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旭化成建材の杭打ち工事のデータ改ざん問題。

問題は旭化成建材にとどまらず、他社にも波及し始めている。

杭というのは、一度建物が建ってしまうと見えなくなってしまう。これまでの報道でも伝えられているとおり、データの改ざんをされてしまうと、建物が傾く…などの問題がない限りはプロでも発見することが難しいという、深刻な問題だ。

今回の問題のように大々的に取り上げらえるようなことはないが、実は、マイホーム購入にあたっては、日頃体験することが滅多にない取引であるということもあって、知識不足からくるトラブルが少なくない。

建築関係の職業にしていない人でも、ちょっと気を付けておけば回避できるトラブルが多くあるのだが、それにもかかわらず、見過ごしたまま契約をしてしまっているケースが多い。

例えば、中古住宅を購入して入居したものの、不幸にも住宅が傾いていた…としてトラブルになったケースではどうだろうか。

■中古住宅で地盤の調査は行われるか?
軟弱な地盤である場合には建物が傾く原因ともなるが、中古の戸建住宅の売買のケースでは多くの場合、実のところ、その建物の建っている土地についての調査はあまり行われていないというのが現状だ。

過去に地盤の調査などを行っていてその記録が残されていればよいが、そうでなければ、購入を予定している土地の状態はわからないまま購入することになる。

仲介を担当する不動産業者によっては、目視で確認できる限りでチェックをしてくれる業者もある。建物やブロック塀のひび割れの状態などから、住宅の状態を確認してくれるのだが、もちろん、目視によるもので絶対というものではない。

今回の旭化成建材の問題は、新築マンションについて地盤の支持層まで杭が到達していないことで大きな問題となったわけだが、戸建て住宅の場合はそもそも地盤がどうなっているかということについて、わからないまま契約をしていることも少なくないのだ。

■不動産の契約の問題点は?
このように「よく分からないまま」契約をした場合、何か問題が発覚したときは誰が責任を取ることになるだろうか。

売主でさえ問題を把握していなかったことについて、誰が責任を取るかということを「瑕疵(かし)担保責任」という。

基本的には、売主が責任を取る。

しかし、売主が不動産業者ではなく個人の場合は、契約上、売主は一切負わないという取り決めがされることがある。現状有姿売買などと言われることもあるが、売買の条件として、現状のままで売却するもので、後で問題が発覚しても買主は文句を言えない、ということになる。

こうなると買主としては、問題個所の修繕にかかる費用など自己負担することになってしまうのだ。

■不動産取引にはリスクがあることを知る。
まずは不動産取引にはリスクがあることを知ることが大切であると思う。

今回のケースでいうなら、リスクを回避するために、地盤を含めて建物もしっかりとした診断を受けたものを購入するべきだ、ということになる。

ただし、これは売主が協力をしてくれるなら、ということが前提となる。

売主が調査に協力をしないということになれば、これを強制する法律はない。どうしてもその物件がよい…というのであれば、リスクを踏まえて購入に踏み切らなければならない。

また調査の費用については買い手が負担することになるだろう。リスクを回避するために青天井で予算を準備する、ということは現実的ではない。

つまり、不動産を購入るにあたってはリスクを0にすることはできないということだ。

■リスクを踏まえた契約をする。
しかし、リスクを把握しておけば、例えば売買契約の条件として責任を誰が負担するかいう点について売主と交渉をするということもできるし、売買代金の減額を交渉する材料ともなる。

つまり、交渉の幅が広がるということだ。

冒頭で書いたとおり、日頃体験することが滅多にない契約であるがゆえ、知識不足から見過ごされてしまうトラブルが多い。今回取り上げた地盤の問題も知らなければ、不動産業者に質問すらせずに見過ごされてしまうだろう。

リスクを踏まえた上での選択をするためには、ある程度不動産取引とはどのようなものか知らなければならない。もちろん、今回ご紹介したような地盤についての科学的な知見を広めるという意味ではない。

「どのようなトラブルが起こる可能性があるか」を知るということだ。

マイホームの購入を検討する際は、まずはここから始めてはどうだろうか。

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及川修平 司法書士

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