選挙
東京都は知る人ぞ知る、若者のグローバル人材育成政策に最も力を入れている自治体のひとつだ。詳しくは後述するが、「英語村(仮称)」の開設や平成24年度からスタートした東京都教育委員会の「次世代リーダー育成道場」などがその代表例である。

東京都知事選の争点は子育てや介護、東京オリンピックなどの急務課題が中心であり、長期的課題であるグローバル人材育成について語られることは少ない。未来の国際都市TOKYOへ向けた教育について、公約や政策をうたっている候補者はいるだろうか。

■「英語教育の徹底」小池百合子氏
小池百合子氏の提唱する公約「ダイバー・シティ=女性も、男性も、子どもも、シニアも、障がい者もいきいき生活できる、活躍できる都市・東京」の政策のひとつに、「都独自の給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底する。」とある。具体的に奨学金と英語教育がどうつながってくるのかは現時点ではわからないが、都民のための留学や外国語教育にあてられる可能性はある。

小池氏はまた別の公約「スマート・シティ=世界に開かれた、環境・金融先進都市・東京」のなかで、「国際金融特区や税優遇を活用し、世界から企業や 高度人材を呼び込む。」「英語による諸手続きが可能な環境を整備。」などとし、グローバル社会での東京のプレゼンスを高めたいという明確な意図が感じられる。

■「都立インターナショナル・スクール 20校」谷山ゆうじろう氏
東京の国際化についての政策がかなり目立つのが谷山ゆうじろう氏だ。自身も海外テレビ番組に司会者・俳優として出演した経歴を持ち、グローバルをテーマにニュースプラットフォームを起こしている。

公約においては「TOKYOの国際化を目指します。」「都立インターナショナル・スクール 20校」「羽田空港を完全24時間化」「毎日、海外メディア向けに英語で定例記者会見」など国際都市としての打ち出しを鮮明にしようとしている。

なお「都立インターナショナル・スクール 20校」については「通常の学費でグローバルな国際人を育む」と補足説明がついている。これら都立インターナショナル・スクールを設立したあかつきには現在の都立高校の入試とは違う入試方法をとることになるのだろうか。

■「全生徒をNY,LA等英語圏に留学」後藤輝樹氏
全候補者中、都民の海外留学促進について具体的に言及したのはこの候補者だけだ。「義務教育中、全生徒をNY,LA等英語圏に留学させる(3週間×6回)」と主張する後藤輝樹氏、一方では外国人移民の受け入れには反対である。

■直接の言及はないが国際都市への歩みについてざっくり述べている候補者たち
ここでは、留学やグローバル教育そのものについて直接触れておらず、東京の国際化、あるいは東京都民の教育改革など少々遠いところから触れている候補者について紹介する。

増田寛也氏は東京の国際化という点で「東京を世界有数の観光都市化」「海外展開支援など中小企業の持続的成長を支援」「2020年大会後は東京を世界の環境先進都市に発展」などの施策を挙げた。

高橋しょうご氏は都が主導する給付型奨学金の設立への取り組みをするとある。しかし、少子化対策の一環として述べているため、この奨学金を海外留学に充当する意図はないように見える。

今尾貞夫氏は海外留学ではなく都立大学への外国人学生誘致に触れているようだ。「都立大学の無料化、さらに全寮制にして、衣食住を保証、能力と意欲があれば、家が貧しくとも、外国からも、他府県からも受け入れ、世界有数の大学にします。」と政見放送で語ったようである。

望月義彦氏は「東京を日本そして世界とともに成長をし続ける未来都市にしたい」と挙げたが具体的な政策についてはなかった。

マック赤坂氏は教育改革の一環として「東京スマイル大学の創設」とある。この大学にインターナショナルな側面が含まれるかどうかは全くわからない。

ほか、特に言及が見当たらなかった候補者は鳥越俊太郎氏、櫻井誠氏、山口敏夫氏、山中雅明氏、岸本雅吉氏、上杉隆氏、七海ひろこ氏、中川暢三氏、関口安弘氏、立花孝志氏、宮崎正弘氏、望月義彦氏、武井直子氏、内藤久遠氏である。

なお、各候補者の公約については主に候補者のホームページを参照、ホームページを持たない候補者については政見放送等で語ったとされる報道を参照した。

■東京都のグローバル人材育成施策
現時点で東京都が公表しているグローバル人材育成の目標は「東京都長期ビジョン」に記されている。

「世界をリードするグローバル都市の実現」なる都市戦略のうち、政策指針18「東京、そして日本を支える人材の育成」では
・子供たち全員が使える英語力の習得
・学びの場を国際化
・グローバルリーダーの育成
の3点を表明。

この指針に基づいて、具体的な施策として日帰りや宿泊などで安価な価額で英語学習を提供する「英語村(仮称)」(平成30年9月末までに江東区青海に開設予定)の設置や、公立中学・高校の英語科教員の海外研修の充実、グローバル教育の重点都立校「東京グローバル10」の指定、都立高校での英語以外の外国語教育拡充などを行う。

海外留学の施策としては都立高校生の留学を支援するプログラム「次世代リーダー育成道場」が代表的だ。このプログラムでは約6か月間~1年の国内事前研修ののち1年間の海外留学をする。行先はアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれかで、現地では地元の高校に入学。費用は渡航費、滞在費、学費等あわせて80万円(平成27年度。募集は既に終了。)とかなり抑えられていることもあり、定員200名のところ毎年これを超える多くの応募がある。

これらは長期ビジョンとして既に動いている施策ではあるが、新都知事がその公約実現のために財源見直しが行われた場合、既存施策について予算がカットされる可能性はゼロではない。新都知事体制のもと指針見直しが行われる場合には、注視してまいりたい。

《参考記事》
■海外で学んだ。帰国した。仕事はありますか? (若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/38946405-20140521.html
■渡辺直美さんのニューヨーク留学から考える『留学の成果』とは? (若松 千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/47311795-20151224.html
■イギリスのEU離脱で日本人留学生が受ける影響とは(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/48926676-20160624.html
■『聞こえない高校球児』のフランス一人旅(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://www.ryugakupress.com/2015/09/21/koukoukyuji/
■日本人バスケ男子、アメリカへの挑戦。(前編)「アジア人はバスケ出来ないだろ。」(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://www.ryugakupress.com/2015/12/07/basketball/

若松千枝加 留学ジャーナリスト


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