茶道

3月に入ってからの新卒就活広報解禁で、大々的に企業説明会や合同説明会が動き出しました。なかなか年上の社会人と接する経験が少ない学生たちは、皆緊張してこうした交流の場に臨みます。そんな際に気になるのがマナー。「ノックは何回」「お辞儀の角度は・・・」といった情報が乱れ飛ぶ時期でもあります。マナーを知ることは社会人として必要です。しかしどこまでやる必要があるのか、戦略的な就活を指導する立場で答えます。

■誰を対象にしたマナー?
国際的なマナー講師のような方がノックの回数や挨拶の仕方、目線などを指南する記事が、就活シーズンは特に目立ちますが、これって誰をターゲットにしているのでしょう?就活学生といっても理系と文系、上位校から中堅校、底辺校までさまざま。

世の中にある就活本やWebサイトはほとんどが文系の学部生を想定しています。頭数からして圧倒的多数は私立文系学部生のはずですから、自己アピールではバイトやサークルエピソードばかりが取り上げられていますが、では理系の修士学生はこれと同じアプローチで良いのでしょうか?

修士課程進学率が9割を超えることも少なくない、上位校の理系修士がサークル活動など出来るはずありません。結果として高校時代の文化祭の話を書いてくるような、的外れの理系修士学生によるエントリーシートも実際あります。マナーも同じで、何のため、誰のためのマナーなのかを理解しなければ意味がありません。


■採用基準は何か
技術者や研究者として採用するのと、営業職や接客業務で採用する際の基準が同じはずがありません。採用基準はそれぞれの企業が人事政策にのっとって、各々策定するものであり、職種問わず皆同じわけがないのです。

文系と違って実験や研究に時間を多くとられる理系大学院生にとって、ノックの回数やらお辞儀の角度などが採用の基準になるとは思えない一方、サービス業に力を入れている大学の学生が、麗しいマナーでふるまえたらどうでしょう。そうしたマナーやセンスを重視する企業にとって、ぴったりの人物像になるのではないでしょうか。

就活においてはこのように絶対的な、統一の採用基準などないのです。それぞれの採用方針によって、求められるものも違えば、評価されるポイントも違います。少なくとも企業である以上、成果をもたらせてくれる能力こそが評価され、その能力や能力になるポテンシャルを持っていると感じさせることが重要になります。


■ビジネスプロトコール
ビジネスプロトコールという言葉が、グローバルな場面でしばしば聞かれるようになりましたが、ビジネスにおけるエチケットのようなものと理解するのが良いと思います。それを知らなくても犯罪ではないが、エチケットを知らない人=野蛮な人=ビジネスを一緒にしたくない人・・・と思われないため、最低限わきまえておくべきものと考えておけば良いでしょう。

マナー研修で教えられるものも、こうしたビジネスプロトコールの一部だと思いますし、その意味で無駄だとか無意味だとは全く考えていません。ただし、それが新卒で就活する学生「すべて」に必要かといわれれば、当然NOです。

マナーだけでなく、メールの作法やコミュニケーションのルールなど、ビジネスプロトコールは階層的なレベルで成り立ちます。社会人でもその身に着けているレベルは異なるのですから、学生が完璧にマスターすることなどできませんし、必要もありません。

企業の本社で開催される説明会にTシャツで参加するのは非常識だと思いますが、企業が大学に来て行うキャリアセミナーであれば、実験や作業の合間に参加した理系の学生が白衣や作業服であったとしても、それだけでNGとなることはないでしょう。むしろ研究熱心な学生が来てくれたと歓迎する企業すら十分あり得ます。TPOは重要ですが、一般論のTPOではなく、採用(=就活)という条件下でのTPOを判断する必要があります。


■自分に求められるもの
大学生だから、就活だから、全員が同じものや素養が求められるのではなく、その応募先企業や職務、さらにはその要求される能力の水準により、求められるものは当然異なります。センター入試のような、確定した唯一絶対的正解などない世界がビジネスなのです。

企業が採否を決めるのは、その学生が採用する理由満たしているからです。マナーを身に着けている学生を欲しい企業には、それが採用理由になります。しかしマナーよりももっと別に評価軸を設定している企業が圧倒的なはずで、そうした企業の採用理由を満たせなければ、どれだけマナーができていても採用されることはりません。

最低限必要なマナーは、今の就活サイト・就職ナビなどを見れば簡単に情報を得られます。それらがわかれば十分であって、肝心の自分が評価されるべきもの・素養・能力をしっかり伝えなければ、内定には至れません。志望する企業や業務が何を求めるのか、総合商社が求めるもの、外資金融が、研究開発職が、サービス業・小売業が、肉体労働や芸術、伝統工芸など、それぞれ職務や業界が違えば求められる要素も違います。

就活が本格的に始まり、あわただしい環境になってきている学生の皆さん。たとえ「就活に必要」だといわれても、何も考えずに鵜呑みにするのではなく、なぜ必要なのか?必要だとしてもその重要度は?自分はその対象なのか?しっかり検証して下さい。ネットを中心にあふれかえる就活情報に流されるのではなく、自らが判断することこそ、採用に至るには、何よりビジネスの世界で活躍するには必要な能力です。


【参考記事】
■コミュニケーション能力と丸暗記(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://shachosan.rm-london.com/?eid=638064
■ソーシャルメディアを使う資格(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850304
■「手書き履歴書で人柄がわかる」という勘違いへの対策(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/46742045-20151030.html
■学生が企業に求める真の情報(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/47903526-20160224.html
■内定辞退の作法(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html

増沢隆太 人事コンサルタント 株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役


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