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筆者は、英国がEUを離脱しても、世界経済への影響は軽微であると楽観視していますが、マスコミに登場する論者たちは悲観論者が圧倒的に多いようです。これにはマスコミやマスコミに登場している論者の事情が影響しているのです。今回は彼等の事情について考えてみましょう。

■不確実性が高まったことは事実
たとえば各国が次々とEUを離脱し、結局はEUが崩壊してしまう、というシナリオは、これまで空想上の物語として語られていましたが、英国がEU離脱を決めたことにより、あり得る可能性として真面目に議論されるようになってきました。

一つには、現実が変化した可能性です。具体的には「英国が離脱したなら我々も」という運動が活発化する契機となった可能性があることです。楽観派の筆者としては、スペイン総選挙のケースを見ても、他国が離脱する可能性はむしろ減ったようにも思えます。「軽はずみに離脱賛成票を投じると本当に可決されてしまう可能性があるから、慎重に投票しよう」という投票行動をとる他国有権者が増えるからです。しかし、今後何が起きるかわからない事は確かです。

今一つは、認識が変化したことです。これまで「あり得ない」と考えていたことが起きてしまったことで、「今まであり得ないと考えられていた事でも、実際には何が起きるかわからない」と人々が考えるようになり、そうなると様々なリスクシナリオが一気に「あるかも知れない」と思えるようになり、将来は不確実だ、と感じるようになったのです。

しかし、それだけでは世の中が悲観論一色に染まった理由として充分ではありません。そもそもマスコミで流れている論者の見解に悲観論のバイアスがかかっていることが原因なのです。以下では、そうしたバイアスについて考えてみましょう。

■論者には悲観論を述べるインセンティブがある
まず、悲観論を述べると、問題点やリスクを多数指摘することになるので、賢く見えます。反対に、「大丈夫ですよ」と楽観論を述べると、「これほどリスクが数多く存在しているのに、それにも気づかない愚か者なのか」と思われてしまうのです。筆者は比較的楽観論を述べることが多いので、そうした御批判はしばしば頂戴していますが、皆様に正しい認識を持っていただこうという使命感を持って我が道を突き進んでおります(笑)。

次に、悲観論の方が話に幅が出来るのです。「幸福な経済予測は一様に幸福であるが、不幸な経済予測はそれぞれに不幸である」というわけで、楽観論は「今後も何事もなく平和でしょう」の一言で終わってしまいますが、悲観論は「Aが転べばBも転ぶでしょうし、Cが転べばDも転ぶでしょう」という具合に様々なストーリーで聞き手を楽しませることができるのです。

リスクの指摘だけであれば、外れても全く文句を言われません。「予測を述べたわけではなく、リスクについて注意喚起しただけなので、リスクが実現しなかった事を喜んでいる」とでもコメントすれば良いのです。たとえば「中国がバブル崩壊で大変なことになるかもしれない」あるいは「いつかは大変なことになるに違いない」という話は10年以上前から繰り返し聞かされていますが、「オオカミ少年」が批判されたという話は聞こえて来ていません。

そして、仮にリスクが一つでも実現すれば、鬼の首でも取ったように自慢すれば良いのです。一方、楽観論者が「リスクのように見えるけれど、実現はしないでしょう」と言った後で、リスクが実現してしまったら、大恥をかくことになります。

悲観的な予測でさえも、それほどのリスクではありません。悲観的な予測が外れた時は、人々がハッピーですから、悲観的な予測をしていた人がいたという事を忘れているかもしれません。一方、楽観的な予測が外れた時は、人々が皆不幸ですから、憂さ晴らしの批判を激しく浴びることにもなりかねないのです。

■マスコミも悲観論を好む
マスコミも、悲観論を好みます。悲観論の方が話が面白い、等々は上記と同様ですが、今一つ、日本人は悲観的な話を聞きたがる人が多いので、営利企業である民間のマスコミは、どうしても悲観論を流すインセンティブを持つわけです。今一つ、政権を批判することがマスコミの使命であると考える人が、悲観論を述べることも政府批判の一つであると考えているケースもあるようです。

そうなると、論者には「マスコミに出るために悲観論を述べる」というインセンティブも加わることになります。結果として、論者が自分の本心よりも悲観的な事を述べていて、その中でも悲観的な論者をマスコミが愛用する、という二重の悲観バイアスがかかることになるのです。

■情報の受け手は注意深くバイアスを修正する必要
マスコミから流れて来る情報に、二重の悲観バイアスがかかっているということは、情報の受け手がそのことを充分に認識した上で、「バイアスがかかる前の、論者たちの本当の予測はどういうものだろう?」と自問自答して、バイアスを取り除いてやることが必用になります。しかし、それは一般の人にとっては容易ではないことでしょう。

そういう場合は楽観派、中でも筆者の書いたものを読んでいただき、マスコミから流れて来る情報と「足して2で割る」あたりを出発点にしていただければと思っています(笑)。


【参考記事】
■英国のEU離脱でも世界経済は大丈夫 (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/48894942-20160622.html
■金融緩和で物価を上げるのは無理なのか? (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/48919755-20160624.html
■アベノミクス景気は謎だらけ(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/48918008-20160624.html
■経済情報の捉え方 (塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149245775.html
■アリとキリギリスで読み解く日本経済 (塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12156174510.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授


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