えすこる48

先日22日に、2016年版小規模企業白書が中小企業庁から出ました。平成26年6月に成立した小規模企業振興基本法以来、2冊目となります。中小企業診断士として仕事をしていて、規模の小さな企業こそ、時間に制約条件の抱えることの多い女性にとって働きやすいことがある、ということを実感している日々ですが、これを裏付けるデータが掲載されていました。

■日本の企業数の85.1%を占める小規模企業
まず、「小規模企業」ですが、中小企業基本法によると中小企業の中でも製造業で20名以下、それ以外の業種では5名以下の従業員をようする企業を言います。こうした本当にごく小さな規模の企業が日本の企業数の85%を占めているのです。

この数値、どうお感じになるでしょうか。日本は世界に名だたる大企業がけん引している、というイメージでとらえられがちですが、内実は9割近くがごく小さな身近な企業で成り立っています。こうした企業はとかく大企業に比べると資金力や人材の不足、といった点がクローズアップされ、就職活動などでも選択肢から漏れがちです。でも実は、これからの日本でこそ、柔軟な働き方をしやすいという点で再就職先にぜひ加えてほしい企業なのです。

■出産・育児からの復職女性の就職先は4割が20人未満の企業
冒頭に挙げた小規模企業白書第2部「小規模事業者の未来」では、業績傾向のよい小規模事業者の特徴等として、女性の就業環境が取り上げられています。それによれば、新卒時に比べると復職時には規模の小さな事業者が選ばれています。実に復職女性の4割が、20人以下の企業に就職しています。

また、同白書では、中規模企業と小規模企業で「女性活用のための取組の制度の整備状況」というデータが掲載されています。いわゆる「育休」や「産休」といった制度、一度辞めた人を再雇用する制度、勤務時間の短縮、といった制度については中規模企業との差が開いていますが、一方でフレックスタイムや勤務時間の柔軟化や仕事量・配置・分担等の調整といったところは中規模企業との差があまりない項目になっているのです。在宅勤務やサテライトオフィスの導入にいたっては、小規模企業のほうがむしろ整っている、と回答している女性従業者が多いという結果になっています。

■働き続けるのに本当に必要なのは「使われない」制度より多様な働き方を認める風土と評価
こうした働き方を実践している小規模企業も実際に存在しています。

たとえば、従業員数がパート社員も含めて8名、内7名が女性である訪問介護事業者さんがあります。1時間単位で取得できる年休制度や一人の利用者さんを複数の従業員で担当すること、個人研修費を負担し、研修結果を職員間で共有するなど、さまざまな取組を行っています。

また、従業員数20名、内女性が15名というクリーニング業を営む企業では、繁忙期に残業が発生しないように閑散期からスタッフ人員に余裕を持たせてシフト調整で対応をしたり、どの業務に就くかをスタッフ一人ひとりとの面接で柔軟に対応する、といった施策を展開しています。

両社に共通するのは、
①それぞれにいろいろな事情を抱える人がいることを経営者が理解していること
②こうした仕事量の増減を「お互い様」と思える風土づくりに尽力していること
③仲間の時間調整をお互い様として積極的にシフトに入る協力的で、成果を出す人を評価していること
です。

こうした取組は、規模が小さく、一人ひとりの事情を把握しやすい組織であるほど「見えやすい」ものであるともいえます。一律で法定以上の休暇制度、たとえば「3年間は育児のために休めますよ」という制度は確かに人材不足になりがちな中小企業はなかなかとりづらいかもしれません。しかし、一人ひとりが抱える家庭や自分の健康の事情は異なりますし、年々、変化していくものです。それを把握し、お互いでカバーできるような仕事の仕方をし協力的に成果を出す人たちを評価すること、そうした風土を創っていくことが経営者には求められます。

■男女問わず制約条件を抱える人たちが増える将来に備え、企業側も環境整備とアピールを
労働者数301人以上の企業では、女性活躍推進法で認定されれば、その取組度合がわかる「えるぼし」マークがつけられるようになりました。中小企業、小規模企業ではまだこうした義務はありませんが、時間制約を抱えていることの多い女性にとって働きやすく、仕事にも充実感を覚えることができる小さな企業はたくさんあります。ぜひ、女性は再就職の際、ハローワークで探す際などにこうした小規模企業も候補に入れてよく検討し、本当に自分が望む働き方ができる企業を見つけてほしいと思います。

近い将来は男女問わず、様々な理由で時間制約をかかえる人たちが増えます。こうした人材をいち早く見つけるためにも、小規模企業の経営者側も、法的に義務付けられてはいませんが、働きやすい自社の環境を整えるとともに、アピールする機会として今から法を活用することができるのです。

《参考記事》
■新しい働き方で、企業と個人双方がつけなければいけない力。(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45172807-20150614.html
■2015年は長時間労働崩壊元年に (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42734491-20150104.html
■結局、「女性活用」って何すればいいの?(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html
■長時間労働がなかなか減らせない会社への処方箋。(小紫恵美子 中小企業診断士) 
http://sharescafe.net/48208264-20160327.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206

小紫恵美子 株式会社チャレンジ&グロー代表取締役 中小企業診断士


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