pl-2014292921887ギャンブル


■野球賭博の依存症
プロ野球巨人軍の現役選手の野球賭博が発覚しました。現在(当コラム投稿時)、3人の投手が発覚していますが、全容の解明はこれからでしょう。最初に発覚した投手は、直近で精算されていなかった負け分の百数十万円を関係者が球団に取り立てに来て発覚しました。ここで腑に落ちないことがあります。いくら一軍登板が減っていたにしても、現役のプロ野球選手がたかが(と言っては語弊がありますが)百万いくらの金を払えないわけがなかろうということです。

調査によると、常習的に1万円くらいずつ賭けていき、負けが負けを呼び、精算のための借金が1千数百万円となり、最後の「たかが」百万いくらの金が精算できていなかったとのことです。まさに賭けとツケの自転車操業で、ギャンブル依存症の典型です。

この野球賭博の問題も重大ですが、私は一般投資家もひょっとして同じような心理でギャンブル的な投資にハマってしまうのでないか、と危惧するものです。

■ギャンブルにハマるパターン
ギャンブルにハマるパターンは、行動経済学的に2つあります。

第1のパターンは、「勝ちの可能性」の確率が低い段階です。「5%の確率で100万円もらう」というのがその例です。「勝ち」の確率が低いほど、「こんなはずはない、もっと勝てるだろう」と野望的になり、リスクを取ることに大胆になります。限りなく低い確率にお金をつぎ込んでいきます。いわば現実の可能性の確率と主観との間にギャップがあるのです。

第2のパターンは、「負けの実現性」の確率が高い段階です。これは「95%の確率で100万円失う」ということです。「負け」の確率が高くなるほど、この負けを覆そうとして狂乱的になり、「一か八か」の賭けに出ます。これは現実の実現性の確率と主観の間にやはり大きなギャップがあるからです。

■「怖れ」がギャンブルに走らせる
人は、夢を見すぎて人生を破滅させることは滅多にありません。宝くじや馬券を大量に買って破産したという人はあまり聞いたことがありません。これは第1のパターンに当たります。獏(バク)のように夢を食らい過ぎて現実世界に対応できなくなり、生活を困窮させる人はいるでしょうが、本人は意外と平気なものです。そこには夢を見る「快楽」があるからです。彼は万年青年のように夢を追いかけているのです(家族がいたら、たまったものではないかも・・・)。

問題は、「怖れ」にとり憑かれた時です。これは第2のパターンです。お金の価値観というのは、その人の財産状況にもよりますが、1万円の損失(あるいは負債)でも直接的な心理要因となってその人の生活感覚を脅かします。明日から地を這う破滅者になり下がり、食うに食えなくなるという「怖れ」の前に、人は追い詰められて大博打の行動をとるのです。ただし、いきなりこんなギャンブルに出るわけではありません。

■賭けが常習となる段階
最初は夢を買っていきますが、可能性が低いので物足りなくなり常習化していきます。常習、つまり日常的になるわけですから、大きな金額は賭けません。例えば、50%の確率で100万円もらえるが、50%の確率で100万円失うとなる状況を思い浮かべてください。こういう状況では、ハナっから大きな賭けには出ないでしょう。「半分は負けるかもしれないけど、半分は勝つかもしれない」などと悠長な心理です。本当に100万円損したくなかったら賭けなければすむことです。つまり、「五分五分」(現実的には、勝つか負けるかが四~六分くらい)の確率では人は切羽詰まった(危険を侵した)賭け事はしないということです。

1回の賭けが1万円程度なら、負けてもその場で「怖れ」につながるものではありません。逆に、身を切るほどではないがそれなりのスリルを味わうことができるのです。これが「五分五分」の賭けの段階です。これは常習化していきます。娯楽でのギャンブルなら、このレベルで楽しむくらいにしておくのが無難です。

■「一か八か」の賭けに出る時
株式投資にしても、この段階でほどほどに踏みとどまっていればギャンブル的投資にハマらないですむかもしれません(ここでは株式投資はギャンブルかという議論はしません)。例えば日常的に株式投資をしている人が、「五分五分」程度に利益が得られると思っていたところ、損失が膨らんで取り返しのつかない金額になったとします。このままでは1千万もの負けが決まるという時、売却して損失を確定するか、「一か八か」で大逆転に出るか―。

むざむざ大損するくらいなら、とボーナスやら退職金、挙句は貯蓄をはたき出して数百万円単位の額で即儲かりそうなハイリスク商品に一点集中、一気に投資するわけです。なにしろ、ここには「老後資金の枯渇」、「老後の破滅人生」、「貧乏爺さん」などとさんざん世間で聞かされてきた「怖れ」が付きまとっています。このまま破産かと人は怖れを抱き、「一か八か」のギャンブル的投資に走るわけです。もちろん、あなたが必ずこうした投資行動に出るなどと言うつもりはありません。可能性が大きいということです。

■ギャンブル的投資にハマらないために
では、ギャンブル的投資にハマらないようにするには、どうしたらいいか? じつは、そんなものは見当たりません。しいて言えば、すでにギャンブル依存症に罹っている人は一種の病気ですから、周囲がその人に賭け事をさせないようにすることが最良の策となります。と、これでは一般の正常な(?)投資家には身も蓋もないので、もう少し考えてみたいと思います。

ヒントは、リスクをとるか、とらないかという判断の前提は何か、ということになるかと思います。それは、損得(勝ち負け)の客観的な確率と主観との間のギャップを埋めることです。

例えば、いま投資している損失が1000万円とします。この損失に対して、「まだ何とかなる、あと1000万円投資して挽回だ」などという、現実と心理の溝を埋めるということです。簡単に言えば、損失が確定的なら、それを認めて腹を決めるしかない、ということです。

「それじゃあ、解決にも何もならない」と言われるでしょう。でも、傷を倍に深くするよりはましです。そもそも、ここまで負けが込んできた要因は何でしょうか。どこかで歯止めをかけられなかったのでしょうか。 

■現実と心理のギャップが埋もれている所で手を打て
どこで? それは、客観的な確率と主観的な確率が半々、現実と心理のギャップがない所、すなわち第1のパターンと第2のパターンの中間地点です。まだ損得の確率が「五分五分」の段階で手を打つしかないのです。この段階ではまだ、心理的な締め付けなしに常習的にやっているわけです。「怖れ」がないので、損が出てもリスクを無理に取ろうとしません。

したがって、この段階での損失が拡大し、もう取り返しがきかないという「怖れ」の段階(第2のパターン)が訪れないうちに、何らかの決断をすることが肝心です。それが、ギャンブル的投資にハマらないコツといえばコツと言えるのかもしれません。ある意味、ギャンブルは、常習化している段階が一番怖いと言えるのです。


【参考記事】
■損が出た時に対処するお金と恋愛の投資心理学  野口俊晴
http://sharescafe.net/46399715-20150929.html
■老後資金づくりでハマる心理的な罠  野口俊晴
http://www.tfics.jp/ブログ-new-street/
■就職面談で給与アップを勝ち取る先手交渉術  野口俊晴
http://sharescafe.net/45714680-20150730.html
■「家族的」な会社のホワイトに見えるブラックな部分  野口俊晴
http://sharescafe.net/44029506-20150331.html
■目先の損得にとらわれない これからの年金、早くもらう方法と多くもらう方法  野口俊晴
http://sharescafe.net/41566040-20141026.html

野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー  TFICS(ティーフィクス)代表 




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