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日本企業同士の合併(M&A)には多くのケースで「対等の精神」による合併・統合が謳われる。これは2社の上下を決めずお互いがお互いを尊重しあって協力していこうという意思を示したものであると考えられ、日本の美学に則ったものと想像するが、そこには様々な弊害が隠されている。今回は先日経営統合を発表したファミマとユニーの例をもとに、その弊害の可能性を考察していきたい。

■コンビニ業界の勢力図
現在のコンビニ業界は、売上高で1位セブン、2位ローソン、3位ファミマ、4位サークルK、5位ミニストップである。また、店舗数でもセブンが1位、1店舗当たりの平均売上高でもセブンが1位と、質・量の双方でセブンの強さが際立っている。
今回の業界3位ファミマと、4位サークルKを運営するユニーの統合により、売上高では業界2位、店舗数ではセブンを抜き業界1位に躍り出ることになる。(既存店舗数と売上高が継続する前提)

■ファミマとユニーの統合目的 
通常企業の合併(M&A)目的には、スピードと効率性、シナジー効果(コストシナジー、収益シナジー等)、時間の節約・投資の効率化、権利の取得などがある。両社によると、今回の統合目的は、成長力と収益力の向上、ノウハウの共有による競争力強化であるとの発表がされている。また、統合後5年以内の目標売上高は5兆円と、現在の2社の合計売上高を大きく上回る将来像を描いている。成長力の向上は1+1=2ではなく、それを2以上に高めていくことを意味していると考えられる。つまりは単なる規模の拡大ではなく、質の向上である。

 また、競争力強化の方法としてノウハウの共有があげられているが、これは両社がこれまで培ってきた商品調達、商品開発、物流等の連携による効率化によるものとされている。ここには2社の重複部分を整理し、規模の経済を活用したコスト削減メリットが目的と捉えられる。質と効率化を追求することで収益力を向上させ、更なる成長を求めていくということが今回の2社の統合目的であると理解できる。

■目的に対し「対等の精神」が及ぼす弊害
それでは、これらの目的に対し、両社が掲げる「対等の精神」が及ぼす影響はどのようなものがあるのだろうか。一つ目に考えられる弊害は人事面での影響である。2社が1社となると、当然ながらポスト数が減少することになる。(社長は2人から1人になることがその代表格)これによって、通常は不要なポストが減り、コスト削減効果が見込まれる。しかし、ここで「対等の精神」を持ち込んだ場合、想定される帰結はコスト削減効果を生み出さない。

2社の統合の場合、同じような部署に同じポストが存在する。例えば経理部長ポストや人事部長ポストなどである。両社の部長の体面を保てば、人事第1部、第2部ができあがるであろうし、それは課長ポストなどにも同様である。うまくポストを1つに統合できたとしても、今回はA社出身者を部長に、次回はB者出身者をと、暗黙のルールができあがる。これでは優秀な社員を登用できず、企業の成長を最大化することは叶わない。そして、このような制度の下では本当の企業文化の醸成・統一は不可能である。

 2つ目の弊害としては、意思決定の遅れが懸念される。対等の精神に基づいて、本当に平等を実現されたとしたら、取締役は50-50、執行役員も、部長も、課長も。このような人事構成で進められる意思決定の会議は、本当に優良な判断ができるのか非常に疑わしい。または、常に票が割れることになり、意思決定の遅延が発生することも想像に難くない。

 3つ目の弊害は、社員の意識である。1つ目の人事面にも関係するが、経営トップが対等だと唱えると、どちらの社員も平等に扱われることを期待する。しかしながら、1つ目、2つ目の弊害から考えて、全て対等に扱うことは極めて困難であり、非合理的である。そして、その期待が裏切られると社員のパフォーマンスは低下する。吸収合併された力の弱い会社の出身者にとって、自分の未来に明るい姿を描くことは難しいと言わざるを得ない。そのご、本気で「対等の精神」に期待した社員の失望の影響は企業の業績に表れてくるはずである。

■対等の精神はあり得ない
 このように「対等の精神」を謳った合併・統合には様々な問題が想定され、その結果、機能不全、重複の排除遅れ、技術・情報などの共有遅れによるコスト削減効果の減少、収益機会の喪失を引き起こす。対等の精神が存在することで、当初想定していた統合効果を台無しにするのである。
 
それでは、対等の精神とは誰のためのものなのか。経営者同士の美学か、メンツか、被合併会社の社員のためなのか。少なくとも合併により更なる企業価値の向上を得るべき株主のためであるようには思えなく、積極的に発信すべきものかどうか疑問である。目指すべきは統合効果を早期に得るための合理的かつ積極的なPMI(Post Merger Integration)であり、それが重複の解消、販路の共有化を実現することで、その先のコスト低減と収益改善を推進し、思い描く統合後の明るい未来を実現する力につながるのではないだろうか。

【参考記事】
■フェラーリの戦略にみる企業価値経営(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47203706-20151215.html
■地方創生時代に輝く地方企業の挑戦と秀逸な競争戦略(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/46572214-20151014.html
■ブルーボトルコーヒーに見る戦略ストーリー「人気のブルーボトルコーヒーは何を捨てたのか!?」(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45855247-20150808.html
■ステーキけんの社長も間違える、マクドナルドの原価96.1%について
http://sharescafe.net/44569762-20150503.html
■ライザップと行列ができる本屋の共通点
http://sharescafe.net/44050998-20150331.html

森山祐樹 中小企業診断士


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