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世の中の人たちは様々な指標で評価されています。そして、評価指標が定まれば、その評価指標で高得点を得るために対策を講じるのはある意味当然の動きであると考えられます。

しかし、教育の世界は少し異なるようで、試験対策を行うことは不適切であるとの事です。報道では

 馳文部科学相は20日、今年の全国学力テストで「一部の学校が良い成績を取るために過去問題を解かせる、不適切な試験対策を行っていた」と明らかにした。

中略

 今年の「全国学力テスト」は19日に行われたが、馳文部科学相は20日、一部の学校で、良い成績を取るために、授業時間中に過去問題を解かせる不適切な試験対策が行われていたことを明らかにした。日テレNEWS24 2016年4月20日


とされており、過去問題を解かせるという不適切な試験対策が行われていたとされています。

なお、学力テストの対策が不適切かどうかについては筆者は判断する立場にはありません。しかし、馳文部科学相の見解に従い、それが不適切であるといった前提に立って本稿を記述します。

■親としては
子を持つ親としては子どもの通う学校の「全国学力テスト」の成績は当然気になります。少しでも良い教育を受けさせたいと考えるのが人情ですから、やはり数値化されている成績といった指標には最初に目が行きます。

また、そのようになると、学力テストは学力の一部しか測定することができないものであると説明されても、自分の子供が通う学校の成績は気になるものです。

一般の保護者は教育の専門家ではありませんから、成績という定量的な指標が提供されれば、それをもって学校の教育の質を判断してしまうと考えられます。

その結果、もし学校ごとの成績が公開されるのならば、学校の先生たちの事実上の評価指標となってしまうでしょう。

そうすると、学校ごとの成績が公表されるのならば、その成績を向上させる対策を行うインセンティブは常に生じてきます。

■やはり過去問題の攻略が
不適切か否かは別として、試験対策はやはり過去問題の攻略が王道になると考えられます。資格試験でも過去問題を解いて、出題形式に慣れたり出題傾向をつかむのが王道です。

過去に繰り返し出題された内容は、今後は出題されないのではなく、重要な論点なので切り口を変えて繰り返し出題される内容であると考えられますし、試験の出題形式に慣れておく事も非常に得点を伸ばすために役立ちます。

このように資格試験であっても過去問題での対策が重要なのです。まして、全国一律で行い教育の改善を図る目的で行っている「全国学力テスト」は、選抜試験ではありません。また、時系列で教育の効果を比較するといった目的も持っているはずです。

そのように考えると、出題形式はほぼ固定になると考えられますし、出題傾向もある程度一定にする必要が生じるでしょう。

その結果、過去問題を使ったテスト対策は資格試験の対策以上に強い効果を生むはずです。

■試験対策を行うインセンティブがあり方法論もわかっています
「全国学力テスト」の結果をある程度公表すると、学校ではそのテスト対策を行う強いインセンティブを生むことが容易に想像できます。

そして、情報公開の大義名分のもと、情報公開を求める圧力は増すことはあっても減ることはないでしょう。その結果、各学校がテスト対策を行うインセンティブは強まり続けます。

また、試験の性質上、過去問題を用いた対策が効果的であることも上記で述べた通り想定することができます。

このように、現状は試験対策を行うインセンティブがあり、またその効果的な方法諭もあるといった状態になっていると考えられます。

このような状態で、それは不適切だからと、テストで良い成績を取るための過去問題を使った試験対策を禁じたとしても、一部の学校でそのような対策が行われることは、十分想定される事であると考えられます。また仮に、このテスト対策を防ぐために、過去問題を使った試験対策を完全に禁止したとしても効果は薄いでしょう。

というのは、過去問題の形式に類似したオリジナルの想定問題を繰り返し練習させるとか、毎日の宿題に過去問題の形式を利用した問題を出すなど、通常の指導の一環として試験対策を組み込むといった方法が当然考えられるからです。

そのため、抜本的な対策としては「対策を禁止する」といった掛け声ではなく、試験対策自体を行いたいと考えるインセンティブをなくすことであると考えられます。

■インセンティブをなくすためには
純粋に学習成果を測定してカリキュラムの改善に役立てるといった目的ならば無作為に抽出した学校やクラスを対象としたサンプルテストで十分なはずです。

また、もし全数調査をどうしても行うのであれば、その結果が学校の評価に結びつかないようにする必要があります。

いずれの場合においても、学校名を公表しなければこのような不適切な対策を取るようなインセンティブは生じないはずです。

■不適切な行為というのならばそれを行うインセンティブを無くすか、それを行えなくする必要があります
確かに不適切な行為をしない方が望ましいのは言うまでもありません。しかし、不適切な行為を行うインセンティブは年々大きくなるにもかかわらず、その行為を行わないようにといった掛け声だけというのは酷なように感じます。

そうではなく、インセンティブ自体をなくす方法や、そもそも対策の行いようがない形式で試験を実施する方法を考える必要があるのでしょう。

どうしても評価基準が定まればその基準に最適化された行動を人はとってしまうものです。教育分野という高度な教育訓練を受けた人たちが集まっている分野であってもこれは変わりません。

そして、そのようなインセンティブを放置していて現場で対策を行うのはけしからんといった所でどうにもならないのです。

全国学力テストの試験対策を行うことが不適切なのであれば、その不適切な行為を行うインセンティブをなくすこと、もしくは、その不適切な行為を行う余地を無くすことが求められているのではないのでしょうか?

【参考記事】
■子育て世代、事業者といった社会を支える人を狙い撃つ軽減税率に大義はあるのか(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://okazakikeiei.com/2016/04/24/keigen/
■キングジムの型破り開発術を中小企業が単純にマネしてはいけない理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44623331-20150507.html
■もう起業貧乏にはならない!専門家のアドバイスを『タダ』で利用し起業する方法(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42751168-20150106.html
■自動運転技術が確立されたとき、中小企業にとってチャンスが訪れます(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48236024-20160331.html
■その言葉を使っているのはだれ?SMAP騒動で話題となった嫁ブロックと言う言葉から考えるポジショントーク(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://okazakikeiei.com/2016/04/24/yome/

岡崎よしひろ 中小企業診断士


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