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今回の熊本地震。家屋の倒壊で亡くなったケースで、その半数の家屋の耐震基準が旧基準のときに建築されたものであったとの報道があった。

熊本地震、7割が家屋倒壊で死亡 旧耐震建物が半数超朝日新聞デジタル 5月1日(日)0時14分配信

■九州は地震が少ないという思い込み
このような耐震基準に新と旧とがあるといった話はあまり聞きなれない人が多かったと思う。住宅の購入や賃貸住宅の契約をしようとするとき、このようなことをチェック項目にしているという人はまずいないだろう。

私の住む福岡でも数年前に西方沖地震という大きな地震を経験したが、それでも地元では、九州は地震の少ない地域という話を耳にする。熊本は年に何度も訪れるなじみのある県だが、その熊本に断層があって地震の可能性が高いという話を聞いたこともなかった。被害にあわれた方々もまったく予想だにしなかったことと思う。

実はこれは、福岡や熊本に限られない話だ。

一般社団法人日本損害保険協会が公表している2015年度版のデータによると、東日本大震災を経験した宮城では地震保険の加入率が50.9パーセントとなっているのに比べて、その他の地域では10~30パーセント代が目立つ。地震保険付帯率といって火災保険に地震保険の特約が付帯されている保険の加入率をみても、宮城の85.3パーセントであるに比べて、50パーセント程度である地域が多い。

このようなデータからしても、全国的に地震を身近なリスクとして認識できておらず、災害というリスクに対する備えは後回しにしてしまいがちだということが分かる。

■マイホーム購入に新たな視点 リスクを考慮に入れているか
リスクに対して目が向いていないという点では、マイホーム購入を検討する段階でも同様だ。

これから不動産を購入しようとする段階では、本来であれば、一番リスクに対する備えをすることができるのだが、あまりに無関心であることが多い。

リスクを考慮に入れることで、物件選びやその物件にかかる費用は大きく異なってくる。

これからはマイホームを購入する場合には、「リスクを考慮にいれる」という視点を持つべきだ。

ちょっと大袈裟な言い方かもしれないが、私はこれまでのマイホーム購入に対する考え方を改める時期に来ているとさえ考えている。

■マイホームを購入する際、リスクはどう保証されるか
冒頭では地震のリスクを述べたが、それ以外にももちろん、不動産にはリスクはある。

例えば、豪雨により冠水しやすい土地。これをどう考えるだろうか。

せっかく土地を購入して新居を構えたとして、床上浸水したら…。購入者としては、欠陥のある土地だった!と売主に文句を言いたくなるだろう。

しかし、実際に裁判になると、このようなケースで売主と争ったとしても損害を賠償してもらえないというケースが多い。冠水するかどうかは、排水設備などの設置状況や周囲の土地の状況などに左右されることもある。その土地固有の問題かどうか、明確ではないためだ。

また、冠水しやすい土地というのはそれを前提とした売買価格の設定がなされているはすだ、つまり、それだけ価格が安くなっているはずで損をしているとは言えない、という裁判例まである。

こうなると、冠水被害というものは、売主に保証をしてもらうこともできず、自分の負担で何とかしなければならない…ということになってしまうわけだ。

このように不動産の契約では、何らかの被害があったとしても賠償してもらえないケースもあるため、注意が必要だ。

■リスクを織り込んだ検討をする
そうなると、不動産を購入するときはリスクを織り込んだ検討をする、という視点に立つ必要がある。

先ほどの例でいえば、冠水の可能性がある物件であれば、物件選びをする段階でそもそもその不動産にこだわるのか検討をしてもいい。

また仮にその不動産にこだわるのであれば、被害を少なくするためにはどのような対策が必要か(建物の構造を工夫するや土盛りをするか否かなど)、さらにその費用をどう考えるかを検討することができる。

これまでは、マイホーム購入を検討する際、価格をどこまで見ていたか。売買価格やせいぜい内装費の検討止まりだったのではないか。あとは住宅ローンの月額返済金額とにらめっこをして検討は終わってしまっていたかもしれない。

しかし、マイホームの購入の検討にはそれだけでは不十分だということだ。

■リスクを知るには?
リスクを織り込んで検討するためには、その前提としてリスクを知るということから始めなければならない。

不動産の売買などでは、不動産業者には重要事項説明が義務付けられている。

この重要事項説明、リスクを知るという意味では極めて重要な手掛かりとなるものだが、しかし、十分ではない。

冠水の例でいえば、ハザードマップなどを渡されて、「これを見ておいてくださいね」ということでリスクの説明が終わってしまうケースも珍しくない。またその土地の地盤の問題などは、不動産業者であっても科学的な調査を行うことができるわけでもないので、もちろん、安全な土地であると保証をしてくれるものでもない。

そうなると冠水というリスクをよく認識できないまま、リスクに対する備えに要する費用を検討することの無いまま契約をしてしまったということになる。

これは何も不動産業者が不親切だということを言っているのではない。何をリスクとして考えるかは、人ぞれぞれであるという側面もあるからだ。

浸水被害の発生する可能性のある土地であっても、先ほどの裁判例のように価格が安いのであればそのリスクをとるという人もいるかもしれない。一方で居住地としてはどうしてもその土地が欲しいが被害はどうしても防ぎたいという人もいるだろう。

このように必要な情報というものは人によって変化する。必要な情報は自ら取りに行くという姿勢を持たなければならない。

つまり、必要な情報を上手に不動産業者から引きださなければならないのだ。

■まとめ
リスクを踏まえた上での選択をするためには、ある程度不動産取引とはどのようなものか知らなければならない。

もちろん、今回ご紹介したような地震や冠水という現象に対して、科学的な知見を広めるという意味ではない。

「どのようなトラブルが起こる可能性があるか」を知るということだ。まずはしっかりとした情報収集をするべきだ(最低限の知識はインターネットでも取ることができるが)。

冒頭でふれた地震による被害や冠水といった大きな被害ではなくても、実は、マイホーム購入にあたっては、日頃体験することが滅多にない取引であるということもあって、知識不足からくるトラブルが少なくない。

建築関係の職業にしていない人でも、ちょっと気を付けておけば回避できるトラブルが多くあるのだが、それにもかかわらず、見過ごしたまま契約をしてしまっているケースが多い。

購入をしようとしている不動産のリスクを把握することに努める。契約は「リスク」を踏まえて、納得がいくように行うべきなのだ。

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及川修平 司法書士


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