65b6bc01cd50120dcd983d803925500b_s
14日に震度7の前震、16日には震度6強の本震、その後も余震が相次ぐ熊本地震では、40人超の死者と9万人超の避難者を出し、今もなお家屋倒壊や孤立などの被害が相次いでいます。被災された皆さまに、心からお見舞いを申し上げます。

電気、水道などのインフラが断たれ、家屋の損壊や家財の散乱、そして避難生活など、被災された方の生活には大きな支障が出ています。政府は17日中に70万食分の支援物資を手配したものの、被災地では食糧や水などの不足が続いています。熊本県内のスーパーやコンビニでは品薄状態が続き、テレビの取材に答えるある女性は、「昨日水を買ったがまだ足りなくて、また買いに行かなければならない」と話していました。

このような被災直後の生活や、やがて生活再建をしていくうえでは、食糧や日用品などを買うお金が必要ですが、災害の混乱下で現金やキャッシュカードなどを失くした、あるいは自宅に置いたまま避難してきた方も少なくないと考えられます。

そこで、災害時にお金を確保する方法をまとめてみたいと思います。

■キャッシュカードがなくても預金は引き出せる
銀行・信用金庫などの金融機関は、内閣府が「災害救助法(応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序の保全を図るための法律)」を適用した地域においては、キャッシュカードや預金通帳、印鑑がなくても預金を引き出せる対応を行います。

今回の熊本地震でも、県内45の市町村に災害救助法が適用されました。預金の名義人本人が銀行などの窓口に行って、本人確認書類を提示すれば、キャッシュカードがなくても一定の金額まで引き出せます。また、印鑑がない場合には拇印で代用するなどで対応してもらえます。

ネット銀行では、コールセンターへの電話で本人確認ができれば、一定額までほかの金融機関の本人名義の口座に振り込むなどの対応をしています。

本人確認書類として有効なものは、運転免許証、健康保険証、パスポートなどです。もし、運転免許証などの本人確認資料も失くしてしまっていても、窓口で相談すると対応してもらえることがあります。東日本大震災の時には、暫定的な措置として、氏名・住所などを伝えて本人であることを申告すれば、預金を引き出せる対応がなされました。

本人確認書類には、「罹災証明書」を代用できることもあります。自治体の窓口が機能し、被災状況の現地調査が行われる段階になってからにはなりますが、被災した家屋に対して発行されます。これは、住宅の再建や公的給付などの被災者支援を受けるための証明書ですが、預金の引き出し時に本人確認書類としても使えることがあります。

■現金は破れていても使える
自宅が土砂崩れや火災などに見舞われ、置いていた現金が汚れたり破れたりすることも考えられます。しかし、お金がきれいな状態でないときも、一定の条件を満たせば新しいものと交換してもらえます。

日本銀行の引換基準によると、お札は、券面の3分の2が残っていれば、もともとの金額の全額に交換してもらえます。5分の2以上、3分の2未満が残っていれば、もともとの金額の半額に交換してもらえます。硬貨は、模様が認識できれば、もともとの金額の全額として新しい硬貨に引き換えてもらえます。

新品に交換してもらうには、日本銀行の本支店か一般の銀行などに、本人確認書類とともに現金を持ち込みます。(なお、熊本県には日本銀行熊本支店があります。)本人確認書類は運転免許証、パスポート、年金手帳や健康保険証などです。交換の手続き時には、氏名、住所、電話番号を書く必要がありますので、記入する内容と同じ内容が書かれた本人確認書類があるとスムーズです。

汚れた、あるいは破損した現金の交換は、災害時でなくても対応しています。日本銀行の引換基準では、お金をできるだけ元通りにしておくことを推奨しています。やぶれた紙幣は、できるだけ元の通り貼り合わせる、貼り合わせるときには、お札の番号や模様が同じものを組み合わせる、濡れているときはできるだけ乾燥させるなどをすると、円滑に交換できるようです。

硬貨は、汚れがひどいときには水洗いをして乾燥させる、金属やプラスチックなどが付いてしまっているときは、できるだけ取り除くと良いようです。

火災などでお札や硬貨が焼けて劣化しているときには、触ると逆に壊れてしまうこともあります。そんなときには、できるだけ原型を崩さないよう、箱に入れるなどして持っていきます。無理に元通りにしようとして、壊れて粉々になってしまうと、交換してもらえないことがあります。

■災害時には柔軟に対応してもらえる可能性も
上記の基準は一般的なものです。財務省と日本銀行は、被災者の状況に応じて「きめ細かく弾力的・迅速な対応」をするよう各金融機関に要請していますので、条件を満たしていなくても、状況により対応してもらえる可能性もあります。

また、これは日本銀行の交換基準ですが、この条件を満たしていれば、紙幣や硬貨が汚れたり破れたりしていても、もともとの100%、あるいは半分の価値の現金とみなされます。ですから、お店によっては新品に交換していなくても利用できるかもしれません。

預金を引き出すには、銀行など金融機関の窓口が営業しているか、ATMが稼働している必要があります。金融機関の建物が被災していたり、停電していたりすれば、預金を引き出せない恐れもあります。まして交通インフラが麻痺していれば、銀行やATMへ行くこともままなりません。もし多少破損していても、現金が手元にあれば、わざわざ預金を引き出さなくても済むかもしれません。

■被災地外に住む人が改めてできる災害対策
一方で、被災地外に住む立場としては、災害時、特に被災直後の初動体制を整えておくうえで、以下も検討したいものです。

■1:現金を持っておく
大都市圏など、電子マネーやクレジットカードでの決済が普及している地域では、日ごろの買い物はキャッシュレスで済ませることも少なくありません。それゆえ、あまり現金を持ち歩かない人もいます。

しかし災害で停電をすると、電子マネーやクレジットカードは使えない恐れがあります。自動販売機など、災害時にはバッテリーで稼働できるものもありますが、現金がなくて買い物ができないと、被災時に速やかな対応ができないかもしれません。いざという時に備えて、日ごろ持ち歩く財布や非常用持ち出し袋に現金を常備しておくと安心です。

常備する現金は、紙幣だけでなく硬貨もあると便利です。被災後のスーパーやコンビニはものを買い求める人で混雑しますから、釣銭を出してもらう時間がかからない方が良いですし、10円玉があれば、公衆電話で家族などの安否を確認することもできます。

ただし、あまり高額な現金を持ち歩いたり、非常用持ち出し袋に入れてすぐに取り出せるところに置いたりするのは、防犯上の不安があります。ですので、3~4日分の生活費がひとつの目安です。被災後3~4日経過すると、支援物資などの到着が見込めるためです。今回の熊本地震では、14日に震度7の揺れがあった3日後の17日に、政府が70万食分の支援物資を届けました。

また東日本大震災のときには、被災により寸断されたルートのうち多くが開通し、支援物資輸送や物流の車両が通行できるようになったのが、震災の4日後でした。

被災の状況は災害の大きさや地域によって異なりますし、支援物資が到着する時期は地域によって異なります。また、支援物資が来たからといって、生活必需品のすべてが満たされるわけでもありません。さらにいえば、お金があってもものがないなど、実際の被災後の生活ではさまざまな問題があると考えられます。だからこそ、持ち合わせの現金が足りないがために強いられる不便を、日ごろの意識で防ぎたいものです。

■2:本人確認書類を持ち歩く
災害時には、けがをして医療機関を受診したり、預金を引き出したり現金を交換したりと、さまざまな場面で本人確認が必要になります。災害救助法の適用を受けた地域では、上述のように本人確認書類がなくても預金の引き出しなどに応じてもらえる、健康保険証が手元になくても保険適用で受診できるなどの措置が取られます。

とはいえ、何らかの本人確認書類があれば、手続きがスムーズに進む可能性は高くなります。生活の基盤が崩れ、社会のインフラが混乱しているなかでは、住む場所、生活必需品の確保、体調管理など、生活のあらゆるシーンで負荷がかかります。そんな状況下で、本人確認の手間だけでも減らすことができれば、少しはストレスが軽減されるのではないでしょうか。

なお、マイナンバー制度は、被災者支援での本人確認作業の効率化をひとつの目的としています。被災者の方向けの支援制度には、公的年金の保険料免除、健康保険料の免除、所得税の軽減措置、各種被災者向けの融資制度、住まいを再建するための支援金を受給する被災者生活再建支援制度などがあり、これらを利用するにあたって、マイナンバーが活用されることになっています。

今のところ、熊本地震での被災者に向けた具体的な支援の情報や、マイナンバーによってその手続きがどのように効率的に行われるかについては、あまり報じられていません。今回はマイナンバー制度開始後、初の大規模災害ともいえるため、最初の事例になるのでしょう。

熊本を中心とした災害が一日も早く落ち着き、被害に遭われた方々が生活再建できることを心より望みます。そして、地震大国に生きる私たちは、いざ天災に見舞われたときに落ち着いて行動し、生活上の困難を少しでも抑えることができるよう、日ごろから意識しておきたいものです。

【参考記事】
■なぜ地震で家が燃えても火災保険はもらえないのか?
http://sharescafe.net/41454305-20141020.html
■噴火では生命保険はもらえない? 御嶽山の件に学ぶ、賢い保険の入り方
http://sharescafe.net/41236837-20141007.html
■マイナンバー制度が始まると預金に税金がかかるのか?
http://sharescafe.net/45314819-20150626.html
■行方不明の家族の保険金は「死亡診断書」がなければもらえない 御嶽山不明者に証明が発行されます
http://moneystep.co/archives/514
■保険に入るのは結婚直後がベスト! その本当の理由
http://moneystep.co/archives/223

加藤梨里 ファイナンシャルプランナー マネーステップオフィス株式会社代表 


この執筆者の記事一覧
このエントリーをはてなブックマークに追加




関連コンテンツ

シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。




執筆者プロフィール