852490048e193304534ef452b17b1e5b_s

先日毎日新聞で待機児童に関する自治体へのアンケート調査が掲載されました。

政令指定都市や東京23区など計156市町村を対象に、認可保育所などの待機児童数に関して調査を行った結果、回答のあった152市町村の待機児童数は前年比5%で833人少なくなっているものの、保育所などに入れない「隠れ待機児童」の数は5903人に上り、13%増加していているということです(隠れ待機児童 5万人…公表の3倍 152市区町村 毎日新聞 2016/07/22)。

保育園に入ることができるのは保護者が働いているや病気・介護等、何らかの理由から家庭で保育ができない場合です。噂があるのか、お客様からも「自営業の保育園入園は難しいのか」とよく聞かれることがあります。

■個人事業主の場合の保育所の申請
子供を保育園に入れたい時に、会社員は人事や経営者に勤務証明書などを書いてもらう必要があります。自営業者の場合、勤務証明書は自分で自分を証明することになります。いわば「自作自演」になるため、きちんと確定申告を行っているのかどうかなど、その経営を裏付ける書類が必要です。また事業を開始するときに税務署へ提出する「開業の届け出」を必要とする自治体もあります。

それに加えて、自営業者だけの追加書類として「就労状況申告書」を提出します。これは、朝起きてから夜寝るまでのスケジュールを書き込むものです。朝何時に起床し、家事や育児、仕事の時間なども記入し、どんな形で一日を過ごしているかを報告します。

■自営業者は保育園に入りにくい?
自分で仕事をしていると、自分のペースで仕事を入れたりできるため、「自営業者なら自宅で子供を見ながら仕事ができるのでは?」「子供が寝ている間に仕事をすればいい。」などと思う人も少なからずいるのではないでしょうか?

しかし、子供は考えているほどおとなしくしてくれませんし、都合よくお昼寝もたくさんしてくれません。また、「自営業=家で仕事をしている」との固定観念が多いのでしょうが、実際の働き方は様々です。不特定多数のお客様のところに毎日行く人や、業務委託の契約を結んで契約先の会社で働く人もいます。また会社員のようにプライベートと仕事の区別がつきにくいため、土日でも要望に応じて働く自営の方さえいます。

ただ、会社員のように第3者の目があるわけでないため、判断が厳しくなることもあります。
待機児童が多く、競争率の高い自治体では、審査が厳しく、ある程度収入が必要となる条件や、スケジュールがかかれている手帳などそれを裏付ける資料も見せるなどの工夫も必要な場合があります。

■保育園の入園条件はポイント制
一般的に保育園に入れるかどうかは自治体によって違いはあるものの、通常はポイント制になっています。両親ともにフルタイムで働いていることの他、祖父母が遠方に住んでいることやシングルマザーやシングルファーザーなどは加点になるなどがありますが、自営業での減点などは特に聞いたことがありません。きちんと仕事をしているのであれば、それは会社員同様に保育が必要であると認められることになるのです。ですから自営業者は保育園に入園できないということはないのです。

■自営業者のメリット・デメリット
自営業者は、自分の奥さんを「専従者」にして雇用することができます。専従者という言葉の通り、メインで働いていることが条件のため、パートなどの副業は原則として認められませんが、支払ったお給料は経費にすることができます。もちろん両親2人で働いているのですから子供を保育園に入園させることも可能です。

自営業のデメリットは、収入が不安定であること。一昔前には自営業者がかなり潤っていたという時期がありましたが、大規模な店舗やIT化の影響もあって、個人でビジネスを維持存続するのが厳しい時代になりました。稼げるときに稼いでおかなければ、会社員のように老後に手厚い年金があるわけではないのです。自営業も働くのに保育が必要という面では会社員と同じです。働くチャンスがあるのなら、最初からダメだろうと決めつけずに入園をトライしてみるべきではないでしょうか。

■自治体の取り組みも差に
仕事の程度は人それぞれであるため、「自営業は楽」といってすべての人を批判の対象にすべきではないと思います。しかし、自営業者はそれだけ想像することが難しいともいえるのでしょう。

隠れ待機児童の問題は、自治体によっての認識の違いからまだ潜在的に根深く、人数を把握するのは難しいことです。

しかしながら、地方に行くと保育園が十分にあり、申し込みさえすれば入園できるといったところも多いことも事実です。ある偏った地域だけがこのような待機児童の問題を引き起こしているように感じざるを得ません。保育を望むすべての人が公平に入園できるようになるまでまだまだ時間がかかることになりそうです。

【参考文献】
消費税増税延期でもバラマキ?給付金もらえます。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/48884963-20160619.html
■災害の発生時の税金の申告はいつまでにすればいいのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/48455599-20160426.html
■保育園の滞納問題。取り立ては年々厳しくなっている? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/48230568-20160330.html
■確定申告の医療費控除の誤解。さらに広がる可能性あり? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/47878546-20160221.html
■進化するふるさと納税。その課題とは。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/47646614-20160128.html

浅野千晴 税理士

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加


シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。