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先週からネットでもよく目にする「資生堂ショック」。子育て中の母親にやさしい会社として注目を集めてきた資生堂で、休暇制度を利用している子育て中の女性社員にも平等なシフトやノルマを与えるという方針転換がなされたものです。1週間前の9日(月)にNHKニュースおはよう日本の特集でとりあげられたことからいろいろ議論されていますが、これから出産・育児などのライフイベントを迎える女性に、このケースに絡めてぜひ伝えたいことがあります。

休暇制度の趣旨、会社との付き合い方、そして、産んだあとの時間とお金のインパクト、の3つです。


■各種の休暇制度は働き続けるためにある。
休暇制度は、本来は「働き続ける」ための仕組みです。休暇をとる人を「優遇」する制度ではありません。育児休暇は1年~1年半ですが、育児はそのあともずっと続きます。あくまでも休暇取得後に働き続けるための制度なのです。

この制度を使って取得した休暇中は、出産後の体調を整えつつ育児をしながら、職場復帰したときにどんなふうに働くかを決める大事な期間。だからこそ、休暇をとる側の女性はあらかじめ、復帰してからどのように働きたいのかを会社側に伝えておく必要がありますし、会社側も、周囲との業務分担や、どのような形で育児休暇後に会社に戻ってきたいのかを本人との面談で確認する必要があります。女性毎に事情は異なりますから、会社の側にはぜひ、ほかの人がこうだったから、ではなく一人ひとりに向き合ってほしいと思います。

■会社が何をしてくれるのか、ではなく、自分が会社に対して何ができるのかの志向にチェンジする。
今回の資生堂の施策は今まで手厚かった時短制度などの運用を後退させ、働くお母さんへの条件を厳しくするものだとみる向きもあります。しかし、私は別の見方をしています。

以下の図は、私の記事「結局『女性活用』って何すればいいの?」で出した、女性のタイプを分類したマトリックスです。今回の資生堂ショックの件では、美容部員の一部の方が左下エリアの「(4)定型業務型」、つまり「仕事はそこそこで、(権利でもあるので)時間どおりに帰ります」という状態であったことが危惧され、付加価値の高い仕事をする「(2)WLB(ワーク・ライフ・バランス)考慮キャリア型」になってほしいという会社からの期待が示されたと言えます。

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つまり、仕事セーブ要因を持つ女性たちにもきっちりと仕事で成果を出してもらい、それを客観的に評価する、という会社からの期待が明示されたのです。会社で給料をもらって働いている以上は、それ以上の価値を出してもらわなければ経営者側も困るのは当然のことです。企業は当たり前にそこに存在しているのではなく、利益をだしてキャッシュを手元に確保し続けない限り、倒産する可能性が常にあるからです。

休暇をとる女性の側も、こうした経営者側の視点は持っておかねばなりませんし、自分がする仕事で会社にどんな貢献ができるのか、伝えたり表現したりする努力が必要です。

しかも、今回の資生堂の件は、会社側も一方的にお願いしているのではなく、ひとりひとりヒアリングの上、家族の協力を仰げない人には、会社からシッター代を補助する、といったケアをしています。ひとりひとりに対して個別に対応する、というこの姿勢は、ほかの企業でもぜひ真似してほしい対応策です。

■産むなら65歳までの「時間」と、数千万の可能性もある教育費も考えよう。
そして、ライフイベントをこれから迎えるという時期にはなかなか見えづらいのが、子どもは成長していく、という視点と、その過程でかかってくる教育費です。

第一子出産年齢の平均が30.4歳(2013年)ですから、この年齢で子どもを出産する場合、40歳半ばで子どもが中学生になります。35歳で産んだとしても40代後半、そこから65歳の定年まで、まだおよそ20年あります。私もそうだったので、ぜひ伝えたいのですが、つい、ライフイベントを迎える前は「子どもを産んだ後は大変だ」という観点だけで考えてしまい、子どもが成長したあとのことにはあまり思いが至らないことが多いもの。この期間に働いているかどうか、ということはライフスタイルや収入面等、自分がどんな風に生活していたいのか、という観点で考えておく必要があります。

さらに、中学生以上になると、多くの場合、乳幼児のときのように世話をする必要はなくなりますが、食事や会話などの通常のケアはもちろんのこと、増えてくる教育費の負担を避けては通れません。少し前ですが、文部科学省「データから見る日本の教育2008」(同誌は2008年で廃刊)によれば、中学校から大学までずっと公立(大学は国立)だと一人あたり590万円、ずっと私立だと1,273万円かかる、というデータが出ています。働き続けることで、こうした出費に備えるためのリスクヘッジになることが理解いただけるのではないかと思います。

■まとめ
今回の件は、これからの少子高齢化の中で企業が競争に勝っていくために、社員に求められる働き方を端的に示した件だといえます。短い時間の中でも、制約がある中でも、企業としての高い付加価値を出すことには社員に貢献してもらう、そして、社員がその貢献ができるような企業努力はする、という姿勢です。

こうした企業の姿勢を理解しながら、働くことも含めて自分のライフスタイルは自分でデザインしていけるように、今回挙げたポイント3点を念頭におき、女性のみなさんにはぜひ働き続けてほしいと思います。

小紫恵美子 株式会社チャレンジ&グロー代表取締役/OfficeCOM代表 中小企業診断士

《参考記事》
■新しい働き方で、企業と個人双方がつけなければいけない力。 (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45172807-20150614.html
■2015年は長時間労働崩壊元年に (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42734491-20150104.html
■結局、「女性活用」って何すればいいの?(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html
■「女性活躍推進」すら着手しない企業で成長はムリ。(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42290659-20141208.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206


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