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1月12日付けの日本経済新聞に、ビジネスパーソンを対象とした「新たに取得したい資格」として中小企業診断士がトップになったとの記事が掲載されました。

2015年の6位から、大幅に順位を上げたとのことですが、2014年の順位は3位であり、ここ数年、安定して高い順位を保っているといえます。

■中小企業診断士試験の受験者数の推移
これほど人気があるのであれば、中小企業診断士試験の受験者数も大幅に増加していると思われる方も多いかと思います。そこで中小企業診断士協会が発表している統計から、中小企業診断士試験一次試験の受験申込者数の推移を調べてみました。

       申込者数 内民間企業勤務 民間企業勤務比率
2015年度    18,361   10,603     57.7%
2014年度    19,538   11,267     57.7%
2013年度    20,005   11,780     58.9%
2012年度    20,210   12,045     59.6%
2011年度    21,145   12,634     59.7%
2010年度    21,309   12,817     60.1%
2009年度    20,054   12,100     60.3%
2008年度    17,934   10,666     59.5%
2007年度    16,845    9,937     59.0%

2010年度までは順調に受験申込者数が増加していましたが、その後、頭打ちとなり、2013年度からは減少に転じています。

この傾向は、受験申込者の内、民間企業に勤務している割合についても同様で、調査における人気の高さが、必ずしも受験者数の増加に結びついている訳ではないようです。

■なぜ受験者数が増えないのか?
では、なぜ受験者数が増えないのでしょうか?

中小企業診断士試験は、「経済学・経済政策」、「財務・会計」、「企業経営理論」、「運営管理」、「経営情報システム」、「中小企業経営・中小企業政策」の7科目を勉強する必要があり、一説には1000時間以上勉強する必要があるともいわれています。企業に勤務するビジネスパーソンが毎日2時間勉強したとしても、1年以上勉強しなければならず、取得しようと勉強を開始したビジネスパーソンが、まだ試験に申し込みをするにいたるほど学習が進んでいない可能性は考えられるでしょう。

また、取得したいと考え調べていくうちに、中小企業診断士になるためのハードルの高さを知り、あきらめてしまうことも考えられます。中小企業診断士になるためには、上記7科目を対象とした1次試験に合格した後、中小企業診断、及び実務に関する事例に回答する二次試験に合格する必要があります。また二次試験には、口述試験も含まれます。

二次試験に合格したとしても、その時点で中小企業診断士を名乗れる訳ではありません。企業に訪問し、実務として診断、及び助言を行う実務補習を15日以上、受ける必要があります。実務補習は土日、祝日を挟むようにスケジュールされていますが、平日も実施されるため、企業に勤務している場合、有給休暇を取得するなどして対応することになります。

さらに実務補習を終え、晴れて中小企業診断士になった後も、5年ごとに資格の更新登録する必要があります。資格を更新するためには、理論政策研修と呼ばれる座学の研修を5年間で計5回受講し、さらに実際の企業の診断実績を30ポイント以上(1日=1ポイント)取得しなければなりません。

以上のように、ビジネスパーソンにとっては、中小企業診断士の資格の取得・維持は、かなり負荷が高く、勉強を始める前にあきらめてしまうビジネスパーソンも少なからずいると考えられそうです。

■中小企業診断士制度とビジネスパーソンのニーズのギャップが課題か?
そもそも中小企業診断士制度は、中小企業支援法第十一条に基づき、中小企業者がその経営資源に関し、適切な経営の診断、及び経営に関する助言を受ける機会を確保するために中小企業の経営診断業務に従事する者を登録することが目的の制度です。

ところが、中小企業診断士協会が平成17年に中小企業診断士を対象に実施したアンケートによると、アンケートに回答した中小企業診断士のうち、民間企業に所属する中小企業診断士の割合は、54.5%と過半数を超えており、また中小企業診断士協会東京支部が実施したアンケートでは、「資格取得の動機」としてあげられている回答のトップ3が「自己啓発のため」、「社会的評価を得るため」、「独立開業するため」となっています。

中小企業診断士を取得する目的が、中小企業診断士制度が本来求める中小企業の経営診断業務に従事するという主旨とは異なっていることが分かります。このように制度と受験者の思惑にはかなりのギャップがあり、この思惑の違いが資格の取得・維持要件の負荷につながり、受験申込者数の推移に少なからず影響を与えているのかもしれません。

■まとめ
経営に関する総合的な知識を持つビジネスパーソンとして評価される資格は、MBA(経営学修士)か中小企業診断士であることは、間違いないでしょう。

とはいえMBAは、大学に通うために、現在の職を辞める必要があったり、例え辞めないとしても数年間、仕事が終わった後や休日の時間を勉強に当てることになります。一方の中小企業診断士も相当の勉強が必要であり、試験制度も更新要件も企業に勤務しているビジネスパーソンには負担感が大きいことは前述したとおりです。

筆者も中小企業診断士であり、企業に勤務していますが、中小企業診断士の資格取得を通じて学んだ経営に関する総合的な知識は、多くのビジネスパーソンに学んで欲しい知識であると確信しています。MBAや中小企業診断士以外に、ビジネスパーソンに負担の少ない経営に関する資格が必要とされているのかもしれません。

《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.ht


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