあります。

しかしこのようなことは諸外国ばかりではありません。実は日本にも以前このような税の奇妙な判断基準が話題になったことがありました。

■贅沢品に課税された物品税
消費税は平成元年4月から導入されましたが、それ以前には、日本には物品税という消費税に似た税金がありました。物品税の歴史は古く、もともと日中戦争の戦費調達を目的として新たに導入された税金であって、個別の消費税の一種です。生活必需品は課税せずに、贅沢品には重く課税するというもので、具体的には、宝石、毛皮、電化製品、乗用車あるいはゴルフクラブといったものが課税の対象とされていました。

しかし中には例外もあり、例えば、レコードは贅沢品として課税されていましたが、教育に配慮して童謡と判定されれば非課税でした。

■たいやきくんは童謡?それとも歌謡曲?
「およげ!たいやきくん」は1975年、子供向け番組の「ひらけ!ポンキッキ」の中のオリジナルナンバーとして発表された童謡です。当時レコードを買い求めに行った子供も多く、歴代シングル売り上げ枚数ランキング一位は、未だに破られることのない伝説の曲です。

「たいやきくん」は子供向けの歌なので、「童謡」で物品税はかかりません。しかし、この歌の裏には毎日同じことの繰り返しに嫌気がさして脱サラをしたサラリーマンの悲哀を歌った曲だとして、税がかかる「歌謡曲」になるのでは?と問題になったのです。結局「たいやきくん」は童謡との判断で非課税になりましたが、その後にアニメソングを一律に童謡として扱っていたレコード会社の一部の曲が「童謡に該当せず課税」との判断をされ、物品税を約4,000万円追徴課税されたのでした。

■軽減税率導入が時代を繰り返すことに
物品税は商品の多様化により、課税・非課税の判断自体が困難になり、1989年消費税が導入するとともに廃止されました。現在の消費税は、物品税とは違って食料品などの生活必需品にも広く課税されるという単一税率になっています。

政府は現在、軽減税率の導入を有力な候補にしていますが、およげたいやきくんから40年経った今も同じような状況に陥ろうとしています。特に食料品に軽減税率を導入しようとしていますが、その線引きを決定するのは難解な作業です。何十年も前の物品税での出来事を忘れてしまっているのでしょうか?

なぜなら、およげたいやきくんのように1つの曲にしても歌詞を素直に読むか深読みするかによって、童謡とも歌謡曲になると考えられるという奥の深さから税率など複数にすることは困難です。

物品税は、課税か非課税かでしたが、同じように軽減税率が導入されると、税率を低くするよう敢えて細工するなどの脱税まがいの商品や軽減税率を主張して裁判を起こす会社が多く出現することになるでしょう。税務署は新製品が出るたびに頭を悩ませ、裁判で勝ったり負けたりする度に、税率のガイドラインを更新しなければなりません。またその更新に対して会社は税率対策をし、国民は安く買う知恵を働かせることになり、いたちごっこになってしまうでしょう。

さらに、興味深いことに平成26年度の国税庁の発表する異議申し立ての件数は、2,755件で、中でも一番多い税目が816件の消費税です。現在税率が1つであっても税務署と納税者の見解の違いから争いになるケースがあるのですから、これから軽減税率を裁判で争うといったケースも多くなるに違いありません。

■他の国に学ぶ日本のはずが・・・
日本は外国の税金を研究し、導入するといったスタンスを取っている国です。その「軽減税率」の先駆けとなった欧州諸国では、税率の線引きの難しさや一旦導入してしまうと民衆の支持が強く、廃案に出来ないといったなどの理由から「軽減税率は失敗だった」といわれています。

その「失敗」をなぜ敢えて導入するのでしょうか?税率を何とか上げるため、それと引き換えの国民感情を最小限にとどめるための苦肉の策なのでしょうか。欧州での失敗、日本での歴史等を見据えたうえでの失敗のない慎重な判断が今求められています。日本もこういった前例を踏まえ、間違った判断だけはしてほしくないと思います。

【参考文献】
■最も滞納税額が多い税金はこの税だった!(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/46098542-20150830.html
■消費税 軽減税率の問題点 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/40635462-20140902.htm
■消費税増税で支給された臨時給付金の実情 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/41787425-20141108.html
■脱税天国ギリシャは自営業がお得、日本はサラリーマンがお得?(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/45568041-20150716.html
■なぜ税務署は確定申告時に電子申告(イータックス)をすすめなくなったのか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/45357050-20150629.html

浅野千晴 税理士



この執筆者の記事一覧
このエントリーをはてなブックマークに追加


関連コンテンツ
シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。




執筆者プロフィール