109175


先般、経歴詐称で話題になったイケメン経営コンサルタントが話題になったが、もともと「経営コンサルタント」を名乗るために、何かの資格や経歴が必要なわけではない。

何かの学位や資格を持っているからというだけで企業からのコンサルティング依頼がくるわけではない。その意味ではまさに実力主義の仕事だと言え、まただからこそ大胆な経歴詐称も露呈することなく、長期にわたって「経営コンサルタント」を名乗ることが可能になったと言える。

■地方における経営相談の現場風景
前記のような経営コンサルタント業とは少し観点が変わるが、いわゆる地方で起業・経営支援をしていると、中小零細企業あるいは個人事業主から、様々な経営相談が持ち込まれる。これも広義での「経営コンサルタント」であろう。

地方の場合、一般的には公共の経営相談窓口があり、事業主はまずそこに相談をもちかけ、案件に応じて各種の専門家を紹介されるケースが多い。専門家といっても様々だが、相談者がWEBデザイナーを探しているとか、士業を紹介してほしいなど、具体的な要望がある場合はまだわかりやすい。

相談でもっとも厄介なのは、「儲からないので何とかしてくれ」というもので、この相談に応える難易度は極めて高い。

熱心な事業主などは、公的窓口への相談に前後して、様々なセミナーや書籍を通じて経営を学んでいることもある。中には有名なコンサルティング会社の高額な研修等もあるが、残念ながら、地方の商店主の「儲からないので何とかしてくれ」という悩みに対しては、有能なコンサルタントであっても応えられるというわけではない。

地方で経営相談を持ちかけられる中には、「自分のところではこんな良い商品を売っている。しかしなかなか販売成績が挙がらない。何かいいセールストークを考えてマニュアル化してもらえないだろうか」というような内容もある。

残念ながら、儲かっていない商店主からセールストークを考えてくれと相談されるのは、モテない男性から「女性を誘うためのトークを教えてくれ」と相談されているのに等しい難易度である。

■小さな事業主とユーザーとの距離
一般に、会社が大きくなればなるほど、経営者とユーザーの距離も比例して遠くなるだろう。逆に小さな事業主の場合、ユーザーとの距離はゼロに近い。

例えば全国に販売網を持つ会社が新商品を開発する場合、経営コンサルタントの指導がもたらす効果は期待できる。市場をセグメンテーションして、対象となるターゲット層を絞り、自社商品のポジショニングを設定して~、というオーソドックスなマーケティング理論の導入が検討されるだろう。それを商品企画、プロモーション、販売などの各部署間で一気通貫させ、ヒットを狙う。この場合には、コンサルタントの果たせる役割は大きいかもしれない。

しかし小さな事業主の場合、自らが商品を選び(あるいは造り)、広告を考え、販売活動まで行う。商品販売の企画部署と、ユーザーに接する販売員とは、直結している。というか全て事業主自身である。

従って、いわゆるマス・マーケティングよりも、1対1の局面を打開するための手法が要求される。そしてそれは前出のモテない男性と同様に、”セールストークを考える”という技術論で片付くものではない場合がほとんどだ。

なぜならユーザーとの距離が近すぎて、事業主の商品販売に対する動機が、ユーザーから見えてしまうからである。もちろん事業は営利目的なのだから、しっかり仕事して適正な利益を得ること自体は問題ないのだが。

■学んだ理論を役立てられないのは何故か
「理論」は、国語辞書によれば<個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系>とされる。実践から独立した机上の空論などではなく、まして現実と異なるものではなく、実践における成功パターンを分析したものであり、言うまでもなく実践に応用が可能なのである。

しかし実際には、小さな事業主などにとって、せっかく学んだマーケティング理論や、経営論が役立てられにくい。むしろ「理論と実践は異なる」と言われることが多い。確かにものごとは理論通りに進まないのだが、しかしこの言葉は、勉強嫌いの現場主義者によって言い訳に使用される悪しきケースもある。

先にも述べたように、理論は実践に応用が可能なのだ。しかし事業主自身が、経営者として理論を活かす水準に達していない場合、たちまち理論は使い物にならないくなる。ユーザーに動機が見えやすい小さな事業主の場合、ユーザーはその姿勢を実に繊細に感じ取ってしまう。

私物がカウンターに置いてある飲食店。
社長がゴルフに夢中の工務店。
電話応対が無愛想な美容室。
店内で商店街の行事の打ち合わせをしている小売店。
ノーネクタイに慣れてしまった保険販売員。

事業主が理論を「楽して儲かる方法」と勘違いして、もっとも重要な経営者自身の資質向上を後回しにしているケースが多い。地方の経営相談の現場などで感じるのは、極論すれば「楽に儲かる方法を考えてくれ」という空気だ。

若い頃に読んだカリスマ経営者の本に、「商売は自分だけが儲かろうとしてはいけない、世のため人のためになることを考えなさい」、などと書いてあり、当時は失礼ながら説教臭いことだと感じたものだが、今にして思えば究極の真理であろう。

【参考記事】
■中小零細企業に必要な「仕事がうまい」人材
http://sharescafe.net/48242519-20160331.html
■地方の中小企業経営者が現場から見た「女性活躍」のリアル
http://sharescafe.net/48171281-20160323.html
■ショーンK氏の経歴詐称は、インチキ住宅ローンが詰まったモーゲージ債と知りながらCDSを売るようなもの
http://sharescafe.net/48174373-20160324.html
■「ショーンK氏問題」から考える、コンサルタントの学歴詐称
http://sharescafe.net/48110506-20160317.html
■世界最低レベルの「社会人の学び直し」比率
http://sharescafe.net/46989472-20151124.html

玉木潤一郎 経営者 株式会社店舗応援団 代表取締役

この執筆者の記事一覧
このエントリーをはてなブックマークに追加


関連コンテンツ
シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。




執筆者プロフィール