SCOL44

先日、総勢44名の士業を中心とした専門家がある勉強会に集いました。テーマは「起業体験ゲーム」。実際に自分が社長ないし会社のメンバーになって、ほかの会社と協力しながら取引を通じて自社の現金を増やし、人を雇うことを目的に優勝を競うゲームです。こちらに、プレーヤーとして“参戦”してまいりました。とても楽しく、起業してすぐの経営で気を付けなくてはならないポイントを改めて実感できたので、それをまとめます。

■真剣勝負、白熱したゲームの結果
3人一組で会社を経営、全体では5業種16社で優勝を競った今回のゲーム。私たちのチームは製造業を選択、私が社長を引き受け、2時間半で5期分の経営を実施しました。仕入れから販売、マーケットや他社との取引、途中でなんと貸倒れ(商品を販売してあとから回収するはずの売掛金等が相手先倒産等で回収不能となること)も経験。それでも敏腕社員のおかげで現物回収などを実現できたため、なんとか優勝候補に残る条件(雇用確保、最終期末キャッシュの最低残高等)はクリアしたものの、残念ながら優勝には至らずでした。

短時間のゲームではありますが、非常に楽しく、かつ、かなり経営の仕組みを体験することができると感じました。通常セミナーで起業や経営についてお話をしていますが、改めて実感した、経営者としてスタートアップ時に特に注意すべきポイント3つは、以下の通りです。

1)常に必要最低限の現金を確保しながら利益を出す取引をすること
2)経営判断を助けてくれるチームメンバーあるいはアドバイザーを確保すること
3)取引先はしっかりと確保と管理をすること

以下ひとつずつ見ていきます。

■常に必要最低限の現金を確保しながら利益を出す取引をすること
ゲームの中の経営者として常に考えていたのは、「期中の必要最低限の現金を手元に確保しつつ仕入、製造、販売を回して利益を出し、期末資金を少しでも増やしていくこと」です。仕入れや販売の時間は数分、と限られています。その中で次々と持ち掛けられる商談に、どんな条件でどの取引先の要求に答えていくかを決めなくてはなりません。常に取引ができるように1期、2期先の現金有高と在庫を冷静に計算しつつ、相手先の業界動向やこれまでの取引実績も考えながら取引先と必要なコミュニケーションをしていく必要があります。

これは実際の経営でも同様です。最初から売上が順調に上がることはなかなかありませんが、一旦事業が軌道に乗り始めると、限られた時間の中での素早い決断が必要になってきます。真摯に経営に取り組む経営者であれば、自社の製品やサービスをぜひ欲しいといってくださるお客様に、できるだけ適正価格で安定的にご提供をしたいと思うもの。不安定な経営環境の中、少しでも安定的な売上を確保し、事業継続のための必要資金を準備することができるからです。

一方で新しい取引先も探し続けなくてはなりません。ずっと既存の取引が続くとは限らないですし、当社との信頼関係があっても、相手先がある日突然倒産することもあります。そんなときに限って目の前に、当社の経営理念や方向性とは合わない取引の話も入ってくるものです。もうかるものなら何でも、とつい手を出したくなることもある・・・利益を出しながら資金確保をするにはどうすべきか、「正解」のない中で答えを出していかなくてはならない、という状況に常に経営者はさらされています。

■経営判断を助けてくれるチームメンバーあるいはアドバイザーを確保すること
スタートアップ期には、経営者は不慣れな状況の中で上記のように様々な経営判断をする必要があります。本来であれば、経営判断以外の業務を任せられる従業員を雇う、あるいは外部委託したいところです。ゲームではチームメンバーがいたため、取引先と具体的な交渉をしてくれたり、私の判断にも意見をくれたりして、難しい取引判断を乗り切ることができました。しかし実際の起業後は、たいてい資金が足りず、すぐにこうした人を雇うことは難しいことが多いものです。

実際の経営では、起業時に利用できる行政サービスでの専門家相談員、あるいはつながりのある同業者の先輩など、ご自身で信頼できるアドバイザーを求めることが近道です。他社との取引での条件設定、提案と交渉の方法、見積書の書き方、クロージングの仕方、資金ショートを起こさない資金管理の方法等々、スタートアップ時にはなんでも一人でやるためにわからないこと、迷うことも多くなります。そんなときに、アドバイザーにそうした疑問をぶつければ早急に解消していくことができるとともに、ほかの人に相談できるという安心感から経営者の「孤独」が少し緩和されるものです。

ネットの情報ももちろん有効ですが、様々な情報があり、その正誤を自分で判断しないといけません。信頼できるアドバイザーの人に聞いた方が確度があがることのほうが多いはずです。

■取引先はしっかりと確保と管理をすること
安定した経営のためには、信頼関係のある取引先がいることが欠かせません。ゲームでも、毎期当社から製品を買ってくださるお客様は本当にありがたい存在でした。

一方で、貸し倒れの経験をすると、資金不足の危機を実感します。回収が非常に難しいこと、売掛金管理に対する自分の甘さなどにがっかりし、気持ちがふさぐこともあります。しかし、ゲームでも実際の場面でも、がっかりしているひまはありません。少しでも回収できないか、現物で回収できないか等、手を打たなくてはならないのです。

ゲームでは優秀な社員が現物で販売可能なものを回収してきてくれたことから、必要な現金も確保することができました。従業員と、誠意をもって対応してくれた、倒産した取引先への感謝の念がわいたものです。

スタートアップ時には、どうしても資金が足りなくなりがちです。そんなとき、貴重な売掛金の回収が滞ることは、事業の継続ができなくなる危険性をはらんでいます。貸し倒れてからでは回収に手間もかかりますし、普段から、こちらが与信管理(取引先にいくらまで売掛金額を付与するかの限度額の設定運用、および相手先の信用調査)を実施することが必要です。

また、損害額は、実際に貸し倒れた金額だけの損害にはおさまりません。貸し倒れた金額を回収するには再度どれだけの売上をあげなくてはならないかを考えると、売って安心、ではなく、回収までして初めて取引が完了する、ということに日頃から注意しておく必要があります。


■当たり前のことをいかに愚直にできるか、そして、最後に信頼関係

会社継続のためには、わずかでも利益が出るような取引をすること、そして、売った代金はきちんと回収し、必要資金を確保することが必要です。そのために、経営者は特に上述した3点のことを肝に銘じなくてはなりません。今回挙げた3項目は、どれも「当たり前」なことですが、実際に自分が本気で取り組むと、それがいかに大変なことか、ということがよくわかります。

ちなみに、このゲームでは優勝会社が準優勝会社を指名するのですが、取引関係が厚く、優勝会社とともに協力し成長した会社が指名されていました。最終的には会社同士、経営者と社員の間の信頼性がモノをいいます。「当たり前だけれども大事なことをいかに愚直に続けることができるか」というところに、経営が継続できるかどうかがかかるということを痛感した2時間半でした。

※2015/12/16 一部加筆修正しました。

小紫恵美子 株式会社チャレンジ&グロー代表取締役/OfficeCOM代表 中小企業診断士

《参考記事》
■起業した貴女に伝えたい、事業継続するために大切なこと (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40388849-20140817.html
■会計を知らずに経営をするべからず (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42067634-20141124.html
■「ママたちのプチ起業」論争が炎上中。その理由は? (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/41811124-20141109.html
■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38119326-20140407.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206


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