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少し前になるが、花押で作られた遺言は無効であるという裁判があった。

「花押は押印ではない」遺言書無効 最高裁が初の判断 朝日新聞デジタル 2016/06/03


花押とは自らの署名を図式化したようなもので、戦国時代などで使われていたものだ。この花押を印鑑の代わりに使った遺言書が有効なのかどうかという点が争われたので、とても珍しくニュースとなったわけだが、最高裁判所は遺言としての効果を認めないという判決を下している。

遺言というものは、故人の生前の意思を残すものであるので、何を書き込んでも自由だ。子供たちに人生の教訓を残す遺言書などもあるし、その内容は様々である。

しかし、財産をどのように残すのかというような法的な効果を生みだす遺言については、法律に従って遺言書を作らないと、今回の裁判のように遺言書としての効果をないものになってしまうことがあるので注意が必要だ。

■遺言が無効になってしまうケースとは?
今回の裁判で作られた遺言書は「自筆証書遺言」という。その名のとおり、自筆で書かれたものだ。法律の規定では、全文、日付、氏名を自筆で書いた上で、印鑑をつかなければならないとされている。

この規定をしっかりと守っていない遺言は、場合によっては無効となってしまうのだ。

例えば、遺言の内容をパソコンなどで作成し印刷したものに署名だけ自署していたというケースはどうなるかというと、「全てを自筆で書く」という要件に引っかかるので、その遺言書は法的には無効とされてしまう。

また日付について、例えば「平成28年7月吉日」などと書かれていたケースでも同様で、これでは日付がしっかりと自署されていないことを理由にアウトになる…といった具合だ。

これはほんの一例だが、遺言が有効か無効かということについては、様々なケースで争われているので、法的な効果のある遺言を作ろうとするときは、まず遺言の正しい作り方をしっかり調べる必要があるだろう。

更に遺言書には次のような問題がある。

■遺言は誰が保管している?
テレビドラマでは、資産家が亡くなったとき、葬儀の場で弁護士が突然現れ、「私が遺言書を保管しておりました」などと言って遺言書を朗読し始める…というシーンを見かけることがある。

しかし、遺言書は何も弁護士が必ず保管しているというものではない。自筆で作った遺言書を誰がどのように保管をするかということについては、実は特にルールはないのだ。

保管に関するルールがないものだから、遺言が残されていることに気付かず、相続人の間で遺産の分配を協議してしまったということはよくある話だ。

相続人の間で協議が終わっていたのに、ひょっこり遺言書が出てきた場合、どのようになるだろうか。

この場合は、遺言書が優先される。

つまり、相続人の間で話し合われたことは「なかったこと」になり、原則として遺言書のとおり、財産を分けることになるのだ。

もちろん、遺言書の内容は生前にオープンにしておく必要はない。しかし、遺言書を残していること、どこに保管をしているかということくらいは明らかとなっていないと、このように問題となるケースが出てくるので注意が必要だ。

■遺言書の作り方が変わるかもしれない
遺言というものはなじみのある制度ではあるのだが、よく調べずに作ってしまったがゆえに、せっかくの遺言が無効になるなど、様々な問題を抱えている。

あまり話題になることはないのだが、実は現在、遺言の作り方をはじめ、相続に関する法制度を変えてはどうかという議論が行われている。

<民法改正法制審案>居住権確保や相続分増 配偶者に配慮 毎日新聞 2016/06/21


議論されてる内容としては、遺言のうち財産の内容を記載する部分は自筆ではなくパソコンなどで作成することを認めてはどうかというものであったり、自筆の遺言を公的機関が保管する制度を作ってはどうかという案などが検討されている。

まだ検討段階ではあるが、仮にこのような改正となれば、全て自筆で書かなければならないという要件が緩和されることになるだろうし、公的機関に遺言書を預けられていると相続人はそこに問い合わせをすれば遺言の内容を確認できることにもなるだろう。

法律が改正されれば、これまでの実務に大きく影響が出ることは間違いない。今後の法律の改正の動きに注目していく必要があるだろう。

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