kakei


今年も残すところあと僅かとなりました。いつの間にかアベノミクス2.0、新三本の矢が話題の中心になっていますが、アベノミクス1.0の最終年ともいえるこの1年、一般庶民の暮らしぶりはよくなったのか、検証してみました。

■この1年の消費者物価の変化
本来はこの1年という意味では、平成27年1月からのデータを使うべきなのですが、まだ統計値が出ていないために、ここでは平成26年10月から平成27年10月のデータを利用することにします(出所:総務省統計局の消費者物価指数(全国中分類指数))。

図表1はこの間の各月の物価指数の変化を表したものです。なおこの指数ですが平成22年(2010年)を基準値100とした数値になっています。

【図表1】消費者物価指数の変化
fig1


消費者物価指数の中分類指数にある10大費目に関する平成26年10月から平成27年10月までの変化は以下です(カッコ内消費者物価指数)。

<上昇>
食料(104→107.5)+3.4%
家具・家事用品(93.3→95)+1.8%
被服及び履物(105.9→107.7)+1.7%
保健医療(99.4→100)+0.6%
教育(101.1→102.6)+1.5%
教養娯楽(98.6→100.6)+2%
諸雑費(109.3→110.1)+0.7%

<下落>
光熱・水道(120.8→112.3)-7%
交通・通信(106.6→103.1)-3.3%

<同等>
住居(99.1→99.1)

食料の上昇幅と光熱・水道および交通・通信の下落幅が目立ちます。


■一般の家計ではどうだったか
具体的なイメージを思い描くために、上記物価上昇率を標準的なサラリーマン家庭(年収500万円、手取り350万円)というモデルケースに当てはめて考えてみます。モデルケース家計の支出費目は標準的な割合を総務省統計局の消費者物価指数の中分類指数にある10大費目に合うように組み換えました。

図表2に計算結果を示します。

平成26年10月を基準として物価上昇率を各費目に反映させて計算すると支出は1年間で12,250円増加した計算になります。一方、賃金上昇によって手取りが1%増加したとすると収入は35,000円の増加です。収入の増分から支出の増分を差し引けば、22,750円のプラスと計算できます。しかしこの22,750円ですが12ヶ月で割れば月に約2千円弱です。この程度余裕が出たからといって消費が活発になるとは考えにくいでしょう。

多くの人にとってこの1年で暮らしぶりはあまり変わらなかったというのが実感ではないでしょうか。政府・日銀がいくら旗を振っても消費が活発にならないわけです。

【図表2】モデルケースにおけるシミュレーション
fig2



■積極的に消費を行うようになるには
ここで仮に毎月1万円以上家計に余裕が出れば消費に前向きになると仮定してみます。

この条件を満たすように上記の例で考えると手取り収入で363.3万円必要になります。350万円が363.3万円に増えるためには、4%の手取り上昇が必要です(350万円×104%=364万円)。

しかし消費税が8%から10%へ2%アップした場合、支出総額は3,555,195円となり(住居と貯蓄・保険料は諸費税アップ分不適用)、毎月1万円以上の余裕を生むには5%の手取り上昇が必要ということになります(350万円×105%=367.5万円、367.5万円-355.5万円=12万円)。

上記仮定に基づき、手取り増=賃金増と考えれば、消費を刺激するのに必要な賃金上昇率は5%程度ということになります。しかし、この数字は今の日本企業にとって現実的とは思えません。

次に別の切り口として、金融資産を見てみます。

平成26年10月から平成27年10月まで日経平均株価は16,414から19,083と16.3%上昇しました(各年とも10月末日終値)。すると例えば仮に100万円株式を持っていたとすれば、この1年で16.3万円の含み益が出たことになります(配当等は無視)。税金20%を控除してもこれだけで手元には13万円の余裕資金が生まれたことになるので、毎月1万円以上の余裕が出たことになります。こう考えてみるとやはり金融資産を持っているか否かで大きく差が出るということがわかります。

以上あくまで1つのモデルケースを基にした思考実験であり、すべてを語ることはできませんが、今後の消費増税や現実的な賃金上昇のことを考えると、金融資産や特別な収入源を持っていない人が積極的に消費に向かうことはなかなか難しいのではないかと思われます。

注)ここでは今後見込まれる社会保険料の増加や軽減税率、各種補助金等については未考慮としています。


【関連・参考記事】
■アベノミクスは庶民の味方か? 2014年賃金が増えたらしいけど実感がわかない。 皆川芳輝
http://sharescafe.net/43236234-20150205.html
■アベノミクスによって資産は増えた?減った?もはや他人事ではない為替のインパクト。 皆川芳輝
http://sharescafe.net/45149629-20150612.html
■今回の軽減税率は次の消費増税を招く諸刃の剣だ 藤尾智之
http://sharescafe.net/47205487-20151214.html
■最低賃金を1,000円にすると、社会保障の財源が安定化する? 原田雄一朗
http://sharescafe.net/47021796-20151126.html
■アベノミクスを信任するかどうかは歴史に学べ~【書評】やりなおす経済史---本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門 中郡久雄
http://sharescafe.net/42068772-20141125.html


皆川芳輝 ファイナンシャルプランナー/証券アナリスト グローバルライフプランナーズ合同会社代表


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