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介護事業は、株式会社、NPO法人、社会福祉法人、医療法人などが入り混じり、全国で事業が展開されています。そのうち、株式会社が経営・運営しているサービスで1,2位を争うのがデイサービスと訪問介護事業所です。日本全国にデイサービスは41,660事業所が、訪問介護事業所は33,911事業所があります(平成26年介護サービス施設・事業所調査の概況より)。

今やどこそこにもある介護事業所は、飽和状態かと思いきや、デイサービスは9.3%増、訪問介護は3.5%増の伸び率となって、まだまだ増加しています(平成26年10月1日と平成25年10月1日の比較)。なるほど、高齢者の数は増加しているし、開業すれば左うちわで営業できるのでは?と思ってしまいます。


■デイサービスを知らない方に
デイサービスは、別名通所介護と言います。自宅で生活する介護の必要な方が、自宅に引きこもると孤立感が出たり、心身機能が低下したり、家族の介護負担が増加したりします。これらを解消する目的で、半日~1日の単位で家から通って、食事や入浴、運動などのサービスを受けるものです。デイサービスの内容は、通所介護計画(通称ケアプラン)に沿って行われます。こういった事業を行っている事業所をデイサービスセンターといいます。

■訪問介護を知らない方に
訪問介護とは、自宅で生活する上で介助が必要な高齢者に対して、介護資格を有するヘルパーが直接自宅に伺って身体的な介護を行ったり(身体介護)、生活がしやすいように援助を行ったり(生活援助)、その両方を行ったりすることを言います。提供する身体介護や生活援助はヘルパーさんの思いのままに行われるのではなく、訪問介護計画(通称ケアプラン)に沿って行われます。こういった事業を行っている事業者を訪問介護事業所といいます。

■高齢者は着実に増えている
日本の高齢者人口(65歳以上)は、3,190万人以上となっており、総人口の25%以上となりました。そして、介護保険の審査で要介護者又は要支援者と認定された人は平成24年度末で561万人以上となっています。

団塊の世代と言われた第一次ベビーブームに生れた方々は、すでに65歳を越えました。平成37年になるとその世代は75歳を超えます。なぜ75歳の話を出したかというと、75歳以上になると、要支援・要介護の認定を受ける割合がぐっと高まるからです(その割合、3人に一人)。介護業界は、これから数十年間、お客さんに困ることはない産業であることは間違いのない事実です。

これだけ見れば、営業は不要で開店していればお客さんはどんどん来てくれそうな印象を受けます。

■実際は、選ばれないと閑古鳥⇒閉鎖・倒産
介護保険が始まる平成12年3月以前は、役所の担当者が介護事業所に対して介護が必要な方を紹介する制度(措置制度)でしたので、サービスを受ける高齢者側は介護事業者を選んだり、介護サービスを比較したりできませんでした。しかし、介護保険となり、サービスを受ける側は自分で見て、調べて、契約したい事業所を選択することができるようになりました。

特別養護老人ホームのように待機者の多い介護サービスは別として、民間参入の多いデイサービスや訪問介護は、介護を受けたい事業所に選ばれないと開店休業となります。開店休業が続けば、当然閉鎖・倒産となります。

株式会社東京商工リサーチの調べでは、平成27年1月~4月時に全国で31件の倒産があったということです。平成26年1年間の倒産件数は、54件でしたので、ハイペースで増加していることがわかります。
第6弾_図1


■介護が必要な方に直接営業できないジレンマ
デイサービスセンターや訪問介護事業所は、ケアマネジャーという職種から、介護が必要な方を紹介してもらいます。もちろん、介護サービスを受ける高齢者自身やその家族が介護事業所を選択することはできますが、実際のところは地域の介護事業所を熟知しているケアマネジャーに紹介してもらって利用を開始することが圧倒的に多いです。

つまり、介護事業所は、ケアマネジャーにアピールしておかないと紹介してもらえません。たくさんのお客さんが地域にいたとしても、ケアマネジャーに見向きされなければ、開店休業になる可能性があります。

ケアマネジャーは、ケアマネジャー自身の情報網で介護事業所を選別しています。ケアマネジャーの所属する組織が特定の事業所を決め打ちするのではなく、あくまでケアマネジャーの判断に委ねられています。そのため、その地域にA訪問介護事業所とB訪問介護事業所の2つの事業所があった場合でも、Aの責任者とBの責任者の顔のどちらが浮かんだかで勝敗は決してしまうのです。

■営業はやらなくてはいけない
ケアマネジャーへの営業はマストです。ケアマネジャーは居宅介護支援事業所にいます。居宅介護支援事業所は単独である場合よりも訪問介護事業所などとセットである場合が多いですが、最も力を入れるのは単独型の居宅介護支援事業所のケアマネジャーです。しかしながら、セット型にももちろん通わなければなりません。介護保険のルールで、自社内でサービスを完結(自社のケアマネジャーが系列の訪問介護事業所に全て紹介するということ)することを良しとしていません。従いまして、必ず他社にも紹介しなければいけなくなるので、営業はしておく必要があります。

そして忘れてはいけないのは、地域包括支援センターへの営業です。地域包括支援センターは、地域における介護保険の窓口です。急に訪問介護が必要になる高齢者がいた場合や困難なケースの場合、直接、地域包括支援センターから訪問介護事業所に照会が入ります。そして、地域包括支援センターは、居宅介護支援事業所に対して、すでに受けてくれる介護事業所をおさえてあるから、後はよろしくとなります。

緊急でなくても、困ったことがあれば居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、地域包括支援センターに相談するなど情報交換を行っていますので、双方に営業しておくとダブルで情報が伝わり、介護事業所の名前はケアマネジャーの記憶に残りやすくなります。

■これからの営業先として医療機関と地域を加える必要あり
医療保険を使って病院で療養するよりも、介護保険を使って自宅で療養するほうがコストが安いことは明白です。社会保障費の削減がまったなしの状況ですので、この流れは加速していきます。そうなるとますます病院との連携は重要になってきます。医師やナースなどへ自社サービスの情報を発信していかないと、出遅れる形となります。

忘れてはいけないのは、介護保険制度の中で地域との連携が重要視されていることです。介護保険は、重度化した方を対象とし、軽度の方は介護保険を利用しにくくなります。そうなると、地域の民生委員、ボランティアやNPO法人などが軽度の方のサポートを行っていくことも考えられます。地域の方からの口コミや評判などは、介護サービスを受けようとする方の判断を左右することでしょう。

■結論は今から営業を!
もし、あなたの経営する介護事業所のご利用者数が右肩上がりであっても、これがこのまま続くとは限りません。介護保険制度の変更・見直しで、利用したくても利用できない状況となり、ケアマネジャーから紹介が受けられなくなることも考えられます。そして、覚えておきたいのは、これからの介護サービス利用者は、戦後生まれの高度成長時代を生きた世代であることです。今までの戦前生まれの方々が要望するサービスとは切り離して考える必要があります。

介護サービスは、結局は人が人に対して行うサービスです。笑顔、やすらぎのために何が必要で、なにができるのか。その人らしさを引き出すためには何をやらないのか。考えることはたくさんありますが、営業をしながら求められている介護サービスを構築し、機敏に対応していける事業所がこれから生き残り、そして真に求められる事業所になっていくのではないでしょうか。

藤尾智之 税理士 介護福祉経営士

【参考記事】
■介護保険が知らぬ間に保険ではなくなる事実(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48473153-20160428.html
■元特養事務長が教えるより良い介護施設の見極め方(藤尾智之 税理士)
http://sharescafe.net/47893238-20160223.html
■介護保険は保険ではない ケアマネジャーと上手に付き合う方法 藤尾智之 税理士
http://sharescafe.net/35169456-20131126.html
■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) 藤尾智之
http://sharescafe.net/35018841-20131120.html
■押し売りも怖くない!成年後見制度で財産を守ろう 藤尾智之 税理士
http://sharescafe.net/36033856-20131230.html


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